「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2008年5月号
 

食農教育 No.62 2008年5月号より

「学校たんけん」のテキスト
※学校たんけんのテキストは、横折、縦折にすると本になります。たんけんの前に、先生が学校の中を取材して、面白い観察題材を見つけてつくります。

もっと自由に「タネ」

校庭の好きな場所にアサガオのタネをまく

神奈川・茅ヶ崎市立円蔵小学校 岩瀬正幸

 一年生の生活科で、アサガオの観察をしたとき、その学びを少しでも面白くしてみたいと考えました。

 植木鉢にタネをまき栽培すると同時に、次のようなことをしようと考えました。

 「“花咲か子ども”になろう」と提案するのです。「花咲かじいさん」のお話をしてから、学校の校庭に、アサガオの花を咲かせようと子どもたちに提案しました。

 このアイデアに子どもたちは賛成しました。そこで、校庭を散歩しながら、アサガオの花を咲かせたい場所を選んで、タネをまきます。

 芽が出るか出ないかわかりません。そこが、面白いのです。植木鉢には、もうアサガオのタネはまいてあるので、校庭にまいたタネから芽が出なくても大丈夫。気楽さが大切です。

まず「学校たんけん」から

 はじめは、学校たんけんからです。ただ、散歩するだけでもいいのですが、私は、自然観察をしながら歩いて、学校の中にも小さな発見があることを、学んでほしいと思っています。
どんなところにタネをまく?

 学校の校庭のたんけんをして、校庭の様子がわかったところで、話合いをしましょう。

▼学校の校庭にはどんな場所がありますか。

 子どもたちの発言には、次のような言葉が出てきます。ブランコ・すべり台・プール・ジャングルジム・砂場・ウサギ小屋などを発表してくれます。

▼アサガオのタネを、咲かせたいところに植えましょう。どんなところがいいでしょう。

 ここで、子どもたちがどんな考えをもっているのかがわかります。

 「砂場にまいてもだめだ」
 「土がないとだめだよ」

▼話し合ったあとに、タネをまきにいきます。

タネをまいた場所を発表する

▼アサガオのタネをまいた場所を発表する。

(1)給食場の近くのフェンス
(2)プールの近くのフェンス
(3)タイヤジムの近くのへい
(4)ジャングルジムの近くのへい
(5)大銀杏の横のへい
(6)自転車小屋の横
(7)家庭科室の横のへい
(8)岩石園のところ
(9)トーテムポールの花壇の近く

▼アサガオの芽が出てくるのはどこでしょうか。

 どこからも、芽が出ると考えている子どもたちでした。芽が出ると思ってまいたのですから当然です。けれども、岩石園には出てこないという意見が出てきました。暗いからという理由でした。

アサガオのタネをまいた場所を記録する
「たねを まいた ところに あかまるを かきましょう。
ともだちの まいた ところに あおまるを かきましょう。」
※絵をかかせるのは、まだ、「あいうえお」を全部学習していないから。

植物の成長を実物で学ぶ

アサガオの観察記録の例

 アサガオは、病気にかかりにくく、丈夫だということです。アサガオをしっかり育てるには肥料が必要ですが、肥料を与えなくても、芽が出てくれば、条件のよいところでは成長するという点で、育てやすいという良さがあります。

 アサガオを植木鉢で育てる場合、失敗がなくどの子も観察できるのが、良い点です。

 自分が咲かせたい場所を考えて、アサガオのタネをまくという実践は、育てやすいというアサガオの利点を、最大限に活用するものです。

 この学習によって、日の当たるところ・当たらないところ、土の固いところ・やわらかいところ、湿っているところ・乾いているところなどによる成育の差がわかるかもしれません。しかし、一年生なので、そこまでわからなくてもかまいません。植物の成長を、実物で学んでいくことが大切です。

アサガオ以外の校庭の自然観察

観察記録は絵だけでよい

 アサガオの観察記録の仕方は、上図のような簡単なものがよいでしょう。一年生は、まだ「あいうえお」を学習しているところです。文が書けるようになったとき、空白に文字を書き込めばいいのです。そういうことを考えて、観察記録には、スケッチブックを使っています。いろいろな観察と一緒に描きこんでいます。アサガオだけにしたい場合は、一枚一枚の紙で、まとめる方法がいいと思います。

校庭にまいたタネはどうなったか?

 校庭にまいたアサガオのタネから芽が出たのは、次の四ヵ所。

・給食場の近くのフェンス
・プールの近くのフェンス
・自転車小屋の横二ヵ所の四ヵ所でした。

その後のアサガオ

 芽を出したアサガオが成長した場所は、自転車小屋の横だけでした。

 その他は、雑草の成長に負けて枯れてしまいました。

 自転車小屋の横のアサガオは、どんどん繁るように成長していきました。そして、とうとうアサガオの生垣ができました。肥料をやらなくても繁っていきました。

 その理由は、隣に鶴嶺池という池があり、水分が適当に供給されているからのようでした。養分はどうなっているのかはわかりません。とにかくよく育ちました。

 アサガオが、いつも美しく咲く場所になりました。そこははりがねの網のフェンスだったので、支柱も必要ではありませんでした。日当たりもよいところでしたので、よく育ったのかもしれません。

 アサガオのタネとりもしました。けれども、タネはこぼれ落ちて、全部をとることはできませんでした。

毎年、咲くようになったアサガオ

 自転車小屋の横のアサガオは、毎年、咲くようになりました。何も手をかけないのにです。雑草は、ハハコグサぐらいしか出ませんでした。とにかく、アサガオにピッタリの場所だったのです。その後、一年生だった子どもたちは、六年生になりました。まだまだ、アサガオは繁っていました。けれども、変化がありました。

 アサガオの花の大きさが、コヒルガオの花ぐらいに小さくなったのです。そして、色もピンクだけになり、薄い色になりました。原種に戻ったのかなと、思いました。これは一九九二年のことです。二〇〇七年に、その学校に出張で、行きました。まだ、アサガオは咲いていました。一五年が過ぎても、その場所はアサガオの美しい生垣でした。

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