「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2011年夏号
 

岡本央撮影、以下も

食農教育 No.81 2011年7月号より

直売所販売 おもしろすぎて、あそぶヒマがなかですよ!

福岡・宗像市 水上拓哉さん(20歳)

 人気のベビーリーフなら、たったの1m²で月3000円のこづかいが稼げちゃう!?


 昨年、農家になって、4つの直売所でいろんな野菜を販売しているという水上拓哉さん。
 こどものころから、米や野菜でこづかい稼ぎをしていたそうだ。

小学生時代 家族に米20kgを8000円で販売

 気づいたらオヤジといっしょにコンバインに乗っとったです。幼稚園のころには、キャベツをつくりよったですねぇ。小学2、3年のころは、玉レタスとチンゲンサイ。小倉の親戚が小さい商店をやっとって、タネを売っとったけん、まいてみよかなー、と。ばあちゃんのあまり苗とかもあったし……。

 小4のときに、家の前の畑が1aくらいあいとったけん、3本鍬で起こして、田んぼにしましたよ。苗も残っとるし、やってみようかねー、と。納屋には肥料もあるし。もちろん、無農薬ですね。秋に、20kgとって、母さんに10kg4000円で買ってもらいました。小6まで続けましたよ。いいこづかい稼ぎでしたねぇ。

中学生時代 早帰りできる試験期間に5a開墾

 中学に入ったらすぐ、小玉スイカを植えよったですよ。食べたいなあ、と思って。部活は吹奏楽でしたけど、試験のときとか早く帰るでしょう。家でも勉強せんかったけん、開墾して野菜をつくったとです。10年くらい放棄されてカヤやススキが生い茂っとった畑を5aくらい。オヤジに何回かすいて(刈って)もらいました。そのころはまだトラクタ乗れんかったけん。トラクタは中3で仕込んでもらって、高1からバリバリ乗ってましたねぇ。

 開墾した畑では、耕うん機でウネ立てとかしながら、スイカとか、ポップコーン、ニンニクとか、そだてました。(粘土質で)地が重たいけん、軟弱(ホウレンソウなどの葉っぱもの)はムリな土地やったですね。ポップコーンは、スーパーで売ってた食用のものをタネにして、ニンニクも食用に冷凍してあったやつを植えたとです。ぜんぶ「芽がでるっちゃろかー」って興味本位で植えとったですねえ。あ、ソバもやったですね。10kgくらいとって、粉にしたけど、打ち方がわからんけん、ぼそぼその麺になりましたよ。

いま、出荷している直売所の1つ、オアシス。ショッピングセンターのそばにあり、若いお客さんも多い
「この時期、長ネギがでちょらんですねー」
「来年、もってきてみらんね」

3年前にできた、道の駅むなかた。品揃え豊富で、県外からのお客さんもバスツアーでくる

高校生時代 小玉スイカとホオズキであてる

 中1のときでしたね。ニンニクの肥料を、ホームセンターに買いに行ったら店のおばちゃんに「なんしよっと?」って、声をかけられたっです。「ニンニクつくる」ちいうたら「若かとにめずらしかねぇ」と。そのおばちゃん、鉢ものとか苗ものとか詳しいて、いまでもいろいろ教えてもらうとですが、高2のときに、小玉スイカがいっぱいできたけん、ホームセンターの店員さん向けに販売させてもらったですね。1個50円で、1回に50個くらいもっていって、2〜3回だしました。「ゴジラのまくら」っていうでっかい黒皮のスイカも1個800円で10個くらい売ったかな。2万くらい稼いだですね。

 あと、ホオズキをつくっとったばあちゃんが「身体がきついけん、やめる」いうけん、代わりにつくったとです。直売所にだして、8万くらい稼ぎましたね。

 失敗もしとりますよ。高3のときは、しゃあしいかけん(面倒だから)小玉スイカを植えたあとにキャップをせんかったら、風でゆられてできんかったです。農業改良普及センターの人に教えてもらって、自分で接ぎ木したけど、しっかり合わさってなかったとですね。ホオズキも調子こいて面積を増やしたけど、質が悪かったですねぇ。20万稼ぐつもりが、12万くらいでした。

 稼いだ金はほとんど、農業の資材につぎ込んでます。あそぶヒマなかですけんね!

