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Ruralnet・農文協食農教育>1998年秋 2号

2号より

お米が、自分を語り農業の夢を語りつづける宝になった

新潟県頚城村大瀁(おおぶけ)小学校5年生

「実践!米作り・アイガモ農法と機械農法」

ゆとりの時間16時間を中心に、社会・国語・理科・図工など関連教科を組み合わせた72時間を使って、総合的学習として、5アールの学校田でアイガモ稲作を行なっている。


稲刈り 子どもの家はほとんどが農家で、3世代家族だ。お年寄りと父母たちがいっぱい応援に駆けつけてくれる。

初めて稲刈り鎌を扱う子どもたちに、「刃は斜め下に向けて」「一気に引き切るんだ」などと、プロならではの声がかかる。ほどよい分量の稲株をくるりとまるける作業はなかなか難しいが、子どもたちはこれにも真剣にチャレンジする。

「稲を運ぶときに、私や友達が穂を落とすと、『もったいないよ』と言って拾っているおばあちゃんがいました。自分たちで育ててきたのに、落としたらもったいないんだなと思いました。」

夏休み、稲についての自由研究。ある子どもは地域のアイガモ稲作実践農家をたずねた。機械化農業の経費を調べた子どももいる。昔の手作業時代の農業や田んぼ周辺の生物について、家族から聞き取る子ども、稲の害虫を詳しく研究する子ども、減反や米価・先進的な農家の産直などを新聞記事から集める子ども、など関心と行動はさまざまに広がる。


おにぎり

「ぼくは初め、『やっと米が食べられる』と思っていました。けれど、ご飯を食べる瞬間、『半年くらいかかって作ってきたので、食べるのはもったいない』からもう一度ご飯を見直しました。白いご飯をみていたら、少し光っているのが分かりました。炊く前より、ふくらんでいるのも分かりました。ぼくは、米にこんなにふしぎなことがあるなんて知りませんでした。いつもよく見て食べていなかったので、びっくりしました。なんだか、ますます食べるのがもったいなくなりました。それでも口の中に入れて味わってみると、甘い不思議な味がしました。でも、おいしかったのはたしかです」

班ごとに自分たちの米作りについての意見を農家(父母)に提案する。先生からみて、子どもたちはアイガモ農法にすっかり自信をつけているのだから、ほとんどがこの農法の良さを訴えるだろう、という予想だった。そして農家には、すべてアイガモ稲作や無農薬栽培というわけにはいかない現実的な農業の話をしてもらえるだろうとの思惑だ。ところが、アイガモにこだわる班は多いものの、米作りのすばらしさを語りたい、と言う班がいくつか出てきた。「若者の農業離れをなくしたい」「米作りはこんなに楽しいんだから、やってみましょう」「都会の人にもやってもらって農業を見直す人をふやそう」というのが、この子どもたちの到達点だった。

発表

親からは「少し現実離れした意見もありましたが、5年生らしい、楽しく夢のある米作りのことをたくさん教えてもらいました。もし、機会があれば、家でもアイガモ農法をやってみたいものです」「子どもたちの米作りに対する純粋な考えを、逆に見習わなければならないと思うことしきりでした」といった感想が寄せられ、何より「子どもたちがしっかりした考えを持っていることに驚き、成長ぶりをうれしく思った」というのが実感だったようだ。それは、地域の米作り・農業が秘めている「子どもを育てる力」の新たな発見だったともいえる。

(食農教育 編集部)


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