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Ruralnet・農文協食農教育2001年11月号
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食農教育 No.17 2001年11月号より
[特集]深まる広がる 図書・情報の生かし方

  図書・情報がこんなに役立った  

本が後押し子どもの自由研究

本でニワトリを
ふ化させる自信がついた

兵庫・三田市 久後拓磨くん

ニワトリ大好き農業少年の久後拓磨くん
ニワトリ大好き農業少年の久後拓磨くん(右)と妹の瑛梨さん、弟の郁磨くん。家の前の畑にて
 久後拓磨くん(三田市立藍小学校6年生)は近所でも評判の農業少年だ。2年前の4月に、近くの三田サティのペットショップで、雄のヒヨコ1羽と雌5羽を購入して以来、ニワトリの飼育に夢中。4月にふ化し、いまではずいぶん大きくなったヒヨコ9羽も加わり、家の庭はとてもにぎやか。3年生の妹瑛梨さんと5歳の弟郁磨くんといっしょに、毎日エサやり、トリ小屋の掃除を欠かさない。そんな拓磨くんのお気に入りの1冊が『ニワトリの絵本』(農文協)。絵本を活用しながらの飼育。それはもう新しい発見と驚きの連続だ。

●小屋づくり

 最初のトリ小屋はお父さんと親戚の人に手伝ってもらった。ナミのトタン板と網以外は、家にあるものを使った。お父さんは三田の野鳥の会の世話係をしていて、トリ好きだからとても頼りになる。参考にしたのは『ニワトリ アヒル ウズラ』(ポプラ社)。学校の図書館で借りてきた。ニワトリの飼い方が載っている本はこれしかなかった。

 今年の5月にはヒナが誕生したので、育すう箱もつくった。子ども3人でつくるとすぐつぶれてしまう。柱をしっかり打ててないのだろう。このときはおばあちゃんに手伝ってもらった。『ニワトリの絵本』を参考に、ヒヨコが寒くならないように、ヒヨコ電球をとりつけてノレンもかけた。今、ヒヨコが大きくなってきたから、新しいトリ小屋を3人で製作中だ。

●エサやり

 ヒナがかえったとき、育すう飼料を買ってきてやったが、どうも今回のヒヨコは細かいのを食べにくそうにしている。だから大きな配合飼料をやったらえらく喜んだ。家でつくっているお米のクズ米もやったらとてもよく食べる。そのほか、ごはん、スイカの食べ残し、パン、リンゴの皮と、人のおこぼれが大好きだ。

 でも、それだけじゃなかった。虫も好きだし、カエルも食べる。小さなヘビを食べようとしていたときもあった。つかまえて「これはあかん!」とパチパチたたいたけど、結局ペロンと食べてしまった。これには驚かされたけど、川でとった魚を「食べるかな?」と思ってやったときは、驚きを通りこして感心した。はじめ体から食べようとつついていたけど、ウロコがどうしてもはがれない。それで目ん玉から食べだした。そこからうまく身も食べてしまった。

トタン板と網以外は家にあるものを使ってニワトリ小屋が完成!
トタン板と網以外は家にあるものを使ってニワトリ小屋が完成!
ゲームは苦手だけど、卵の数調べにはパソコンが役立った
ゲームは苦手だけど、卵の数調べにはパソコンが役立った

 それとたちの悪いのが大きいほうのニワトリで、育てたトマトが大好物だ。トマトは2年前からワキ芽をさし木して育てている。おばあちゃんがワキ芽を捨てるのを見て「もったいない!」と思ってやってみたら、これがよく育ったからだ。収穫も迫ったある日、このあたりでもやっかいなカラス対策にと、トマトの周りにテープをかけたり、赤いカサをさしたけど、重要なことを忘れていた。ニワトリ対策だ。大きいニワトリが下から入ってトマトを食べてしまった。追いかけてもバーと飛んで逃げちゃうから追いつかない。それを見たカラスが真似して下からピョンピョン入りだした。結局、被害が2倍になったこともあった。

 それから、田んぼの畦草なんかは刈ったあと野積みして堆肥にしている。おばあちゃんは燃やそうとしていたけど、もったいないから堆肥にすることにした。これをナスのウネにしいてやるのだが、なんとも虫が多くなる。コガネムシの幼虫とかミミズとか。それをねらってニワトリがやってくる。虫をとるだけならいいけど、ほじくり返してせっかくしいた堆肥をちらかしてしまう。「もとどおり直してくれたらいいんだけど」といつも思ってしまう。

●観察

 本を見たらニワトリは1日に1個卵を産む、と書いてあった。はじめて飼ったニワトリが2年前の9月に卵を産みはじめたとき、ためしに毎日なん個産むかを記録することにした。お父さんにパソコンの使い方を教えてもらって、表をつくった。途中疲れてきて、次の年の6月でやめてしまったけど、ほぼ毎日1羽につき1個、夏の暑いときはちょっと息切れすることがわかった。

 そのほか、飼育していて気づいたことはいっぱいある。たとえば、だっこしていたときに耳があることに気づいた。目のうしろのところをペロンとめくると、小さな穴があった。これは耳に違いない。あと、ニワトリの指は前に3本あって、後ろに支えが1本あるけど、雄にはもう1本上のほうにツメがある。これに気づかずにじゃれていると、いたずらをされて血を流すはめにあう。妹はしょっちゅうケガをしている。ニワトリは抱っこをされていておりたくなったら、足で人の手をポンポンとたたく。それでおろしてやらないと、バタバタしだすのだ。

