食農教育 No.67 2009年3月号より
これであなたもダイズ名人!
地元の品種を適期にまくべし
長野県植物防疫協会須坂研究所所長 高橋信夫
学校農園でダイズを栽培したが、「どうもうまくいかない」という相談を受けることがよくあります。話をお聞きすると、土づくりなどを工夫され、非常に熱心に栽培されたのに失敗することが多いようです。なぜでしょう? よくある失敗例についてそれぞれの対策を考えてみましょう。
(1)地域に合った品種を選ぶ
エダマメまでいったのに雨でサヤがカビてしまった。そのうえ、収穫適期がわからず、乾いたサヤからマメがこぼれ落ちて、収穫がだいぶ少なくなってしまった、という失敗。
この失敗の原因は、品種の選定を間違えたためと推測できます。エダマメ用品種は一般的に早生(早く熟す)品種が用いられます。特に、一学期中にエダマメとして利用しようとすると、北海道などで開発された早生品種を使う必要があります。
ダイズは短日植物(日長が短くなると花芽を分化させ[花になる芽を出して]開花する)です。夏至(六月二十一日頃)以降、日長が短くなったのを察知し花を咲かせますが、北海道ではこの仕組み通り夏至以降に開花しますが、東京や大阪では北海道に比べ日長が一時間程度短いので、ダイズは日が短くなったと錯覚し、夏至前でも花を咲かせます。品種によって異なりますが、エダマメとしての適期は花が咲いて三〇〜四〇日後です。また、マメが成熟するには、開花後五〇〜六〇日は必要です。
七月末にエダマメとして利用した品種ですと、八月中旬には成熟します。ただ、この時期は高温で夕立などがあるため、なかなかうまく成熟しません。サヤは褐色になっているのに葉や茎はまだ青々している状態で、サヤがカビてしまうことがあります。
この対策は、地域の農業改良普及センターや農協の技術員の方に相談し、地域に合った品種(エダマメ用品種ではないですよ!)を選ぶことです(種苗店・園芸店では地域の品種は扱っていません)。
図1からもわかるように、七月末にエダマメを食べようとすること自体に、無理があります。中秋の名月は、昔から「豆(エダマメ)名月」ともいわれるので、二学期になってからエダマメを楽しんでもよいのでは。
また、収穫の時期も図1に書いてありますが、葉が落ちて、サヤが褐色(品種によっては暗褐色)になり、茎を振るとカラカラ音がするようになれば、収穫適期と判断してよいでしょう。
(2)種を適期にまく
図2 ダイズの花葉や茎は伸びるのに、花が咲かないという場合は、本当に花が咲かなかったのでしょうか? 上述したように、ダイズは日長が短くなれば必ず花を咲かせます。ダイズの花は、茎の付け根に固まって(花房)咲かせるので、葉の中に隠れていて、見つけにくいのです(次頁の図2)。
茎や葉が伸びるのに実がならないのは、図1の播種(種まき)時期に播種していないためと思われます。(1)で述べたように、日長が短くならないとダイズは花芽を分化させませんから、それまでは葉を出し、茎をどんどんと伸ばしていきます(日本の品種は花芽分化が進めば茎の伸長は止まります)。一般に「早生は早く、晩生は遅くまく」ことになっています。地域の品種それぞれに播種適期がありますので、地域の慣行に合わせた栽培法を実施されると、失敗は起こらないと考えられますので、近くの農業改良普及センター、農協にお聞きください。
(3)虫害を防ぐ
カメムシの終齢幼虫 カメムシの成虫サヤはついたのに、中にマメが入っていない場合、原因のほとんどは、害虫(カメムシ類)による吸汁被害です。エダマメの頃、ペチャンコになった青いサヤからマメを出すと、マメの一部に黒い斑点を見つけることができます。これが、カメムシ類に刺された跡です。
ダイズは一〇日〜二週間、花を咲かせます(株全体として)。早く咲いた花からサヤが伸びますが、遅く咲いた花のサヤが急激に伸びることで、ほぼ一斉にサヤが太ります(茎つきのエダマメのサヤを見ると、サヤの大きさはほとんど同じです)。このサヤが太りだした頃から、カメムシ類が飛来し、マメの中の汁を吸い取ります。カメムシ類の成虫は、それほど大きな被害を発生させませんが、幼虫(アリによく似ていますが注意深く観察しますと触覚が長く体もやや細い)が被害を大きくします。幼虫は暗いところに生息します。
対策としては、農薬を散布することです(使用できる農薬・散布時期・濃度などが決まっていますので、農協などに相談して下さい)。農薬の散布は子どもたちにとって危険なので、農薬を使いたくないときは、左の囲み記事のような方法もあります。
また、ダイズは日当たりのよい、水はけのよい場所を好むので、日陰になる木や建物のない場所を畑に選びましょう。
ダイズの栽培において大切なことは、品種と播種時期と日当たりの三つのポイントです。この三つを押さえれば、「ダイズ栽培は簡単!」と言えます。
農薬を使わないカメムシ防除
ミント岐阜県下呂市の青木喜美子さんは、トウガラシを20〜30分煮て汁をとり、同量の木酢(木炭をつくるときに出る液。園芸店などで売っている)を混ぜて、水で1000倍に薄めてまいています。それまでは、ダイズやエダマメがカメムシに吸われて全滅したことがありましたが、このトウガラシ液を何度かジョウロでまいたところ、結構よくできるようになりました。
また、ミントなどのハーブ類をウネ間にまいたり、混作したりすると、ハーブ類をカメムシなどが嫌うので、虫を寄せつけない効果があると言われています。
(『現代農業』2008年6月号129頁より)
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