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農文協増刊現代農業>はじめてなのになつかしい 畑カフェ 田んぼレストラン_編集後記

はじめてなのになつかしい 畑カフェ 田んぼレストラン

現代農業2006年2月増刊

【編集後記】

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 197頁からの記事で、森千鶴子さんや木佐貫ひとみさんが紹介している宮崎県高千穂町の「温泉茶屋」は、はじめ1994年の町営温泉施設と同時オープンの予定だった。だが工事が半年も遅れてしまい、「茶屋」に併設の小さな直売所に並べるはずだった野菜の販売先に困ってしまう。「もったいない」と思ったグループは、近くの神社での神楽公開祭に併せて農業祭を開催することに。恥かしさをこらえて大声で客を呼び、完売した。

 半年遅れの「茶屋」のオープン。「地鶏そば」や、直売所の野菜の売れ行きも上々だが、どういうわけかサツマイモだけが売れ残る。ある女性が「もったいない」と、これを餡にした「温泉団子」を考案したところ、3年後には小豆餡と合わせて年間7万個も売れる大ヒット商品に。4年後には「茶屋」の利益や新たな出資、借入金で、夜神楽継承のための「神楽の館」を建てる。その建物は、隣町の築130年の民家だが、資金不足のため、自分たちの手でジャッキ、バールを使い、解体、移築したもの。

 いざ「神楽の館」が完成してみると、年1回の夜神楽に使うだけでは「もったいない」と、二階部分を改築して農家民宿を開始。グリーンツーリズムにも取り組み、タケノコ掘り、山野草摘み、刈り干し切り、神楽面彫りなどの各種体験ツアーを実施するようになった。12年前、平均年齢60歳、わずか9名で始めたこの取り組みだが、国レベルの地域づくり表彰まで受けるようになり、リーダーの工藤正任さん(73歳)は、「年金まで貯めて出し合ったあのときの出資金は、今思うと私たちの『生きがい保険』だったような気がします」と、ふり返る。

 農家の「見捨てない」「もったいない」精神は、72頁からの兵庫県多可町「マイスター工房八千代」の「建物を見捨てない」「田舎を見捨てない」「人を見捨てない」「素材を見捨てない」に、よりいっそうはっきり現われている。同様の思いでつくられた農産物直売所は今全国で約1万カ所。10年後には何カ所の「畑カフェ」「田んぼレストラン」が誕生しているだろう(甲斐良治)

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