地域に根ざす食と健康の活動交流誌

食文化活動タイトル

パソコンを使いこなして「食」の授業づくり 給食の献立づくり
−2000年はいよいよ食で30時間の「総合的な学習」

福島県矢吹町立矢吹中学校 学校栄養職員 亀田明美さんの実践から

■生徒が献立をつくり、給食で検討 パソコンを使って家庭科のTT

 昨年度から、二年生の七月の家庭科の授業、「望ましい食生活」は亀田さんと家庭科の先生のTTで行います。  生徒全員がバランスのとれた食生活によい献立を作ることをねらった授業です。ここで亀田さんはMicrosoft社のソフト、Power Pointを使って授業をすすめます。

 まず、「バランスのとれた食生活を考えよう」をタイトルに出し、ハンバーガーセットと和風献立を見せ、どちらが食べたいか考えさせ、それぞれを6群のレーダーチャートで比較します。献立を考えるポイント、献立を考える手順を示していき、生徒はグループごとに実際の献立作りに入ります。

 Power Pointは画像や文字、グラフを入れたり、はずしたりが簡単で、一度作ればほかのクラスでも使えるところが亀田さんも気に入っているところです。

 生徒の作った献立の中で、バランスのよい献立は給食で採用し、7、8月の献立に活かされます。その日の給食は、調理員の方にお願いして、残菜をとっておいてもらい、実際どれくらい食べてもらえたのか、献立をたてたグループで残菜の実態調査をします。

 あんなにがんばってたてた献立なのに、こんなに残している。栄養バランスはよくても、それぞれの料理がいくらおいしくても、組み合わせがちぐはぐなら食べてくれない、おいしくない。ここで、生徒は机上での献立作りの難しさを改めて実感します。

パワーポイント
パワーポイント
 献立のバランスを写真とレーダーチャートで示します
 

■福島の郷土料理「くじら汁」を給食に再現 仕入先をインターネットで検索!

 矢吹中では、先述の7、8月が「食に関する指導で生徒が作成したバランスのよい献立」というように、月ごとにテーマを決めて、給食の献立をつくります。今年の五月は「福島県の味めぐり」。相馬、いわき、阿武隈、県北、会津、南会津の六つの地域の代表的な料理で給食を実施しました。中でも評判をよんだのが、南会津の「くじら汁」。

 くじら汁のメインの食材、クジラ。ほんの20年前の給食には当たり前に入っていた食材だったのに、今はそんじょそこらでは手に入りません。でも、南会津の食にはどうしても、くじら汁を入れたい!と亀田さんは諦めません。

 ここで、パソコン登場。インターネットで検索し、太地町のホームページでクジラを販売しているところを発見!さっそく、出入りの肉屋さんにそこの電話番号を教え、取り寄せてもらうよう交渉しました。

 なぜ、山間地である南会津地方で海の食材を使ったくじら汁なのでしょう。

 「会津はもともと隣の新潟からの文化とともに海産物も入ってきたんです。その中にくじらもあり、くじらを使った食文化が会津に根づいたんです。」と亀田さん。

 給食の時間には、校内放送でその日の給食についての解説を流します。生徒達も、ただ、めずらしいだけの給食というのではなく、「くじら汁」のもつ背景、新潟県との文化経済の流通があってこうした食文化が会津に根づいたことも知ることになるのです。

 「福島県の味めぐり」というとそれぞれの先生方の地元の料理が登場することになり、その中身が気になるところ。ちょっと切り方が厚いな、うちの方の味つけは・・・、と亀田さんにわざわざ報告しにきてくれる先生もいて、先生自身の食への関心も広がってきたのです。(略)

※矢吹中の学校給食のホームページ 「パソコンを活用した食に関する指導の実践研究のHome Page」
http://www.shirakawa.ne.jp/~yabuki/

 

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