地域に根ざす食と健康の活動交流誌

食文化活動タイトル

●地域の個性を生かした健康づくりを

(社)日本栄養士会 常務理事 原 正俊

■個人のニーズに応じなければ栄養指導は成り立たない

 (略)なぜ地域保健法が必要だったのか。それは一言であらわせば個人ニーズへの対応なのです。個人ニーズは多様化、高度化しています。今健康な人も、あるいは病気を抱えている人も、それぞれ個別のニーズを持っています。生活やものの考え方、価値観が違い、それが許される時代。このニーズに応えるのに、昔のように平均約15万人を対象とする保健所のような遠いところからでは難しい。そこで距離的にも近く、対象者が平均約4万人くらいの市町村レベルで対応するようになった。市町村の首長に権限を移譲したのです。もちろん保健所は、広域的な、高度専門的・技術的な仕事をしなければなりません。とくにO157やサルモネラ中毒、毒入りカレー事件、アジ化ナトリウム事件など危機管理問題が新たにでてきた。しかし日常の食と健康に関しては中央から地域に、集団から個人にというのが大きな流れなのです。
  ものがない時代・欠乏の時代と比べて現代は物余り現象で地域環境、家庭環境等がすべて変わってしまった。それに対する危機意識が背景にあります。(中略)平均的には栄養過剰なのだけど,個別に見ると、偏食等から欠乏している人もいる。栄養バランスが崩れ、また家族の団欒が失われている。そうした個人単位の問題に対処していかなければ、これからの栄養士の職務は果たせません。

■栄養過剰時代の指導のあり方■栄養士は指導者ではなくカウンセラー、アドバイザー■子どもの健康は地域にある「食」や「農」の総合力でつくる■栄養士はもっと積極的地域に飛びこもう■21世紀は地域の個性を生かした健康づくりを


●「食」指導に学校全体が動く時代

文部省体育局学校健康教育課 学校給食調査官 金田雅代

■校長・教頭先生がともに「食」指導の大切さを実感

 (略)私は、「総合的な学習の時間」が登場したときまず思ったのは、学校給食でやってきたことがまさにその総合的な学習の時間そのものだと……。といっても、それまではきちっと体系づけられたものではありませんでした。(中略)総合的な学習の時間の中で「食」を切り口にやっていただくといろいろな発展がありますよということを学校全体にわかっていただくことでした。
  たとえ、「食」という柱を立てなくても、教科の中に「食」に関連するものが必ずあるのです。初等中等教育局でまとめた総合的な学習の時間の実践事例集があるのですが、英語で日本の地域の産物や食べ物を紹介している。国同士の食べ物を比較する場面もあるのです。「総合的な学習の時間」に何をやろうかと検討されるとき、どんなテーマでも必ずそこには「食」に関わる部分があるから、栄養職員は「食」に関連した授業のアイディアを出しなさい、と私は言っています。担任に対して、こういうことができますよ、と積極的な提案をしてほしいと。(中略)栄養士の目線で子どもの姿を見た時には、恐らく学級担任の先生方がご存じないような一面を見るのではないでしょうか。一つの目よりも二つの目と言いますけど、そういう役割が果たせるようになってくると栄養職員を見る先生方の目も違ってきますね。ティームティーチングがそうです。一度やってみると、じゃあ次はうちの授業でやってと、こういうのが当たり前になってくる。でも実際には、きちっと指導計画に位置づけられてティームティーチングをやっている例は非常に少ないですね。だからそれが年間指導計画に位置づけがされるようになれば、本物です。早くそれを実現してほしい。

■学校栄養職員はどんどん授業アイディアの提案を■調理員さんとのチームワークがますます大切■学校を超えた栄養職員の協力関係づくりを■地域の栄養士とも手を結んで■年間指導計画に組み込まれるような栄養職員の活躍を


★8月24日「『食』に関する指導全国研究会」が開かれる。
全国から校長・教頭・教育主事など500人集まる。

 富山大・山極隆教授は……「総合的な学習の時間」を体験ごっこというようにお茶をにごさない。「食」に関する知識を伝えるだけでなく、それを通して子どもたちに問題解決の力、興味関心を高めていくような、子どもたちの基礎的な素養をつける場にしてゆくべきだ。
 東京家政学院短期大・成田國英教授は……現状でも、社会科で食品の流通を学ぶというように「『食』に関する指導」は各教科でも行われている。しかし、それぞれの教科の学習として、子どもの頭の中でバラバラになっている。そのバラバラになったものを一人ひとりの子どもの中で「総合化」できるのが総合的な学習だ。

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