カーバッテリーとインバーターで停電してもお風呂に入れた
千葉・酒巻良行
左が筆者。自動車整備士、農業機械整備士1級の知識が活きた。九十九里町も断水したため、各種タンクに水を溜めて、友人に配ってもらったりもした
両親をお風呂に入れたい
台風15号、19号の被害に遭われた皆様にお見舞い申し上げます。15号は今までに経験したことのない強風で、わが家もカーポートの屋根が飛んだり、畑ではハウス4棟のビニールが破れ、タマネギ播種後に被せてあった黒寒冷紗が剥がされたりしてしまいました。
幸い、自宅は停電も断水もありませんでしたが、大網白里市にある実家は電気が4日、水も3日間止まりました。台風翌日以降は非常に暑く、年老いた両親が困ったのはお風呂でした。ガスは来ていたのですが、今のガス給湯器は電気制御で、水とガスと電気の三つが揃わないとお風呂には入れません。先に水が通ったので、ガス給湯器に電気さえ流せば、自宅のお風呂に入れてあげられると考えました。
バッテリーとインバーター
必要なのは「カーバッテリー」と「
正弦波 インバーター」。インバーターとは、車のバッテリーなどの電気(DC12V)を家庭用の電気(AC100V)に変換してくれる機械です。精密機械にも使え(正弦波)、300Wまで対応できる物が、カー用品店やネットで、8000〜1万円で入手できます。カーバッテリーとインバーターがあれば、ガス給湯器の他、スマホの充電や明かりを灯すこともできる
カーバッテリーは60B24Lの製品を買いました。大きめの乗用車用のバッテリーで、わが家のホンダステップワゴンもこのサイズ。数字が大きいほど電気をためられる容量が多く、小型車には36Bとか40Bとか、もう少し小さいバッテリーがついています。
Bというのは端子の大きさで、A端子とかD端子もありますが、乗用車はほとんどB端子。ちなみに24というのはバッテリーの箱の高さ。「L」は端子の位置(レフト)を示しています。
このサイズのカーバッテリーは6000〜8000円ですが、解体屋さんに行ったら2000円で買えました。
このインバーターにはバッテリークリップがついています。赤いクリップをバッテリーのプラスの端子に、黒いクリップをマイナス端子につなぎ、ガス給湯器のコンセントを抜いて、インバーターに差し込む。たったこれだけで、お風呂が沸かせるようになります(故障防止のため、最初は機械に詳しい人に相談するのをお勧めします)。
今回動かしたガス給湯器は消費電力115Wと、あまり多くの電気を必要としません。とはいえ、少しでも電力を抑えるために、水を湯船に溜めて追い炊き機能を使いました。問題なくお湯が沸いて、両親はシャワーを使うこともできました。久しぶりに、自宅のお風呂にゆっくり浸かり、嬉しそうな両親の顔を見て、少しは親孝行できたかなと感じました。
お風呂の他、みんなが困っていたスマホの充電や夜の明かりを灯すこともできました。7W程度のLED電球なら、結構明るくて長時間使えました。
農家は災害支援の拠点
農家には車はもちろん、農業用機械もあります。非常時には、エンジンをかけたトラクタなどのバッテリーにインバーターを接続すれば、発電機代わりにも使えます。大事に使えば、数日の停電ならば耐えられるはずです。
また、ソーラーパネルを備えた農家も増えてきました。停電時は自律運転で使えるので、自動車用の12V充電器(8000円程度)でカーバッテリーを充電し、簡易蓄電池としても使えます。持ち運びできるので、停電していない地域で充電してもらうという手もあります。電気のシェアです。
農家には電気の他、井戸やポンプ、燃料にお米や野菜などの食料、雨風が凌げる倉庫やハウス、その他さまざまな資材。そしてなにより、状況をさらによくしようとする工夫や向上心、何があってもタネを播き続けてきた根性があります。今回の台風のような災害時には、農家が災害支援の重要な拠点になるかもしれないと思いました。
(千葉県白子町)