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はじめに人類の農耕の歴史は1万年以上とされているにもかかわらず、作物と土の関係は、わからないことだらけだ。ある作物の種を畑にまくと、非常によくできるときがあるかと思えば、ほとんど育たない場合もある。また、栽培し始めて2、3年はうまく育つが、その後は生育が劣ってしまうこともよくある。ふつう、前者の場合は、土が合わないとか、土がやせていると言われ、後者の場合は、いや地、連作障害などと呼ばれる。ところが、40年以上も同じ作物を、同じ畑で連作する篤農家も少なくない。 害虫の発生についても同じだ。一般には、害虫が発生したために生育が劣ったといわれるが、本当は生育が劣った植物にだけ集中的に害虫が発生しているにすぎないとも考えられる。要するに、詳しい自然のメカニズムは何もわかっていないに等しい。 昔からの古老の言い伝えの中には、長年の栽培の歴史の中で、人類が経験的につかんできた自然のメカニズムが隠されていることが多い。土が合わないとか、やせ地と言われる畑でも、ある種の作物同士を組み合わせて混作したり、輪作したりすると、きわめて生育がよくなり、病害虫もほとんど発生しないことがある。 本書は、月刊『現代農業』、『日本の食生活全集』そして『農業技術大系』から、古今東西の混作、混植、輪作の知恵を、最先端の研究の成果も併せて収集しました。
別冊現代農業2008年7月号 農家が教える 混植・混作・輪作の知恵 カラー口絵 伊勢村文英さんの混植畑(撮影 赤松富仁) …… 1 混植、混作で作物が育つ 家庭菜園の混作 本田進一郎 …… 6 雑草緑肥で土づくり 焼畑の輪作と文化 青森県/岩手県/山形県/福島県/静岡県/富山県 はじめに Part1 混植、混作、間作で作物をつくりやすく【図解】混植・混作 絵・高橋伸樹 【図解】知って得するコンパニオンプランツ大集合! 【図解】香り混植 虫が好きなニオイ、嫌いなニオイ 間作、混作で土が流れない 水口文夫 …… 40 カマキリがいる畑は害虫が少ない 水口文夫 …… 42 コンパニオン・プランツ(共栄作物)の知恵 鳥居ヤス子 …… 46 混播、混植で無農薬 混播、混植、米ぬか活用で健康野菜 薄上秀男 …… 54 天敵が増える畑のデザイン 欧米の事例から 根本 久 …… 58 作物の相性いかして混作・輪作 小寺孝治 …… 62 ハーブでねぎのスリップス・ヨトウムシを防ぐ トマトのオンシツコナジラミにバジル ハーブの害虫忌避作用と生育促進作用 陽川昌範さんに聞く …… 66 わしはコンパニオン・プランツにほれこんどる 井原 豊 …… 68 すいか・メロン産地で広がるねぎ混植 にんにくを一緒に植えたら、いちごのアブラムシが消えた 善財幸雄 …… 74 ナギナタガヤ もう病みつき! りんご、ナス、ブロッコリーの畑にも播いてみた 長田 操 …… 76 マルチムギ 麦を自然倒伏させてマルチに利用 水口文夫 …… 78 間作麦体系 うり類、トマト、とうもろこし、さつまいも、落花生… 桐原三好 …… 82 他感物質とその農業利用 藤井義晴 …… 86 アレロパシー物質と植物の検索 藤井義晴 …… 91 Part2 輪作、緑肥が栽培の基本落花生輪作・混作できゅうりのセンチュウ退治 松沼憲治 …… 98 だんだん土がよくなる輪作体系 浅野悦男 …… 100 イネ科とマメ科作物の輪作で土づくり 水田輪作で野菜も稲も無農薬 古野隆雄 …… 111 センチュウ害を減らす輪作組合せ 山田 盾 …… 116 極上漬物は畑の土にあった自家種と緑肥から生まれる 夏の雑草を生かして土を養生 水口文夫 …… 124 えん麦、ソルゴー、レタス、小麦、 とうもろこし輪作で病害虫予防 松本孝志 …… 131 焼畑復活! そば、大豆、とうもろこしも仰天の美味しさ 上田孝道 …… 134 日本列島の焼畑 日本の食生活全集より …… 138 粟―大豆の輪作 焼畑農法の心を受けついで五十年余 Part3 輪作の原理中国古代の作付体系の特色『中国農業の伝統と現代』より …… 