地域に根ざす食と健康の活動交流誌

食文化活動タイトル

はじめに・本特集号のご案内

「地域に開かれた給食」へ
"こころざし"のネットワークをどうつくるか

編集部

■給食を"地域の恵み"の学びの場に

 「開かれた学校づくりを進める」ということが、平成14年4月から施行された新しい学習指導要領に、初めて明記されました。学校を地域に開かれたものにし、地域の教育力を学校に取り入れようという改革です。

 学校は、子どもたちにとって学びの場であると同時に、暮らしの場でもあります。お昼に、みんなでいただく給食も、暮らしに欠かせない食事の場であり、その食素材や料理法(食文化)を通して地域に開かれた学びの場にもなるものです。

 戦後、米国からの小麦や脱脂粉乳の援助を受けてスタートした、飢えをしのぐ栄養補給第一の「パン給食」から、飽食といわれる時代のなかで、より個性的に心豊かで安心な食事を楽しむ、地域に根ざした「地域に開かれた給食」へ。学校給食は新しい段階を迎えています。

■こころ熱きサポーターがいる

 いつどこで誰がつくったのかがわかる食素材や加工品、地域でとれた新鮮で安全でおいしいものを子どもたちに食べさせたい。食べ物とは、本来その地域の自然(山・川・海・田畑)と人(農家や漁家)の恵みをいただくもの。考えてみれば当たり前な「地域に開かれた給食」には、地域それぞれに応援団がいます。

 給食をいただく子どもが我が子であり、孫であり、自分の出身校であるならば、心の通う給食にするのに、もっと協力できるのではないかと考えている農家や、その集まりである地域のJA(農協)。田んぼがあれば、お米や麦や大豆を、それを加工した味噌を。畑があれば新鮮な野菜を。

 地元でできたものを地元で消費する「地産地消」で地元を元気にしたいと考えている市町村の行政担当者も、「地場産給食」の応援団です。

 さらに、地元の教育委員会や「学校給食会」が応援団なら、鬼に金棒、とんとん拍子に「地域に開かれた給食」が実現します。 クラスごとの「家庭炊飯器」でホカホカ米飯給食を実現した南国市の実践(12頁)、県産米100%米飯給食を契機に県産小麦100%のうどんやパンの開発供給までを実現した埼玉県学校給食会の実践(22頁)は、それぞれ原料生産と加工の新しい地域ネットワークづくりを、教育委員会や学校給食会がリードした、敬服すべき取組みです。

■学校栄養職員の思いがカナメに

 そして、「地域に開かれた給食」を実現するネットワークのカナメは、学校の給食関係者、とりわけ学校栄養職員の「こころざし」です。

 それは、地元の新鮮で安全な産物をつかった給食を子どもたちに、という、あくまで子ども優先の思いです。この思いは、「子どもの健康な味覚形成を最優先させたい」、栄養と健康の専門家としての願いでもあります。本特集では、各地の学校栄養職員の、地域に根ざした連携の取組みを紹介しました。

 文部科学省もまた、そうした学校栄養職員の思いを支援するために、新たに小中学校の「食生活学習教材」(食生活を考えよう…体も心も元気な毎日のために)を、全国の小学校五年生と中学校一年生全員に配布しました。その「学習教材」にも「地域の食文化や産物を大切にする」ことが「調べ学習」のテーマとして提示されています。本号ではこの「学習教材」編集の座長をつとめられた丸谷宣子先生に、活用のヒントをご寄稿いただきました。

 本号を「地域に開かれた給食」の推進・定着にお役立ていただけたら幸いです。


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