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農文協増刊現代農業>農家発若者発 グリーン・ニューディール_編集後記

農家発若者発 グリーン・ニューディール 地域創造の実践と提案

現代農業2009年8月増刊

【編集後記】

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●218頁の記事で関曠野さんが紹介している基礎所得保証(ベーシック・インカム)は、「国民配当」ともいい、その考え方は、富は共通の富のプールとしての、人びとの協力と結合から生まれるもので、過去の諸世代もその創造にかかわっているのだから、すべての国民が配当を受ける権利があるというものらしい。ビル・ゲイツが突如無からウインドウズを発明したのではなく、人類の偉大な文化的遺産があって誕生したのだから配当は人類が等しく受ける権利があるというのだ。
 とはいえ「究極のバラまきではないか」と思っていたが、213頁の家中茂さんの記事で「土地の価値は、代々にわたる村落の共同によってつくり出されてきたものであって、たまたま現在、土地の名義人となっている一個の『私的権利を有する者』に帰せられるものではない」を読んでかなり得心した。だから弱者に共有地の優先的利用が「恩恵」ではなく「権利」として認められるのだ。日本のむらには人が生存していくうえでのすべての仕組みがあったようだ。(甲斐良治)

●兵庫県加西市上万願寺町では昨年、むらに住み着き、農業を始めた二人の青年の話題でもちきりだった(44頁)。藤本圭一郎さん、藪下直也さんはまだ二十歳代とあって、日中草刈りをしているだけで、むらが活気づく。イケメンなうえに働き者の二人はとくにおばちゃんたちに大人気だ。おばちゃんだけではない。高校一年の大氏優太くんは、昨年二人から休耕田を開墾した畑で、ため池の泥のミネラルを生かしてダイコンをつくりたいという話を聞いて、『しあわせダイコン』という絵本をまとめた。今年は原始人会の里山整備にも参加した優太くんは「ぼくはいっとき外に出ていったとしても、いずれは万願寺の『おっちゃん』になる」と言っているという。おっちゃんたちが始めたむらおこしが都会の青年を引き寄せ、それがまたむらの少年の心をも動かしている。(阿部道彦)

●群馬県甘楽富岡地域で青年海外協力隊の派遣前研修を実施している自然塾寺子屋(116頁)。取材二日目、村落開発普及員のみなさん(男女各四名)の報告会に参加した。会の終了後、副代表の新井圭介さんが「かまどづくりの資料を忘れないように」と隊員たちに話した。寺子屋には地元の農家から聞き書きしたかまどづくりのテキストがある。多くの派遣国でかまどは必需品。日本のものは熱を逃がさない構造で、薪が少なくてもすむ。
周囲の植生への負荷も減らせるので、派遣国で大いに喜ばれる。毎年、資料を忘れた現地の隊員から資料請求がくるので、念を押したのだ。「かまどひとつとっても調べるほどに奥が深い。こういうことを学びたい人はたくさんいると思った」と活動を開始した当初をふり返る代表の矢島亮一さん。自然塾寺子屋の原点にふれた気がした。(馬場裕一)

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