156 奈良盆地の田畑輪換栽培伝統的農法 宮本 誠 …… 161 ヨーロッパの輪作体系の変遷 西田周作 …… 164 共生微生物から見た輪作体系 有原丈二 …… 168 麦・ソラマメ・緑肥で窒素の流出を防ぐ 有原丈二 …… 175 夏作物と冬作物の養分吸収戦略 有原丈二 …… 178 土と作物間で起こるさまざまな養分吸収システム 阿江教治・松本真悟・杉山 恵 …… 184 コーヒーかすでネコブを撃退、ヨトウムシはねぎで退却/硬くなったねぎを軟らかくする方法 …… 61 オンシツコナジラミにはニラが効く/いちごの欠株には大根を播く …… 96 佐久にもありました、ナギナタガヤの自生種!/トンネルメロンには間作麦が一番 …… 103 いちごの連作障害にはアサツキやシドケとの輪作/陸稲輪作で、きれいなごぼう …… 119 黒大豆、ポップコーンでヨトウムシを減らす/マリーゴールドでアブラナの根こぶ病が減った …… 183 パセリの収量一・五倍!その秘密はえん麦?/センチュウ害はからし菜で防ぐ …… 191 ◆庭にそら豆を播いて育てていたら、変なことに気がついた(六頁参照)。 春になって暖かくなると、またアブラムシがやってきた。やはり一番端の株に集中して発生する。最初は、アブラムシがついた株から、何らかの化学的な物質が放出され、それにアブラムシが引き寄せられるのかと思った。一株だけを「おとり」として犠牲にして、他の株を守るかと…。 ところが、そうではないようだ。そら豆の実が成り始めると、アブラムシは、急に他の株の生長点にも広がり始めたのだ。一般に植物は種子ができ始めると、栄養生長から生殖生長への転換がおき、根や葉の伸長が抑制される。そのため、そら豆の生長点の栄養状態に変化が起こり、そこにアブラムシが集まったと考えるのが正しい。 アブラムシは、栄養生長が劣る部位に集まるという性質があるにすぎず、それを植物の側から見れば、無駄な栄養生長が抑えられて子実が充実し、性質の劣る個体は淘汰されて優良な株の遺伝子だけが残る…。すなわち、そら豆とアブラムシは、完全な共生の関係にあると思われる。 (本田進一郎) ◆昨年逝ったわが家の犬は純粋の雑種だった。引っ越しのときに捨てられたらしく、やせ衰えてフラフラしながらわが家にやってきた。以来十数年わが家で暮らした。動物病院でもらった血統書には「雑種」「推定一歳半」とあった。毎朝近所を散歩に歩くのだが、みなさんテレビでよく見る可愛らしい犬を連れていらっしゃる。それに対してわが家は純粋雑種。それはそれでなかなか味があって、散歩するのが誇らしかった。 本誌に収録された、先達たちの混植・混作・輪作の知恵を読みながら、本来的に生き物に優劣はないこと、お互いが支え合う関係を見抜いて育てることの大切さを改めて感じることができた。また、それには見事な科学的根拠があることも学んだ。ネギやニラ、ニンニク、ハーブ、ラッカセイ、トウモロコシ、エン麦、雑穀、ナギナタガヤ、カマキリ…洋の東西を問わず、今昔を問わず、そうした生き物たちのドラマと人間のかかわりがおもしろい。 一色だけのきれいに整備された田畑も美しいが、そこにちょっとした「雑」を加えることで、田畑はドラマチックに動き始める。「雑には愛がいっぱい」なんだ。実践的な知恵と一緒にそんなドラマも感じ取ってください。(西森信博) | |||||||||||||||||||||||||
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『農家が教える 混植・混作・輪作の知恵』 初めての畑ではとてもよく育ってくれた作物が,続けて栽培するとうまく育たない。なぜ? そんなとき頼りになるのが、土をよくして病害虫を防ぐ、混植・輪作の農家の知恵。農薬がなかった時代、農家はどうやって病害虫を防いだのか? 最新の科学的な知見も含めて、作物同士の組合せと(混植・混作・輪作)害虫との相性など、農家の智恵とそのやり方を追究します。 [本を詳しく見る] |
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