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「ドローンで空から防除」コーナーより

筆者と愛用のドローン(エンルート社AC940)。後ろはドローンでレンゲを播いた田んぼ。今年もきれいに生えそろった(依田賢吾撮影、以下Yも)

筆者と愛用のドローン(エンルート社AC940)。後ろはドローンでレンゲを播いた田んぼ。今年もきれいに生えそろった(依田賢吾撮影、以下Yも)

防除だけじゃなく、レンゲ稲作にも活用

岡山・森山真一

粒剤用の散布機(矢印)を取り付けたドローン。散布機は別売りで約20万円。購入当時は機体費用などに使える補助金があまりなく、すべて自己負担だった

汗もかかずに快適作業

 1957年生まれの61歳です。本業は建設会社経営ですが、近所の田んぼを預かって稲作に取り組むようになり、現在は栽培面積が4haまで増えました。また、ブドウも6反ほどつくり、JAのブドウ部会長も務めています。

 防除用ドローンを購入したのは2015年です。使う薬剤は8倍希釈で溶かす水も少量。4リットルのペットボトル1本に薬液を作れば50a散布できます。機体も軽いのでとにかく持ち運びがラク。操作は機体から離れて行なうので、体に薬液はかかりません。作物には葉に小さな白い粒が付くので、付着状況は目で確認できます。実際に見てみると、プロペラがつくる下向きの風のおかげで、綺麗にしっかり付着している様子がよくわかります。

 モーターでプロペラが動くので音が静かで、早朝の風の吹かない時間帯から作業できます。動噴で防除する人は汗びっしょりなのに、私たちは涼しい顔で次の田んぼに向かいます。思わず気の毒な気持ちになるほどです……。

レンゲ稲作にも重宝

 導入時の経費だけでも300万円近くかかったので、水稲の防除専用ではもったいない。そう思っていたところ、粒剤散布のアタッチメントでレンゲの種子も散布できることを知りました。

5月、満開のレンゲをすき込んでいるところ。肥効はとても高く、肥料は以前に比べて半分以下に減らせるようになった

 レンゲ稲作はドローン導入の数年前から2haほど行なっていて、種子は手散布していました。ドローンでもたしかに種子の散布ができ、作業時間も短縮できました。さらに、手散布ではムラなく播くのに3〜5kgの種子が必要でしたが、ドローンは均一に播けるので2〜2.5kgで十分なこともわかりました。あまりに簡単で嬉しかったので、今ではブドウ園にもレンゲを播種して、花が咲くのを楽しんでいます。

 種子散布では、薬液散布よりも高度を1m高くして散布するのがコツです。そうすればより薄く広く均一に播けます。

電線、カキやウメの木、壁には注意

 操作していて、いちばん気になるのは立木や電線。ドローンはプロペラが命。それらに引っかかって少しの傷ができても、操縦が不安定になり、モーターなどの故障の原因にもつながります。

飛行時はこんな場所に注意

電線はもちろん、電柱の支え用に斜めに張られた線(矢印)にも要注意(Y)

機体が離れるほど正確な位置がつかみづらくなる。向こう側が壁のようになった田んぼは補助者と協力して慎重に操縦する(Y)

 田んぼまわりに植えてあるカキやウメの木、雑木に接近させないことはもちろんですが、不要な枝は持ち主にお願いしてあらかじめ切ってもらうこともあります。

 さらに、100mほど先まで飛ばすと、操縦者からは機体の正確な位置がわかりにくい。とくに向こう側が壁のようになっている田んぼだと、今にもぶつかりそうで緊張します。必ず無線を持った補助者に向こう側に立ってもらい、機体が端に近づいたら合図してもらうようにしています。2人の連携がとても重要です。

ランニングコストがバカにならない

 ドローンの導入・運用にあたり、コストをいかに安く抑えるかが課題だと思います。普及が進み、製品価格は下がっているようですが、機体の整備や点検、保険などのランニングコストがばかになりません。自動車保険同様の車両保険があり、私も入っていますが、200万円以上の機体なら、保険代は年7万〜8万円にもなります。

 バッテリーの持ち時間の悪さも難点です。私は田んぼと家が近いので、2個(1個3万5000円ほど)用意して、1回飛行させるたびに家に戻って交換、充電しています。

 また、薬液も田んぼの大きさにあわせて、25aなら2リットルというように必要な分だけをタンクに入れ、機体をできるだけ軽くしておくことで、無駄なパワーを使わず、少しでもバッテリーが長持ちするように工夫しています。

(岡山県津山市)

取材時の動画が、ルーラル電子図書館でご覧になれます。「編集部取材ビデオ」から。

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現代農業 2019年6月号
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現代農業 2019年6月号

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