地域に根ざす食と健康の活動交流誌

食文化活動タイトル

学校栄養職員が歴史の授業に挑戦!
−昔の貴族や庶民の食事と学校給食を比べてみると

埼玉県深谷市立上柴東小学校 学校栄養職員 斉藤道子さんの実践から

<「食」に関する指導は栄養職員の出番>

 上柴東小は平成一〇年から文部省と深谷市から「パソコンを活用した『食』に関する指導」の実践研究校として指定されているため、今回の授業はこの研究の中の一部として年度初めから計画されていたものです。  しかし、この「『食』に関する指導」は必ずしも栄養職員がやらなければいけないわけではありません。上柴東小では、斉藤さんが普段から教室に入って、給食の時間や特活(特別活動)の時間に子どもたちに話をしてきました。こうした実績から、学校では当然のように栄養職員である斉藤さんの参画を求めてきたのです。(略)
 

<授業本番!>

 さて、いよいよ研究授業、このときの授業はコンピューター室で行われました。
 前の授業までに、子どもたちはインターネットや資料集などを利用して、貴族の生活全般を調べ学習しました。この時、貴族の食事について調べた子も数名見られました。
 まず、担任の茂木先生が前の時間までに学んだ貴族の住まいや衣服についてまとめをし、次に貴族の食事はどんなものだったか、この時間の授業の課題を示しました。
 ここで、斉藤さんの登場です。貴族の食事がどんなものであったか、子どもたちの調べ学習をもとに、板書でまとめ、当時の貴族の食事の画像(『芸術新潮』のもの)をパソコンの画面と黒板とに表示しました。用意した料理名のカードを子どもたちが貼り、その確認と訂正も兼ねてそれぞれの料理や食材を説明しました。その中で、自分が食べたことがある物や、今もある食べ物はないかを考えさせました。
 
ホヤの説明をする斉藤さん
子どもたちの感想を聞いてまわる斉藤さんと茂木先生  貴族の食事の中で誰も知らなかったのが、「ホヤ」です。大人が、お酒の肴として楽しむホヤも、深谷の子どもたちが知らないというのは当たり前なのです。海産物の「ホヤ」が青森県や岩手県でとれるもの、大きなホウヅキのような形をしたものと説明しました。そうした資料の提示や説明から、子どもたちは貴族の食事は、豪華で量も多いことに気づきました。
 では庶民の食事はどうでしょう。貴族の食事と同様にパソコンで画像を紹介し、子どもたちにカードを貼ってもらいました。そのメニューはヒジキの醤煮、汁、ご飯、塩、酒。これについて一汁一菜で身近な山菜、きのこを使っていたこと、米も玄米だったことなどを説明しました。そのシンプルな食事内容から、子どもたちはまるでダイエット食みたいだと思ったようです。

<貴族の食事はバランスが悪い!>

 次に、それらの貴族の食事と庶民の食事と授業当日の給食の三つについて栄養価を分析し、その結果をを各グループのパソコンにグラフ化し、比較しました。子どもたちからは「貴族の食事は塩分が多い」「ビタミン類が足りない」などの意見が出ました。一方の庶民の食事もタンパク質や他の栄養素も足りない、やっぱり学校給食はバランスがいいんだ、と子どもたちは改めて納得したようです。
 貴族はお酒の飲み過ぎ、運動不足、塩分の摂りすぎ、と今なら生活習慣病になるような食生活を送っていたわけです。子どもたちは、貴族の平均寿命が短かった事実を聞き、バランスの悪い食生活のせいもあるのだろう、という感想も持ちました。このように、子どもたちは千年も昔の食事を今の自分たちの食事と比較することで、平安時代を身近に感じ、また、自らの食事をも振り返ることができました。 (略)

食文化活動 トップ目次