ルーラルネット全集編集室だより │ 大石貞男著作集

大石貞男著作集
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大石貞男

大石貞男 略歴

1921年静岡県島田市生まれ。1957年から静岡県茶業試験場に在籍し、1968年から1977年までの9年間同試験場長を勤める。その間、茶の生理生態や多収性の解明に関する研究に取り組むとともに、「おおいわせ」「やまかい」等優良茶品種を育成する。1978年日本茶業技術協会賞を受賞。退職後は、それまで脚光を浴びることのなかった地域の特色ある茶業史や食文化に焦点をあて、緻密な現地調査に基づく独自の考察をその著書のなかで紹介。1994年茶業功績者表彰、1997年茶文化功労賞を受賞。主な著書に「茶の栽培」「日本茶業発達史」「牧之原開拓史考」「東西の食文化」など多数。1997年に永眠(享年76歳)。

茶

大石貞男氏の研究姿勢とはたした役割
1

戦後の茶生産技術の基礎をつくる

 戦後の茶産業の発展の中で、産地の実態にそくした茶生産の技術と経営を研究、指導。生産者の実際技術と試験研究の成果をつなげ、戦後の近代茶生産技術の基礎をつくるうえで重要な役割をはたす。

2

歴史と産地の伝統に学ぶ姿勢を貫く

 日本の茶業を「風土と茶」という視点からとらえ、「産地により特殊な栽培・製造法があるが、一貫した理論がありそれにもとづく農法がある」と、産地の歴史や伝統的栽培技術、製茶技術に学ぶ姿勢を貫く。

3

地域の自然条件を生かした特徴ある茶生産を提唱

 平坦地は平坦地の条件と特徴をいかに生かすか、傾斜地は傾斜地の条件と特徴をいかに生かすか、地域の自然条件を生かした特徴ある茶生産こそが経営の安定化につながることを提唱。「やぶきた」一辺倒でなく品種の組み合わせによる、多様な茶生産を提唱し、品種改良と新品種の普及にも力を入れる。

4

形式的、画一的近代化技術に警鐘

 機械化や多肥・多農薬など近代化技術については、形式的、画一的になる傾向が強く、それでは品質のいい茶を安定して生産することができないと警鐘を鳴らし、敷きワラ・敷草の万能的効果、多肥料でなく吸収率を高める施肥時期・方法の検討、農薬による天敵や生態系の破壊を指摘し防除法の再検討、など現場の実態にあった技術の研究、普及に努める。

5

世界の茶生産にも造詣が深い

 国際化、自由化の中で、世界各地の茶生産、飲用について産業としてだけでなく歴史と文化という視点からも研究。日本の茶産業を守るだけでなく、世界の茶生産国と共存できる方向を模索。