発酵飼料の作り方・使い方とその注意点について

―笹村農鶏園における発酵飼料の実際―

笹村出

 

発酵飼料はとても可能性がある、飼料である。試行錯誤を続けながら、作っている。大きく分けて、「嫌気性の発酵である、サイレージ。」「好気性の発酵であるぼかし肥料」の二つの方法がある。鶏の飼料において、この二つの組み合わせたのは、私が最初ではないかとおもう。
 サイレージは牛では一般に行われている発酵技術である。牧草を青刈りして、サイロにつめて、冬の間の飼料に使う。牧場を特徴付けるおなじみの景観である。今ではロールベール(ラップ)サイロが使われることが多い。サイレージでは、サイロなどに詰められた牧草は、嫌気性菌による発酵がおこり、乳酸や酢酸などの有機酸の成分比率を増やし、pHが低くなる。漬物と同じで、牧草の腐敗の原因となるカビや好気性菌類の活動を抑え長期保存が可能になる。こうした発酵過程を成功させるために、水分量の調整や微生物のエサになる糖蜜や、独自の乳酸菌を加えるなど、添加物を投入する。私は、食品廃棄物のなかから、サイレージできるものを見つけては、利用してきた。現在は、オカラが中心である。


嫌気性発酵飼料
 サイレージは水分量を70%を目安にしてつくる。堆肥を作るときよりは湿っている。昔の手絞りのオカラで、80%の水分量であった。最近の機械で絞るオカラは、この70%前後の水分量になっている。食品廃棄物で使えるものは、「ジュースの搾りかす」は、大抵のものがとてもいいサイレージが出来る。糖分があるので、水分量70%の調整だけすればいい。青汁のしぼりかすはとてもいい。お茶がらも使える。含有水分が多い食品廃棄物が普通であるので、米糠やふすまや蕎麦糠などで水分調整をする。糠には微生物が大量にいるので、微生物資材もかねている。微生物資材として、様々な嫌気性の微生物が売られているが、改めて微生物を加える必要は特にない。サイレージを成功した容器を洗わず、使い続ければ、そのところにある乳酸菌を取り入れたことになる。どこにでも充分な乳酸菌は存在する。

 作りかたは難しいものではない。空気と接触させずに1ヶ月以上保存する。一端開封すると、酸素と接触した所から、劣化を始めるので、利用法にあった容器が必要である。ステンレスのドラム缶が利用しやすい容器である。蓋の部分はバンドで完全密封できるドラム缶がある。上部から、毎日10センチ以上利用して行けば、腐敗する事はない。ドラム缶への詰め方は、できる限り酸素を抜く事である。材料は先ず水分調整をする。オカラなら、僅かに米糠を混ぜ、糖蜜を加える。ミカンのジュースかすなら、米糠を同量程度混ぜる。お茶ガラなら、同量の米ぬかと糖蜜を加える。その材料をしっかりと踏みつけながら、ドラム缶一杯につめる。最上部にはもう一度米糠で覆っておく。蓋は上に乗って、重さをかけながら、きっちりと密閉する。酸素を入れないことが良いサイレージを作る、一番大事な要素である。出来上がりは香りで確認する。乳酸菌の種類で香りは異なる。与えてよく食べること。1週間後のたまごの様子で品質が確認できる。

 サイレージ飼料の役割は、鶏の体調管理である。鶏は沢山の汚れた物を食べる。水なども、濁り水が好きなものだ。当然、体に悪い病原菌も食べてしまう。それでも野鶏が病気にならない理由は、自然界に存在する有効な微生物を、大量に取り込むからである。その為に、地面と接触した小屋飼い方では一般に、コクシジュームなどの病気にかかることになる。それでケージによる飼い方が生まれた。しかし、発酵飼料で乳酸発酵飼料を毎日食べさせると、身体の中が、乳酸菌で充満することになる。そのために、鶏に害となる、サルモネラ菌や、コクシジューム菌が身体の中で、増殖する事が出来ない。発酵飼料を食べさせると、糞自体の臭いが、減少する。下痢をする事がなくなる。暑い夏でも下痢をする鶏が居なくなる。下痢が減るから、飼料効率もよくなる。たまごも生命力が増して、長く孵化でき、孵化率も高いものになる。本来鶏は、微生物飼料の生き物なのだ。

 