「サニー(レタス)が動かんたい。今日はちょっとカンがはずれよーですね」

道の駅からは、1日に4回、その日の売上がメール配信される

汗だくになってハウスを一人で建てる

 高校(福岡農業高校)を卒業したら種苗会社とかに就職しようかと思いよったけど、ちょうどその年に就職氷河期に入ったとです。それで、花農家になろう思うて1年間研修に行って、去年の7月に就農したとですよ。

  中古ハウスの部材を2棟分もらって、アーチとかを一人で組んで建てました。もう汗だくですよ。ハウスははじめて建てたけど、オヤジと家の前のを修理したことがあったけん、構造はわかっとったですね。

  で、トルコギキョウいう花をやったとです。苗代とか資材とかで15万くらい使ったけど、ちょうど作業がキャベツの定植とかイネの収穫と重なったりで、世話しきらんけん、2a植えて半分ダメにしました。9万くらいの売上でしたね。おもろんなかけん、やめました。

高3のとき、「拓哉が農業やるぞ」と地域で噂になってから、毎年「うちの田んぼでもやってもらえんかね」との声が……。それまで3.5haの栽培面積だったが、今年は10haになった
「去年は直売所の売上が130万でした。今年は、400万が目標です!」

お父さんは、農業機械のメーカーで働く。「最近は、私がお金借りたりするとです。ハッハッハッ」と笑う

自分で建てたハウス。谷津田の入口にあり、平地より2〜3℃低い。「温度差を利用して、ほかの人がださん時期に、いろいろだしたいです」

「ベビーリーフで、ひともうけしましょう!」

直売所販売 基本は早出しとずらし

 そのあと、直売所向けの野菜を中心に切り替えたとです。3月はキャベツであてましたよ。沿岸部のキャベツがヒヨドリにやられて2週間出回らんかったとです。うちのは場所がよくて大丈夫やったけん、1日100個バリバリ売れましたよ。ふだんは1個100円を120円〜180円で出荷しましたね。よそのがそろそろでるいうときには、小さい玉もだして全部売り切りました。

 基本はやっぱり、早出しとずらしですね。人がださん時期にもっていかにゃ。毎日、1年先のことを考えながら直売所のようすをみとります。

 ベビーリーフ(サラダセット)もあたりましたね。最初は11月にタネまいて2月下旬に1番葉を収穫しました。10日後くらいに2番葉もだして。24m²で7万円以上稼ぎましたよ。小さい面積で、暖かい時期なら20日くらいで収穫できるけん、こども向きですよ!

――ということで、水上さんおすすめのベビーリーフ(サラダセット)のそだて方を、1m²の圃場で実演してもらった。

(編集部)


1m²の畑で、ベビーリーフをそだててみよう!

 1m²あれば、1番葉と2番葉をあわせて、25〜30袋くらいできる。
 120円で売れば、1ヵ月で3000円のこづかい稼ぎだ!

今回、使う畑


「こどもがやりやすいよう、安い肥料でやりましょう。むずかしいのは、発芽と水やりですね」


水上さんが建てたハウス内に、ロープで1m²のミニ畑を区切ってもらった。露地(外)でも、同じように栽培できる

栽培のポイント

・レタス類は好光性種子なので、土をかぶせすぎると、発芽しない
→ 土はうっすらかける程度

・種子がいったん水を吸ったあとに乾燥させると、発芽しない
→ 発芽までは水をきらさない

・本葉2〜3枚になると、葉っぱの下の土が蒸れて根ぐされをおこしやすくなる
→ 水のかけすぎに注意

・本葉がでるくらい(およそ10日)で、時期をずらしてタネまきすると、切れ目なく収穫できる


準備するもの


硫安100g、鶏糞500g、ベビーリーフのタネ(8種類)
*いろんな種類のベビーリーフが混ざったタネ(レタスミックス、菜っぱミックスなど)も販売されている

袋のここに注目!

1. ベビーリーフは葉菜なので、○印の数値を参考に分量を計算

 10aあたり200〜500kg
 10a=10×(10m×10m)=1000m²なので、
 1m²あたりだと、200〜500kg÷1000=0.2〜0.5kg=200〜500g

2. ブロイラーなどの肉用鶏でなく、卵をとる採卵鶏の糞を発酵させたもの


 硫安はチッソを21%含む肥料。チッソは葉肥ともいわれ、植物の葉や茎を大きくする。レタスや菜っぱは、実ではなく葉を大きくするので、チッソ肥料を補う。硫安の代わりに尿素でもよいが、チッソ成分の割合が高い(43%)ので、まきすぎに注意

*畑のつくり方/タネのまき方/収穫の仕方、などについては、『食農教育』2011年夏号p20-23、をご覧ください。


「田舎の本屋さん」のおすすめ本

この記事の掲載号
食農教育 2011年7月号(No81) 新装刊『のらのら』準備号

特集 こども農業はじめよう
◆めざせ直売所販売! ◆食べてよ!買ってよ!ぼくのわたしの自信作 [本を詳しく見る]

田舎の本屋さん 

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