「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2010年9月号
 


そだててあそぼう アズキの絵本
十勝農業試験場アズキグループ編、はやかわじゅんこ絵/農文協 刊/1890円

食農教育 No.76 2010年9月号より

あんこ好き小学生の甘くて熱い夏

『アズキの絵本』で大研究!

東広島市・弓場文直くん

編集部

“あんこ食べ比べ”が動機

東広島市・弓場文直くん

 物心ついたころから“あんこ物”に目がない少年、弓場文直くん(一三歳)。小学校六年生の夏休みの自由研究のテーマにアズキを選んだ。

 理由はいたって素直でシンプル。「小学生最後の夏だから、好きなもののことを調べよう」と思ったのだ。「自分が好きなものは何だろう」と考えたら、ゲームやスポーツではなく、「あんこ」が真っ先に思い浮かんだ。そこで、あんこの原料アズキへと、すんなりたどり着いたという次第。

 当初のもくろみは「あんこの入ったお菓子やパンをたくさん食べられる、と思ったからです」と、文直くん。しかし、一ヵ月かけてまとめた『小豆大研究――食べて 育てて 調べて』は、食べ比べの域をはるかに超えた大作に仕上がった。

 文直くんは夏休みの一ヵ月間に、あんこ物の食べ比べだけでなく、アズキを育て、アズキからあんを煮てどら焼をつくり、アズキの本を読んで調べて文章にまとめた。

 この幅広く濃い研究を支えてくれた強い味方が、お母さんの直子さんと、直子さんが買ってくれた絵本、『アズキの絵本』(「そだててあそぼう」シリーズ、農文協)だった。

畑で味わった苦労と感動

文直君の力作『小豆大研究―食べて 育てて 調べて』は、学校の代表に選ばれ、東広島小学生社会科自由研究の優秀賞をもらった

 お母さんの直子さんは、家庭菜園二〇年のベテランで、アズキの研究と聞いて「種をまくなら急がないと」と、さっそく種屋さんに走った。

 「泥汚れを洗うのが面倒」で今までほとんど手伝ったことのない畑の作業は「蚊に刺されてかゆくて、研究のなかでいちばんたいへんだった」と、文直くん。しかし感動したのも畑での出来事。

 「三日目にもう芽が出てきて、びっくりしました。大きく育って、少しだけど収穫もできたので、やってよかったと思った」

 アズキを育てていて文直くんが気になったのは、病気や害虫のこと。直子さんが「そだててあそぼう」シリーズの愛読者で、「アズキの巻もあるはず」と探して買ってくれた『アズキの絵本』で、文直くんはアズキの育て方、病気や害虫について勉強した。

 絵本では、アズキにまつわる日本の風習や、妖怪アズキとぎの伝説など”アズキの民俗”にもふれていて、文直くんはテーマに「アズキと日本の生活のかかわり」も加えることにした。

 直子さんは、「食べ比べと播種の時期が遅れた栽培だけでは研究にならないと心配でしたが、アズキが日本の生活文化に深く根づいていると知って驚きました。アズキを選んで大正解」と話す。


約30種類の野菜が元気に育つ、直子さんの菜園。家屋に隣接した土地を4家族で区画分けして借りている


弓場家は4人家族。アズキは家族の定番になりつつあり、ネギのとなりで、今年も元気に成長中

食べてつくって極めた研究

 畑仕事の一方、研究のおたのしみ、あんこ物の食べ比べは、順調に進んでいた。“研究”したのは計一四種類。月餅、最中、どら焼、各種あんパン、ご当地名物もみじまんじゅう、アズキのアイスバーなど。老舗の銘菓からコンビニ菓子まで、守備範囲は広い。文直くんは、一点ずつ写真を撮り、商品名、製造者、特徴、味と甘味、食感、バランス、感想などをチェック、記載していった。

 感想には、「あんの量と甘さを増すといい」「皮のぱさぱさ感をなくすとおいしくなる」「しっかりアズキの味がする。甘すぎず上品な味」などと、メーカーがモニターに欲しがるようなコメントも。さすがにあんこ通(つう)、小学生とは思えない鋭さだ。


はじめて育てるものは、「そだててシリーズにないかな…」とまず探してみる。今年は『ゴマの絵本』を参考に、ゴマをつくり始めた。「絵本にあったとおり、虫に困ってます!」とのこと

「家でニワトリ」が夢

 文直くんの将来の夢は、獣医さん。とくに鳥が大好きで、家で飼っているインコとは大の仲よし。

 「家でニワトリを飼いたい!」というのが、目下の母息子共通の夢。「そだててあそぼう」シリーズの『ニワトリの絵本』を二人で眺めては、あれこれ想像して楽しんでいるという。

(ライター 大浦佳代)


8/1 種皮が割れてきた。発芽は、ほとんどそろっていた。アズキはダイズやキヌサヤインゲンと違い、子葉が土の上には出てこないことがわかった。


8/2 葉が長くのびていた。葉が見えた。


8/4 葉が上を向いて開いた。茎の部分に小さな芽があった。


8/7 最初に葉が出た数は2枚で、次は3枚だった。


8/15 葉が大きくなり、葉がこみあってきた。4本はえてた株を2本にした。


8/25 株全体が大きくなった。花芽がたくさんできた。


手づくりあんこでどら焼をつくってみたら、
ぱさぱさしていて甘さも控えめ。
なんだかあまりおしくなかった。
なんでだろう?

文直くんの分析は…

栗どらというお菓子の原材料を見たら、膨張剤が使われていました。
膨張剤が入るとやわらかくなることがわかりました。
材料ひとつで食感が変わるなんて、びっくりしました。


ウチの畑でそだててあそぼう!

今年買った『ニガウリの絵本』を読んで、今年は「ちゃんと」つくってみます!とお母さん


藤枝國光・中山美鈴 編
土橋とし子 絵

「くさいからきをつけて!」と絵本にあったが、「本当にくさかった!」と笑う


大槻義昭 編
山福アケミ 絵

仕立てかたや摘果のしかたも絵本を参考にする


高橋国昭 編
沢田としき 絵


「田舎の本屋さん」のおすすめ本

この記事の掲載号
食農教育 2010年9月号(No76)

◆子どもあそび、復権!◆旬の魚で、うんまい給食! ほか。 [本を詳しく見る]

田舎の本屋さん 

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