中国県級市 農村発展研究
河北省鹿泉市農村経済発展戦略計画
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 解 説

 本計画は、(社)農山漁村文化協会創立60周年社会事業の一環として企画され、二つの日本チーム、(今村チームと青木チーム)により計画の策定、提案を行うこととされた。今村チームは以下に示す「鹿泉市農業・農村発展計画」の策定を、青木チームは市内の大河鎮における農村整備計画の策定を行うことにしたが、この両者は車の車輪としての位置づけを行うように企画された。

 また、「農業・農村発展計画」の策定にあたっては、中国中央の理論的・実践的指導的地位にある専門家、河北省、石家荘市の専門家により構成される専門家委員会を農文協の委嘱により設置し、貴重な意見、提案を頂きながら本計画の策定を行ってきた。こうして、本計画の構成と内容に誤りのないことを期した。

 さて、本計画の意義と特徴は次の諸点にあると考えている。

 第1に、本計画は外国人(日本人)の手による中国ではおそらく初めての農業・農村発展計画の提案であろう。われわれは、本計画策定を企画して以来、前後8回にわたり、鹿泉市及び石家荘市、北京中央関係部局を訪ね、実態の解明と課題の方向づけに全力を注いだ。つまり「実事求是」の精神にもとづき本計画の完成に全力をあげた。こうした計画策定へのプロセスも含めて、本計画の提案は、日中友好・日中交流事業の21世紀の新しい地平を切り拓いたという歴史的意義は高く評価できるものと考えている。

 第2に、本計画は農業・農村分野単独の計画であり、その意味では農業・農村の現状から将来へ向けて取り組むべき課題と方向が詳細にかつ大胆に示されていると考えている。しかし、政策の展開は、農業以外の分野、すなわち第2次産業、第3次産業あるいは都市計画等々にかかわる計画と相互に密接に関連づけて図られなければならない。市政府においても第10次5カ年計画の策定が行われつつあると思われるが、そうした公的な計画と本計画は異なる点が多いことと想定される。

 本計画の特質は、公的な計画とは異なり、地域農民に呼びかけ、その主体的エネルギーの烈々たる発揚を意図した内容の計画となっていることである。本計画の意図する提案を吟味して頂き、市政府ならびに関係機関はいかなる施策と対策を講じるべきか、われわれの本計画の内容に示した提案の実現につとめてもらいたい。

 第3の特色は、本計画の策定に当たり、中国との経済発展の歴史的段階や構造は異なるものの、日本農政が講じ、また日本農民が実践してきた歴史的経験(ノウハウ)の批判的考察を踏まえながら、それを計画策定の主要内容に折り込みつつ構想したところに特徴がある。中国は21世紀初頭から農業分野においても本格的に市場原理にもとづく経済体制の運営に移行するものと予想され、またWTO加盟によるグローバル・スタンダード(国際協約にもとづく規律)を前提に、農業政策の体系の再構築と運営に迫られるものと考える。そうした時代的背景のもとで、従来の指令型農政、計画経済的枠組みは全面的に改革せざるをえないものと考える。こうした視点も踏まえて、本計画は策定されたものであり、本計画が鹿泉市特有の農業・農村政策の推進に寄与できるならば幸いである。(2000年11月28日)

 (注:以上の内容は日本側調査団団長である今村奈良臣教授の序文により一部抜粋したものです。
河北省鹿泉市農業・農村発展計画作成委員会 (肩書きは2000年4月29日段階のもの)

