食農教育 No.60 2008年3月号より
京都市立朱雀中学校のダイオウショウ
松ボックリが教えてくれる自然のしくみの不思議
牧野茂樹
校庭の樹木は、創立のときに植栽されたものや、その後に植栽されたものが見られます。学校は一年を通して子どもたちや地域の方が活用する場所なので、考えがあって、校庭の植物の植栽・移植・伐採などが行なわれているようです。
校庭の樹木は、とりわけその存在が表わすものの影響が大きいので、秋になると紅葉し落葉する樹木と、一年を通じて緑の葉をつける樹木がバランスよく選ばれています。校庭の樹木がすべて落葉樹であれば、冬には北風が身にしみる学校になり、すべて常緑樹であれば、夏には暑苦しさも覚えるでしょう。校庭の樹木は年間を通して適度に緑があると同時に、春の新緑、秋の紅葉と、季節感が培われるように考えられているようです。
朱雀中学校には、校庭の木としてはめずらしいダイオウショウという松があります。大王松、つまり松の王様という字を書き、区民の誇りの木にも指定されています。一見して、クロマツやアカマツとは異なることが葉の長さからわかります。三葉で、四〇cm近くある長い針葉は、道に落ちていると思わず拾いたくなります。私は松葉相撲をしたくなるのですが、生徒たちはあまりやらないようです。
本校のダイオウショウは高さがまだ一二mほどで若木ですが、原産地の北アメリカでは四〇mを超える木があるようです。ダイオウショウたる由縁の一つに、その松ボックリ(松の球果)があります。クロマツの松ボックリの四倍近い大きさです。
理科室の前に置いたダイオウショウの大きな松ボックリと空き瓶でつくったしかけ(次頁イラスト参照。京都教育大学の坂東研究室で教えてもらいました)は、生徒の目を引きつけます。このしかけが問いかけていることは、「瓶のなかいっぱいに傘が開いた松ボックリを、どのようにして入れたのでしょうか?」というものです。瓶の小さな口からはどのようにしても松ボックリを押し入れることはできません。生徒に聞くと、「松ボックリが小さいときに、枝につけたまま瓶をかぶせておき、大きくなるまで待った」などという返事が返ってきます。
私は子どもの頃、御所のクロマツの松ボックリをよく投げて遊んでいたので、雨の後と天気のよい日では落ちている松ボックリの形に違いがあり、雨の後のほうが重さも増してよく投げられたことからピーンときたのですが、松ボックリは雨の日は傘を閉じ、晴れの日には大きく傘を開いて、羽を持つ種子を遠くに飛ばすようにしているのです。
生徒たちは、このしくみがたいそう不思議な様子でした。枝から落ちた松ボックリも、水に濡らすと傘を閉じる自然のしくみには驚かされます。
校庭のダイオウショウ (イラスト 牧野佳代子)
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