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Ruralnet・農文協食農教育2001年9月号

食農教育 No.15 2001年9月号より

せみのぬけがら大発見

 杉野慧さんは4年生のとき、梨の木の枝が描く幾何学模様を利用した、ユニークな自由研究を行なった。今回はその内容と、6年生になった今の楽しい生活についての作文を紹介する。

(編集部)

せみのぬけがらの絵。 杉野慧さん
せみのぬけがらの絵。
せみのぬけがらは、焼いたのりみたいに、パリパリして、足のさきがとがっていて、かたい。色は、おうど色っぽい。

 うちは梨園です。梨畑にセミのぬけがらがいっぱいあったので、ぬけがらになにかひみつがあるのかと思って、セミのぬけがらの研究をすることにしました。

(1) 1本の木にセミのぬけがらは何コあるか。

(2) セミのぬけがらは、梨の木のどこにあるだろうか。

(3) セミのよう虫は、小さな体でどのくらい歩いて、だっぴするだろうか。

(よそう(1)約10コ(2)葉のうら(3)1mぐらい)

1本の梨の木にセミのぬけがらは何コ?

このぬけがらが、1番多いパターンでした。
このぬけがらが、葉っぱのうらで、方向が上向の、1番多いパターンでした。
1枚の葉に6コとまっているせみのぬけがら
1枚の葉に6コとまっているせみのぬけがら
だっぴしそこねたせみ(よう虫)
だっぴしそこねたせみ(よう虫)

 私の家の梨畑は3ヵ所あります。1つは家の前、もう1つは幸田原、そしてもう1つは「いしゃぎ」(手賀の丘公園のちかく)です。

 3ヵ所の畑の中で調べやすくて、セミのぬけがらがたくさんあるので、家の前の畑をえらびました。

 お父さんたちに聞くと、ヒグラシとアブラゼミとツクツクボウシがいるようです。そのなかでぬけがらが1番あって、大きくて目だつアブラゼミのぬけがらを調べてみることにしました。

 まず、お父さんに聞きながら梨の木の形を下の図のように書きました。

 梨の枝はたくさんあります。でも、梨の木をよく見ると、とくに太い枝が6本あって、その6本の枝の両がわから細い枝がありました。お父さんに聞いたら、梨の実がなるようにわざとこういう形にそだてているそうです。

 そこで、1本の梨の木の中で細い枝がでている所をA〜Mまで、13の部分に分けました。

 それぞれの部分の太い枝の根元から、何cmの所に細い枝がでていて、その細い枝の根元から、何cmの所にセミのぬけがらがあるかを、1本ずつまきじゃくではかって表にして調べました。

 はかりながら全部で何コあるか数えてみると……

 1本の木になんと184コ! 私の予想では、約10コだったけど、本当は184コ! なんと私の予想とのさが174コもあって、びっくりしました。

セミの移動きょりをはかってみたら

 かんさつのけっかをもとに、梨の木の根元の地面からぬけがらまでのきょりをはかりました。セミのよう虫は土の中にある木の根っこからはい上がってくるそうです。地面からぬけがらまでのきょりをはかって、小さな体でどのくらい歩いてだっぴするのかを調べました。(セミのよう虫は、あちこちより道をしないでだっぴすると考える)


 はかりかたは――(1)地面から太い枝の根元までの長さ+(2)太い枝から細い枝までの長さ+(3)細い枝の根元からぬけがらまでの長さ――です。(たとえば、Aの枝にあった1つのぬけがらのばあい(1)90+100(2)50(3)60合計300cm)

 はかってみたら、1番みじかいものは220cm、1番長いものはなんと!! 550cmも歩いていました。

 セミのぬけがら1つの長さは3cmぐらいです。わり算すると、みじかいもので73倍で長いものは183倍です。

 私の身長は140cmぐらいです。私がセミのよう虫だとすると、102m〜257mの木を登ることになります。高いビル、10階だて、20階だてをよじ登るようなものです。まっくらな中、1匹でよじ登ることになります。

 一言、すごいなぁー。

せみのよう虫の歩いたきょりとせみのぬけがらの数を棒グラフにした
せみのよう虫の歩いたきょりとせみのぬけがらの数を棒グラフにした

なぜ梨園はセミの天国なのか

 セミのぬけがらは、184コありました。家の畑には、梨の木が100本いじょうあるので184×100=18400、約20000匹のセミがいることになります。

 つまり、家の梨畑はセミのいいすみか、セミの天国なのです。

 どうしてセミの天国なのかというと、家は梨畑ぜんたいにあみをかけているからです。あみをかけてあると、セミのてきの鳥が入ってこれません。しかも、えさになる梨の木のしるがいっぱいあるからだそうです。

 かんさつをしていて、ふしぎに思ったことがあります。

 梨の枝の部分で、ぬけがらがたくさんある部分と、まったくない部分とがあることです。たとえば、私の調べた梨の木は、EFがゼロなのに、Cが35、Gが45もありました。セミのよう虫がすきな枝とすきじゃない枝があるのかもしれません。

 同じように、ぬけがらが1つしかない葉っぱ(ほとんど)と、4つも5つもある葉っぱがあるのもふしぎでした。セミのよう虫は、くらい中でも目が見えるのかもしれません。

 目が見えなくても初めに登ったよう虫の、においをかいで、次のよう虫があとをついていくのかもしれません。


季節の特別アルバイトで、
マンガ本やスクリーントーンを買いたい!