中国側専門家委員会

劉志澄 元中国農業科学院常務副院長

陳錫文 国務院発展研究センター農村経済研究部部長

劉志仁 農業部農村経済研究センター・学術委員会副主任

銭克明 中国農業科学院国際合作與産業発展局副局長

李榮剛 河北省人民政府農業局局長

柳宝権 河北省農工部部長

馬玉文 石家荘人民政府副市長

<事務局> 武兆瑞 中国農業経済学会常務理事・中国農学会農業科技期刊分会副理事長

日本側計画作成チーム

今村奈良臣 日本国食料・農業・農村政策審議会会長・日本女子大学教授・ 東京大学名誉教授

小田切徳美 東京大学大学院農学生命科学研究科助教授

張安明  (財)農政調査委員会調査員

<事務局>   原田 津  農文協常務理事    斉藤春夫  農文協理事

目次

序言1

序言2

序言3

T 本計画の基本理念と基本戦略

第1章 本計画の基本理念と基本戦略

一、本計画の基本理念

二、構想の背景と前提

三、農業・農村発展計画の基本戦略とその体系化・具体化

 

U 本計画策定の前提的認識―鹿泉市農業の現状と実態―

第2章  鹿泉市をめぐる農業内外条件

一、鹿泉市農業の概況−歴史的前提とその到達点−

二、鹿泉市農業の展開過程

三、農外労働市場の展開と現局面

 

第3章 鹿泉市農業の地域構成

一、鹿泉市農業の地域構成

二、労働市場の地域性

三、小括

 

第4章 鹿泉市農業の先発事例

1.緑芳村園芸会社

2.鹿泉市畜産農場(ケ村畜産総合農場)

3.宜安鎮牛山経済溝

4.李村鎮水産養殖

5.鹿泉三鹿乳業有限会社

6.鹿泉紫藤葡萄団地

7.石家荘市盛大養豚団地(本団地の詳しい内容については第7章を参照のこと)

8.上寨郷粱荘村なつめ団地

9.河北鹿泉農特生態農業モデル農園

 

V  鹿泉市農業の部門別振興課題

第5章 一般農業部門の現状

1.食糧作物

2.経済作物

3.果実

 

第6章 野菜の生産と販売組織の課題―戦略部門(1)

1.鹿泉市野菜生産の歴史と現状

2.鹿泉市を含む周辺地域の市場構造

3.鹿泉市を含む周辺地域の野菜需給状況

4.買い付け商人の役割

5.野菜部門の振興課題

6.野菜生産と野菜販売の具体的問題点

7.予想される課題

8.野菜の販売戦略

 

第7章 養豚部門の振興課題―戦略部門(2)

1.養豚生産の現状と歴史

2.養豚生産の分布

3.養豚経営の類型と特徴

4.工場型養豚――養豚業における農業産業化の課題

5.各類型の飼料利用状況

6.成豚の販売と流通

7.食肉加工部門の現状

8.養豚部門の振興課題

 

第8章 酪農の発展課題―戦略部門(3)

一、鹿泉市における牛飼育の歴史

二、酪農部門の台頭と鹿泉三鹿の歩み

三、鹿泉市酪農部門の現状

四、酪農部門の経営状況

五、三鹿方式の意義

六、乳業メーカーの動きと酪農部門の展望

七、市、郷鎮、行政村の酪農振興策

八、三鹿方式の普及と鹿泉市酪農部門の課題

 

W 農政改革の基本課題―土地と組織―

第9章 鹿泉市農業における農用地利用調整の課題

一、農地利用の推移と現状

二、農地利用調整の実態

三、調査対象村の農地利用調整の特徴

四、高収益農業の推進と農地利用調整

五、農家間の貸し借りの実態

六、農地利用調整の問題点

七、農地利用調整システムの構築

八、残された課題

 

第10章 政機能の改革と農民組織の形成

1.課題

2.鹿泉市農業関連行政機関の現状

3.鹿泉市郷鎮段階の農業関連行政機関

4.鹿泉市行政村段階の農業関連部門

5.民間組織(農民組織)の現状

6.鹿泉市農政推進体制の問題点

7.鹿泉市既存村級組織と農業経営

8.農民の多様な組織化の可能性

9.行政機能の転換と農民組織作りへの支援

10.農民組織形成のマクロ的課題

 

X 鹿泉市市長の計画完成式における挨拶文

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