 でも、けっこう凶暴なのに水にはみょうに怖がるのだから、かわいい。大きいニワトリなら軽々飛び越えられる庭の池にも、絶対近寄らない。水が怖いみたいだ。

山本さんから借り受けた古いふ化機
山本さんから借り受けた古いふ化機。とがったほうを下に向けて置く。
「ここをカタコトさせて転卵させるんだよ」

●ヒヨコのふ化

 ニワトリを飼いはじめたきっかけは、幼稚園のとき、園でヒヨコから育てているところを見たからかもしれない。卵を毎日1個産むから、交替でもらって家に帰る。だいたい月に1回くらい自分の番が回ってくる。そのとき、温めてやったらヒナがかえるかな? と思ったことがある。お母さんに「やめとき!」って言われたから、温めなかった。

 お母さんはエサ代が高くつくからって反対したけど、4年生のときに1度こっそりやってみたことがある。自分のニワトリが卵を産みはじめてすぐのときだ。どうやってすればいいのかわからなかったから、冬に足を入れる足温器に卵を入れてみた。そのときは卵をいちいち転卵させなけりゃならないことを知らなかったから、やっぱり腐ってしまった。

 でも、去年の夏に大西のおばさんから絵本をプレゼントされた。うれしくって、食い入るように読んだ。そのなかですごい発見をした。「ふ卵器」だ。「足温器やなくてもふ化できる!」と思った。ヒナのかえし方も詳しく載っている。それで、おばあちゃんに頼んでふ卵器をもっている人を探してもらったら、近所の山本さんの家にあるとわかった。山本さんはアイガモでイネつくりをしている人で、ふ卵器でアイガモをかえしているらしい。さっそくビール1ケースをたずさえて借りに行ったら、「古いのん余ってるからもってきや」って言ってくれた。今は勝手に温度や湿度の調節をしてくれる「自動ふ卵器」を使っているらしい。

 さっそく家で試してみた。有精卵40個を入れてみたけど、温度と湿度の調節がむずかしいようだ。1週間目に本のとおり電球の光で検卵してみたら、赤い血管は見えなかった。でも、もしかしたらと思ってもう2週間ふ卵器に入れたけど、やっぱりダメ。40個も入れたのに1羽もかえらないなんてショックだった。結局、山本さんに頼んで、自動ふ卵器でかえしてもらうことにした。ようやく、14個の卵から10羽のヒナが誕生した!

●ニワトリの死

 はじめてニワトリが死んだのは去年の11月15日。みんなからいじめられてた雌のニワトリだった。目の前でなにかをのどにつまらせて、1晩苦しんでいたけど、死んでしまった。毛並みとかがきれいで1番好きなニワトリだった。ぼくは30分くらい泣いた。おばあちゃんが「ええやん、ニワトリくらい。昔は肉にして食べよったで」ってなぐさめてくれたけど、それを聞いてまた涙がでてきた。

 2羽目は12月4日。立て続けに死んじゃってショックが大きかった。前の日の夕方、小屋の戸を閉め忘れていたのがいけなかった。朝起きたら、そのニワトリの姿がなくて、ハネだけが飛び散ってた。たぶんキツネに食べられたんだと思う。これもやっぱり弱い子だった。

 あと、おととしの台風のときはぼくが怖い思いをした。小屋が吹き飛ばされたからだ。コッコちゃんがかわいそうで、あわてて外に飛び出したときに、家の屋根瓦が背中の後ろに落ちてきた! ニワトリはといえば解放されて、草とか虫とか、エサをおいしそうに食べていたのを覚えている。

久後拓磨くん(右)と妹の瑛梨さん

レタスを育てて直売所で一儲け

 拓磨くんがこうしてニワトリの飼育や畑仕事が大好きなのは、平成4年に亡くなった家のおじいちゃんと、宝塚にいる母方のおじいちゃんの教えが大きいようだ。2人ともよく子どもを畑に連れていく人で、野菜のつくり方をていねいに教えてくれる。今年、宝塚のおじいちゃんにレタスのつくり方を教えてもらった琢磨くんは、おばあちゃんが登録しているパスカル三田という直売所で収穫したレタスを売った。1玉100〜150円で27000円もの売上がでた。もちろんおばあちゃんに3000円の手間賃と運賃を支払ったという。この夏には、宝塚に5泊してキュウリやエンドウ豆の収穫を手伝ってパスカル三田に持っていった。

 おじいちゃんと拓磨くんのようすに、親戚からは「そんなことばっかりさせて、勉強は大丈夫なんかいな」という空気が漂ったこともある。そのときはおじいちゃんもけっこう悩んだ。「家にいるときはなんでもできるけど、学校では引っ込みじあんであまり積極的でない」面もある。ニワトリを飼いはじめたときにバカにされたこともあった。でも、「仲間集会」のとき、ニワトリについて書いた作文を読み上げたら、友達も「ゴメンな」と言ってくれた。去年の文集では「ぼくは農業をしたいです!」と書いた。

 6年生になった今、畑以外の勉強についても「集中するときはしっかり机に向かう」ようになったという。おじいちゃんの悩みもふっとんだようで、「レタスは夏を過ぎたら育ちが早い」ことも教えてくれた。8月26日にはおじいちゃんの家で種まきをした。また、レタスで一儲けできるかもしれない。

(まとめ 編集部)


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