現代農業2001年2月増刊
『不況だから元気だ』 
 小さな消費で優雅な暮らし

【編集後記から】

 本号の編集過程で不思議に思ったことは、多くの方が異口同音に「自分が変われば世の中も変わる」と語っていることだ。冒頭の鈴木孝夫氏は「自分が変われば世の中は変わるという信念をもっている。自分が自分なりの“分”で変われば、それだけ世界が変わる」、大分県竹田市九重野地区についてご報告いただいた佐藤弘氏は農聖・松田喜一の言葉を引用して「自分が変われば世の中も変わる」、そして水俣病患者・杉本栄子さんの「他人(ひと)様は変えられないから自分が変わるようにした」という言葉に学んだ吉本哲郎氏は「世間は変えられないから水俣が変わった」と。

 これが偶然なのか、それとも困難を突き抜けた人びとに共通の思想なのかを考えていたら、秋田県のグリーンツーリズム協議会から、二月に開かれるシンポジウムの案内状が届いた。 「ある人が秋田に来て、“へば、なんとす”という秋田弁に感動した、という話を聞きました。標準語に訳すと『そうすれば、どうすればいいんだろう』ということになるでしょうか。この言葉は、日頃私たちの生活や仕事の面 でも、いつも頭に入れておかねばならない言葉であるように思えます。絶体絶命のとき、“へば、なんとす”と冷静な判断と、解決策がこの言葉から出てくるように思います。みんなが足元を見つめ直して、学習から実践へ“へば、なんとす”とがんばっていく集いにしたいと存じております」

 “へば、なんとす”で思い出したのが、中国の「窮則思変」=窮すれば変化を求めるという言葉。日本の諺は「窮すれば通 ず」だが、「窮」すればただ「通ずる」のではなく、変化を求めるからこそ「通ずる」というのである。「へば=窮即」「なんとす=思変」と考えれば、秋田弁の方がそのニュアンスに近い。  では、「不況」の時代の今、その変化の方向をどこに求めるべきか。ぜひじっくりと見ていただきたいのが多辺田政弘氏の240頁の三角形の図である。頂点の金銭的な豊かさのみを求めたこれまでの時代から、底辺の相互扶助や自然の豊かさの再発見へ――これが今求められる“なんとす”ではないだろうか。

(現代農業増刊号編集部 甲斐)



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