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農文協増刊現代農業>地域からのニッポン再生_編集後記

地域からのニッポン再生 農的暮らしの構造改革特区

現代農業2003年2月増刊

【編集後記】

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 内閣府募集の構造改革提案全426件のうち、農業関連の提案が94件と最多であり、なかでも農地法・農振法の規制緩和によって、定年帰農や青年帰農、農都二住生活などの国民の農的ライフスタイルを求める声に広く応えるべきだとの提案が過半を占めていたことはきわめて「現代」を象徴していると思う。

 この増刊号では、そのことについて、前農水大臣、民主党NC(ネクストキャビネット)の農水大臣、財界トップ、労働界トップなど、さまざまな立場の方々のご意見をお寄せいただいた。それらの方々が立場の違いを超え、異口同音に農的ライフスタイル実現への道筋を拓くべきだと述べておられることもまた象徴的であると思う。政治的左右、労使という立場を超えて、「農的ライフスタイル」が求められているのである。

「構造改革とは、55年体制の打破である」という言葉はよく耳にする。その55年体制とは、二大政党制や春闘が象徴する政治や経済のそれだけではなく、冒頭対談で結城登美雄氏が指摘する「指定野菜産地制度」や、川勝平太氏が指摘する「2DK55型」団地のように、農業の55年体制もあれば、生活の55年体制もあった。また終身雇用という、生活と労働にまたがる55年体制もあった。それはまた、「専業農家」「専業主婦」「専業サラリーマン」などの「専業」が象徴する、単一アイデンティティが支える体制でもあった。

「農的ライフスタイル」とは、ただたんに余暇を農村で過ごすことだけではない。冒頭対談で高野孟氏が述べているように、専業という単一アイデンティティ=「一姓」から脱却し、マルチアイデンティティ=「百姓」をめざすことではないだろうか。それはまた人間としての自然=全人間的生活を取り戻し、個性ある存在に立ち返ることでもある。136ページの「田舎暮らしのゼミナール村」は、その縮図である。いま、不良債権や農家だけでは維持できない土地を舞台に、多様な人間のアイデンティティが花開こうとしている――その向こうに、ニッポンの再生が見える

(甲斐良治)

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