好気性発酵飼料

堆肥やぼかし肥料を作る手法と似ている。糸状菌、放線菌、酵母菌、納豆菌などが働く。好気性発酵は米糠や、ふすま、そばぬか、などが主となる。糠類は水分量を60%にすると、必ず微生物が増殖し発熱する。この発熱した糠に、利用可能な食品廃棄物を加える。そして再度発酵させる。発酵飼料全体の体積比率で言えば、好気性発酵飼料が75%を占めるので、たまごの味の決め手となる。発酵を利用する事で、材料の生臭さを取り除くことが出来る。良い堆肥の発酵は1間×一間の量が最善といわれてきた。それは、酸素の混入の程度、温度の逃げ具合などから、畑に良い微生物を増やすには、その体積が重要なものであった。切り返しが重要である。何度も切り返し、酸素を送り込み、中で発生した、半嫌気性菌と外に移動し、増殖する好気性菌を入れ替えてやる。良い発酵はその土地に存在するもの出なければ、その場所に菌がいつ居てくれない。微生物は購入した物を使うと、永遠に買い続けなければならない事になる。良い菌は地域にいくらでも居るものだ。林や竹薮の中に、白いハンペンのような菌の塊がある。こういうものが発生しているような、窪みのような土地を見つけて、そこの落ち葉ともども、糠類に混ぜて発酵させる。これを繰り返し増殖して、使っていけばいい。

 

私の実際の作り方

米糠150キロ、に対し、くず米、くず粉麦、クズ大豆、クズ蕎麦の実。の穀類を50キロ程度加える。牡蠣ガラ7キロ。海草、杏炭、などを加える。500リットル以上の攪拌機に入れて、水分量が50%程度になるように調整する。攪拌機がなければ手で行う事は出来る。発熱さえすれば、水分量は少ないほど良い発酵になる。冬場は覆いをする、湯たんぽを使うなど工夫をする。水分は良い水がいい。良い水とは、岩清水のようなミネラル分の豊富な水である。ここに海水20リットルを加える。発熱は60度を越える事を目標にするが、糠だけではそこまで上がらないのが普通である。熱は量と相関関係があり、量が多くなれば内部では、かなり上がる。発熱は上手く行けば24時間後には起きている。糠が古い、あるいは農薬を大量に使っている場合。あるいは水に塩素が大量に入っているなど、発酵には良くない場合、発熱が遅れる。発熱した飼料に、魚のアラ、鰹節のダシカス。など動物性たんぱく質を加える。温度はさらに上がり、60度を必ず一度は超えること。

 

その後は40度を保ちながら、1週間で使えばいい。温度を上げすぎると、飼料としては消耗してしまい、栄養価が下がってしまう。良い状態かどうかは、臭いを記憶して、常に確認をする習慣が必要。そして鶏に与えて、一週間後の産卵率、たまごの状態を見る事。飼料は即座にたまごに影響をする。1週間餌として使い、最後に1割程度を残す。残したものを次の飼料の仕込みの種菌とする。今度はすぐ発熱するので、鰹節ダシカスなどは最初から入れていい。新鮮な魚のアラは最高の素材である。いい卵になる。しかし、養殖魚や、内臓は避けた方が無難である。抗生物質などが残留している可能性がある。発酵は魚の生臭さを取り除いてくれる。濃厚な味わいと、白味まで美味しい卵を作る事が出来るが、発酵を失敗すると、魚の生臭い卵になる。製材鋸くずを入れる人がいるが、これは混入の質の悪い油が要注意である。

 

基本は、野生に鶏が食べるもを使うのが一番である。嫌気性、好気性二つの組み合わせが、重要で。これは土壌を掘り起こして、食べる野生の鶏の食性からの判断である。深い所の嫌気性のものと、浅い地表の好気性のものを、組み合わせて食べている。両方の微生物が作用して、良い体調が整えられるものと思われる。好気性は卵の味、嫌気性は鶏の健康。大きくはこう考えて間違いがない。

 

笹村農鶏園の概要

飼育羽数:最大450羽

自家繁殖:雌は産卵目的。雄は肉用に利用

敷地面積:2ヶ所に分かれており、併せて3000u

飼料:地域の農産物、食品廃棄物

販売方法:その他の農産物とともに近隣での宅配

卵販売価格:1ヶ55円

鶏肉価格:1羽1500円