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農文協増刊現代農業>食の地方分権_編集後記

食の地方分権 地産地消で地域の自立

現代農業2003年5月増刊

【編集後記】

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 この4年間、宮城県宮崎町で開かれてきた「食の文化祭(食の博物館)」を主催してきたのは宮崎町商工会だった。この4月からの町村合併とともにその商工会も合併してしまうため、今後の「食の文化祭」は、30代の若者たちを中心にした「おいしさ開発委員会」が担っていくのだという。その委員会の活動は「食」にとどまらず、まちづくり、文化・芸術の振興、環境保全、男女共同参画社会、子どもの健全育成など多岐にわたる。この4年の「食の文化祭」を行政や都市のイベント会社やコンサルタントに委ねず、自らの力で企画・運営してきたことで自信を深め、自治の「当事者能力」を獲得してきたのだ。

 構造改革の大きな柱である町村合併に対しては、住民サービスの低下や、地域の個性の喪失を心配する声が聞かれる。しかし、合併が避けられないものであるとするならば、それにどう立ち向かうのか。嘆くだけでは問題は解決しない。

 小誌からひとつささやかな提案をしたい。合併後の新市町村で「合併記念日」を設けてその日を独自の休日とし、新市町村、あるいは旧市町村ごとに、「食の文化祭」を開催してはどうだろう。それによって旧市町村のもっていた個性に磨きをかけつつ、新市町村としての一体感を醸成することができるのではないか。さらにはその「食の文化祭」を宮崎町のように住民が自ら企画・運営するようにすれば、住民、とくに若者の「当事者能力」の獲得につながるのではないか。

 宮崎町の成功は、いまなお地域に息づく江戸期以来の「結い」や「講」の助け合いの力によるところが大きいという。宮城県北上町の「食育の里づくり」、大分県竹田市の「食と農の週間」の成功もしかりである。その江戸時代、休日は「遊び日」として村々が独自に定め、村の「若者組」が経費を自らかせいで神事祭礼、歌舞伎、相撲興行などを行なっていたという。「合併記念日」「食の文化祭」は、その江戸時代農民の当事者能力、そして農村自治の回復を現代にもたらすと思うのだが

(甲斐良治)

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