現代農業2001年5月増刊
『地域から変わる日本』 
 地元学とは何か

【編集後記から】

 元日の朝、九州・宮崎の実家で新聞に目を通して驚いた。毎日新聞―坂本龍虹さん(故郷、土、夫婦で「水俣だから有機農業」/仕事に追われた時間を取り戻す)、朝日―杉本栄子さん(水俣の海に寄り添い/「恨むな」信じて安らぎ)、宮崎日日―吉本哲郎さん(環境基本計画を市民参加で策定/住民の連帯にも効果)――これまで本誌にご登場いただいた、熊本県水俣市の方々が大きな扱いで紹介されていた。前号『不況だから元気だ』の編集後記でも、杉本さんの「他人(ひと)様は変えられないから自分が変わるようにした」、吉本さんの「世間は変えられないから水俣が変わった」という言葉にふれたばかりだった。

 1月7日、テレビ朝日の“サンデープロジェクト”を見ていたら、「国は変わらなくても県レベルで変革できることはたくさんある」と元気に発言していた宮城県の浅野知事、三重県の北川知事が、他の志ある8県の知事たちと「地域から変わる日本」というネットワークをつくっていることを知った。「地域から変わる〜」は、岩手県の増田知事の呼びかけによるもので、増田知事は県内では「地元学」を支援している。

 1月22日、山形での「東と西の地元学」の対談を終えた吉本哲郎さんを東京で“サンデープロジェクト”のコメンテーターでもある高野孟さんにお引き合わせした際、「水俣のお茶農家・天野茂さんの息子が跡を継ごうという気になった理由は、『オヤジがかっこいいから』というんだ」と嬉しそうに語る吉本さんに、高野さんは「村上龍の『希望の国のエクソダス』の主人公である不登校の中学生たちが、政治家たちに向かって「あなたたちの誰が『おれのように生きろ』と言えますか?」というのの反対ですね」と応じていた。『希望の国〜』で中学生たちは、いったんは学校を変えようとするが、変わらない。だからといって絶望せず自分たちで職業訓練センターをつくる。「公教育は読み書き算盤程度で、あとは社会の中で学ぶ仕組みがあっていい」という内山節さんの公教育批判と郷学についての話を思い出した。

(現代農業増刊号編集部 甲斐)



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