6年生になった慧さん。
6年生になった慧さん。4年生のとき自由研究した木の下にて。バスケットボールを題材に学園マンガを描くのが大好き

 「ミーン、ミンミンミーン。」

 4年生の夏休みは、なし畑でセミをとっていました。1匹とると1円もらえます。うちはおじいちゃんからのなし屋さんです。

 セミはよう虫のときに土の中で梨の木のしるをすうので、梨の敵だとお父さんに教えてもらいました。セミをとるのは子どもの仕事。あまりお金が入らないので、遊び半分で妹といっしょにとります。

 セミをとっているときは『自由研究は何にしようか、知りたいことはないか』と自由研究のことばかり考えていました。

 セミとりが終わって家の中に入っても、セミの声はちっとも変わりません。セミの量にびっくりです。ミンミンミンミン耳からはなれません。

 セミ、セミ、セミ、セミ……。

 そうだ! 今年の自由研究は、セミのことにしよう!

 でも、セミの何を調べるのか決めてません。

マンガのことで頭はいっぱい

 しかし、決めてないまま家族に発表するとお父さんが、「じゃあ、ぬけがらを調べてみたら」といいました。その言葉を聞いてぬけがらの研究をすることに決めました。

 自由研究を何にするかという問題が終わったら、今度はマンガのことで頭がいっぱいになりました。私はマンガが大大大好きです。マンガを読むのも描くのも好きなので、自由研究をやっているときでも、次はどんなストーリーにしたらおもしろいか、どんなマンガにしようかと考えながらやっていました。

 でも、その大好きなマンガのことも考えないで、夢中でやっていた時間があります。それは、セミのぬけがらのある場所が木のどこにあるのかを木の根元からはかるときでした。手のとどかない高い所はお母さんにやってもらいましたが、低いところは自分でやっているので、鉄のまきじゃくをずっと持っているのがけっこう大変で、肩がいたくなりました。

日当たりのいい堤防はヨモギつみにうってつけ
―春のバイト

 私は家の仕事を手伝って自分のおこづかいをもらうので、1年中アルバイトがあります。茶わんを洗ったり、そうじをしたり……。そのほかに、春夏秋冬の特別アルバイトもあります。

 春は1グラム1円のヨモギつみです。おばあちゃんとお母さんがヨモギで草もちを作って、道の駅の直売所で売っているからです。ヨモギが1番とれる所は手賀沼のていぼうです。2番目にとれる所は家の近くにあります。そこは他の草があまり生えていません。

 2つの場所の共通点は、道の近くと、田んぼでも畑でもないただの空き地、日当たりのいい所ということだと思います。

 ヨモギは3月ごろから生え始め、4月にとりやすくなります。生え始めは、茎もやわらかいので、茎ごととってもいいので、1時間くらいとると700〜1500円になります。休みの日しかできませんが、月に2000〜3000円になります。

お父さんが植えたクヌギはカブトムシの豊庫
―夏のバイト

 そして夏! 夏のアルバイトはかき入れどきです。1つは梨の仕事のお手伝いです。梨の大きさを分ける機械があるので、収かくした梨を計量台にのせたり、分けられた梨を箱につめたり、箱を運んだりする作業です。

 でも、1番お金が入るのはカブトムシです。夏休み前から5時に起きて秘密の場所に向かいます。そこにはくぬぎの木があります。南しゃ面の日当たりのいい場所です。お父さんが5年くらい前に苗木を植えて育ててくれました。若い木なのでたくさんカブトムシが集まります。

 でも、私たち以外にもそこでカブトムシをとる人がいるようです。メスしかいなかったときがあったからです。だからカブトムシの時期は早起きの競争です。

 とったカブトムシはフリーマーケットやお祭りの出店で売ります。オスは200円ぐらい、メスは100円ぐらいです。去年のフリーマーケットで売ったら1万円近くになりました。カブトムシのエサ代として少しはお父さんにやって、残りのお金は妹と私で山分けです。

 そして、秋冬のバイトは梨の木の荒皮削りとせん定をやって終わったあとの小枝拾いです。これは時給200円です。

 皮を削る理由は、雨などの水が梨の幹のくぼんだ所にたまるとこけが生えて、木のためによくないからです。特別のかまで削ります。それから、せん定とはいらない枝を切ることです。切った枝を拾うのが子どもの仕事です。あまりおもしろい仕事とは言えません。

 アルバイトでかせいだお金は、お母さんにあずかってもらいます。必要な時に少しずつおろして、マンガ本やマンガをかくときに使うペンやスクリーントーンを買います。4年生のときは、セミのおかげで自由研究ができて助かったけれど、セミは梨の害虫だから、セミとりはアルバイトとして続けて、もっとお金をもらいたいです!


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