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農文協増刊現代農業>農的共生社会 自治と自給で「格差」を超える_編集後記

農的共生社会 自治と自給で「格差」を超える

現代農業2007年5月増刊

【編集後記】

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一昨年、『若者はなぜ、農山村に向かうのか』の編集後記を私はこう結んだ。「しばらくは農山村に向かう若者たちに『ついていく父親』ならぬ『ついていく編集者でいたい』」と。その後も『田園・里山ハローワーク』や『脱・格差社会』で農山村に向かった若者たちを追いかけ続けたが、一方では、農山村に向かうだけが若者の置かれた「雇用・労働・身体の破壊」ともいうべき格差社会の現実から抜け出る道だろうかという疑問ももっていた。 その疑問への答えを与えてくれたのは、この号に登場する多くの若者たち。3月7日、「高円寺一揆・素人の乱」の「金がないヒマ人が騒ぎ始めるための作戦会議」のことを開会直前に知った私は、あわてて電車に飛び乗り、北中通りへと向かった。だが、会場の居酒屋「素人の乱セピア」店内は若者たちで立錐の余地もなく、ときおり外に流れてくるのはパンク音楽で、50路を過ぎたフォーク・ロック世代のオヤジである私は中に入るのをしばらくためらった。その背中を押してくれたのは、はじめてらしい20代の女性と、女性スタッフとのつぎのようなやり取りだった。

20代女性「あのー、これって、サヨクの集まりなんですか?」

女性スタッフ「うーん、サヨクって言えばサヨクだけど、地元のサヨク、高円寺のサヨクって言ったほうがいいかなー」

 素人の乱の若者たちは、高円寺という土地に「地元感」をもっている――一素人の乱の記事の末尾で松本哉さんが「あ、でも、杉並区全体がどうだとか、まだそういう意識を持つほどのレベルじゃないですけどね」と語っているのと同様の地元感。この地元感への飢えから農山村に向かう若者たちは多いが、素人の乱の若者たちは高円寺という地元に根ざし、地元から自治をつくろうとしている。

 農山村に向かった若者たちと、都市にとどまる若者たち、双方を行き来する若者たち。そこに共通するのは地元感だけではない。「反消費」「半商品」もまた共通であり、そのキーワードは「鳴子の米プロジェクト」「一俵入魂」にも共通している。

(甲斐良治)

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