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稲作・水田活用

サトちゃんのへの字稲作挑戦記〈2〉
踏んづけて踏んづけてずんぐり健苗

福島県北塩原村・佐藤次幸さん

苗踏みするサトちゃん(68歳)。1.5葉期以降、だんだん回数を増やしながら毎朝1〜2回踏んだ。少し斜めに引くと苗箱に引っ掛からない(写真はすべて依田賢吾撮影)

マークは140ページに用語解説あり

 

耕作 サトちゃん、そろそろ育苗のシーズンだけど、への字稲作の場合は何に気を付けたらいいのかな? 初期生育は抑え気味にっていうから、田植え後の育ちが悪いヒョロ苗でもよさそうな気が……。

サトちゃん お、鋭いね耕作くん。井原豊さんも「活着の悪い苗が、かえってへの字生育をたどって、ある程度収量がとれることがある」って言ってたらしいのよ。でも、悪い苗だと株ごとの分けつ数が、大株小株とバラバラになるから、多収は絶対できないとも言ってた。やっぱり、収量とるには「ずんぐり健苗」だって主張してたってさ。オレがいつも言ってる通りだろ。エネルギーがある苗なら、活着が早くて疎植でも株ごとの茎数がピシッと揃うし、元肥をより節約できる。とくに、への字稲作みたいに穂を大きくつくって収量をとる方法は、最初が肝心。三つ子の魂百までっていうだろ。太い親茎からは太い分けつが出て、最終的に大きな穂にもつながるってわけよ。

 なるほど。最初が抑え気味っていっても、しっかり収量とって、よりコストを減らすには、健苗が重要だってことだね。そういえば、サトちゃんは昔から角材で苗を踏んづけるスパルタ育苗だったけど……。

苗踏みの効果
苗踏みの効果は、徒長抑制、太茎形成、根張り向上、チッソ過多の防止など。踏まれた苗では、植物ホルモンのエチレンが分泌されるからだとされる。への字稲作の提唱者、井原豊さんも板やローラーで苗を踏み、ずんぐりした黄色い苗をつくっていた。

自作のローラーと角材。厚い塩ビ管で作ったためローラーの重さは8kg弱あるが、回転する分角材よりもラクに引っ張れる

 

 

サト よく覚えてたねー。でも、さすがのオレも若い頃のようには角材を引っ張れなくなって、新しく引っ張りやすいローラーを作ったのよ。

 へぇー。これならオレも作れそう。ところで、肝心の効果のほどは?

サト 抜群よ。最近は春も暑いけど、徒長もせず硬い苗に育って、植え遅れてもぜんぜんムレない(播種25日後頃から田植え)。積み重ねても大丈夫だし、お天道さんの下でも萎れないから、作業までラクになるね。(編)

 

苗踏みの有無で苗丈を比較(他は同条件)。苗踏みしたほうが、少し低く(約17cm)ずんぐりしている(コシヒカリ、4月25日播種の32日苗、3.3葉期、播種量は乾モミで160g)

 

培土の構成
山土、ピートモス、パーライト、モミガラくん炭がほぼ同量ずつ。ゼオライトも入っている。硫安、過リン酸石灰、塩化カリを成分で箱当たり各2g、サチュライドを1g弱施用。過湿や過乾燥になりにくく、かつ軽い培土に仕上げている。

苗踏みしたほうが、明らかに根の張りがいい

 

 

試しに、苗踏みした苗を日なたに放置してみた。ハウスから運び出したのは朝の8時

 

翌日の午後1時半。水分がほぼ完全に抜け、5kg程度あった苗箱の重さは3.4kgまで減ったが、驚くことに苗はまったく萎れていない。「何度も導管をひん曲げて、水不足に慣らしてっから当然よ」とサトちゃん

 

トロッコで苗を運搬。3段のトロッコに1段3枚×4列、計36枚積んで一気に運ぶ

 


取材時の動画が、ルーラル電子図書館でご覧になれます。「編集部取材ビデオ」から。
https://lib.ruralnet.or.jp/video/

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