月刊 現代農業
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●巻頭特集 ケッコー楽しい ニワトリのいる農業

巻頭写真

ニワトリは「自給」の象徴。
卵や肉を食べたり売ったり、鶏糞を利用したり。
干支も酉だし、2017年はニワトリの出番だ。

「ニワトリ何羽飼ってますか?
わが家のニワトリ適正規模はこれぐらい」より

「適正規模」を考えるとき、卵の販売やエサの調達や鶏糞の利用や鶏舎の規模など、さまざまなことがかかわってくる。ニワトリを飼うねらいとは、その羽数の根拠とは――。養鶏を経営の柱にしたい人、趣味にしたい人、ベテラン農家から新規就農者まで、広くアンケートにご協力いただいた。

このコーナーでは、ニワトリの羽数を表わすのに以下の記号を使用

このコーナーでは、ニワトリの羽数を表わすのに以下の記号を使用

今の時代、ニワトリ+飼料米がベスト

山形・川井大輔

いざというとき、卵は冷蔵庫なしでも腐らない

筆者(41歳)。離農した人の牛舎を改造して鶏舎にした
筆者(41歳)。離農した人の牛舎を改造して鶏舎にした

 静岡県浜松市出身で、山形県西川町にIターンで来ました。研修を2年受け、就農して3年目。現在の経営は平飼い養鶏400羽、水稲1.5ha、ソバ6haです。

 山形県での就農を考えたとき、雪が降ってもハウスなしで日銭を稼げるものを探しました。そして、北海道でも養鶏ができることを知り、ここでも挑戦できるはずだと思いました。

 また、東日本大震災でボランティア活動(食料支援)をしたとき、特に卵がほしいという声が多かったので、それもニワトリを飼う決め手となりました。停電で冷蔵庫が使えなくなると、生ものは腐ってしまいます。しかし、卵は2週間程度保存でき、栄養素が豊富なので、被災地での需要が高いのです。

卵の売り上げ+飼料米の補助金で、経営が安定

 ニワトリを飼う数ですが、まずはじめにエサのことから考えました。1羽1日120g食べるとして、その50%を自分でつくれる飼料米にしたかったのです。就農1年目は200羽入れたので、60g×200羽×365日で4.38t必要になります。しかし、その年は栽培の手続きが間に合わず、飼料米を購入しました。2年目は田んぼ70aで4t生産。3年目はさらに田んぼを借り、1.2ha作付けたので(8t近く生産できるので)、ニワトリを400羽まで増やしました。

 このあたりは中山間地ですので、水田がどんどん空きます。普通に米をつくるより、ニワトリと飼料米を同時に手がけるのが今の農政のなかではベストだと思います。卵の売り上げと飼料米の補助金である程度の金額を見込めるからです。卵は1個35円で、1日100個売るとして、年間127万7500円。飼料米は10aあたり8万円の補助が出るので、1.2haにすると96万円。合計223万7500円になります。

 飼料米は今後2haまでやれるはずなので、だいたい12t。とすると、ニワトリの数は600羽くらいまでいけると考えられます。どんなものか信用できない輸入トウモロコシを使うくらいなら、水田を活用しながら、自分で飼料米をつくるほうが安心安全だと思っています。

400羽
(鶏種:ボリスブラウン)
400羽
(鶏種:ボリスブラウン) エサ
半分は飼料米。1日1羽120gのエサを食べるとして、60g×400羽×365日で8.76tの飼料米が必要という計算。現在、1.2haの田んぼで8tほど生産。その他のエサは、自家栽培した無農薬のダイズ、地元のカボチャ生産組合からもらえる規格外品、購入した魚粉など。
鉛筆マーク

その他の経営メモ

労力/家族

本人、子供2人の3人暮らし。農作業は1人で。

収入・販売方法

卵は1個35円で、宅配(毎週20軒)と業務用(加工用)で、ほぼ全量売り切る。春先、少しあまるときだけ、近くの直売所で販売。東京の三軒茶屋にある飲食店にも卸している。

鶏糞利用

モミガラと混ぜて発酵させる。全量、田んぼに使う。

金をかけずに長く飼う

 鶏種は平飼いで一般的なボリスブラウンです。商売ですので、飼いやすくて丈夫なことが大前提。それとヒナの価格の問題もあります。ボリスブラウンは山形県に配送してくれる120齢の大ヒナのなかで一番手頃な価格でした(1羽約1000円)。

 また、近所の使わなくなった牛舎を改造して、ニワトリを飼っています。丈夫だし、雪で潰れる心配もありません。かなり広くて、1200羽くらいまで入ります。鶏舎建設の初期費用を抑えることができました。

 ニワトリの飼い方として、あえて廃鶏にしない方法でやっています。卵が大きくなったり、殻が薄くなったりして、品質が落ちてきますが、すべて加工用にまわすことで、なんら問題ありません。自分の実家が和菓子屋をやっているので、そこで買い取ってもらっています。

 ただ、産卵率は低下します。そのまま飼い続けると、普通は採算が合わなくなるはずです。自分で飼料米をつくり、エサ代を抑えているからこそできることだと思います。

(山形県西川町)

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

現代農業 2017年1月号
この記事の掲載号
現代農業 2017年1月号

特集:ニワトリのいる農業
田んぼの土壌診断/環境制御で作物はどう変化する/野菜に日没加温/果樹 夢のような仕立て/「将来性のある子牛」の見分け方/「○○の素」が売れる/非農家出身者を農家に育てるノウハウ ほか。 [本を詳しく見る]

自給養鶏Q&A 自給養鶏Q&A』中島正 著

これから鶏を飼ってみようという人、2、3年やってみたが疑問や障壁にぶつかって困っている人などに向けて自然養鶏50年の著者が、エサ、育すう、飼育環境、病害、経営の5つの角度からその心髄を懇切丁寧に解説。 [本を詳しく見る]

増補版 自然卵養鶏法 増補版 自然卵養鶏法』中島正 著

自然卵養鶏家にバイブルとされている『自然卵養鶏法』の増補版。原本発行当時にはなかった、赤玉卵や特殊卵・銘柄卵(ヨード卵、ビタミンE卵 等)の増加、平飼いでも大羽数・密飼いで薬やワクチンや輸入飼料中心の養鶏など、まがい物が横行してきている中で、小羽数・平飼、地域にある材料を利用した発酵飼料中心の給与、緑餌の多給など「自然卵養鶏」の基本を再確認。消毒やワクチンの否定、有精卵か無精卵か、卵価の設定、モミガラ利用、新規就農者への呼びかけなども。 [本を詳しく見る]

農家が教える 自給農業のはじめ方 農家が教える 自給農業のはじめ方』中島正 著

50羽から始める小羽数養鶏のやり方から、トラクタなど使わずにできる低コスト不耕起のイネ(陸稲)やムギ、農薬不使用の野菜づくりや自家採種の方法、山菜採取、農産加工など、本当の田舎暮らしの技術と知恵を紹介 [本を詳しく見る]

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