「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2010年3月号
 

食農教育 No.73 2010年3月号より

村の直売所「手・まめ・館」

直売所で一次処理

村の甘いかぼちゃを一人一つ付けのシンプルメニューに

福島・鮫川村学校給食センター

芳賀公美

DATA

・食数…約1060食(鮫川村・古殿町分)

・管理栄養士…1名

・調理員…11名(うち3名は運転手兼務)

・炊飯方式…委託炊飯(鮫川村分は「手・まめ・館」にて電気炊飯器で炊飯)

直売所で「学校給食部会」を立ち上げ

 鮫川村学校給食センターでは、以前から地場産食材を優先して使用してきました。しかし、地場産物の利用率が高くなってきたのは、平成十六年度から「まめで達者な村づくり」事業がはじまり、村全体で地産地消を推進する動きが強まったこと、平成十七年十一月の村農産物加工・直売所「手・まめ・館」(以下「直売所」)の開設からです。直売所においては、学校給食用食材の安定確保を目的とした「学校給食部会」を立ち上げ、これを中心として生産拡大に取り組んでいます。その結果、年間を通して新鮮な野菜が給食センターへ届けられるようになりました。

 しかし、地場産食材があっても、品目や使用量によって給食で使うことのできる量には限界があります。平成十八年八月からは古殿町の給食の委託を受け、食数が今までの倍以上に増えたこともあり、地場産食材の大量処理が困難となりました。そこで、直売所へ「一次処理はできないか」という提案をし、“できる範囲で”引き受けてもらうようになったのが始まりです。その後、直売所での押切り機等の導入により、カット野菜の依頼をする頻度が高くなりました。

蒸しかぼちゃで全国学校 給食甲子園の決勝に

 直売所に一次処理を依頼するものは、里芋(皮むき)、いもがら(ずいき)・凍み大根のカット、たけのこの水煮、かぼちゃのカット(四分の一にカット、一口大にカット、グラム数でカットなど必要に応じて)、ゆで大豆、ゆで小豆、炒りえごま、すりえごまなどです。

 下処理に追われると、時間内に給食が提供できない、ミスや衛生管理上の不都合が発生するなどの問題がでてきます。しかし、一次処理の導入により、時間に余裕が生まれ、手づくりのメニューや他の地場産物の処理にかける時間の確保ができます。調理員の方たちも「地場産食材は安心して提供できる」「今まで使えなかった食材が使えるようになった」「献立や調理の幅も広がり、子どもたちによい」など、メリットを感じているようです。

 また、一次処理をしていただいたことによって、実現できたメニューがあります。それは、「蒸しかぼちゃ」です。鮫川村のカボチャは、「甘味があっておいしい」と好評です。今までも味噌汁やシチューに入れてきましたが、特徴ある地元の食材を強調させたかったため、味付けはシンプルにし、一人一つ付けで提供したいと考えました。一つずつ同じ大きさに切るのはとても大変です。しかし、直売所での一次処理の仕組みがあったため、「蒸しかぼちゃ」を給食で提供することができたのです。この「蒸しかぼちゃ」を取り入れた献立を応募し、昨年十一月に行われた第四回全国学校給食甲子園の決勝大会出場を果たしました。こういった結果につながったのは、一次処理の仕組みがあったからだと思います。

給食甲子園決勝のレシピ。蒸しかぼちゃ、ごはん、牛乳、豚肉のじゅうねん焼き(豚肉、えごま、味噌)、大豆とりんごのサラダ(大豆、りんご、きゃべつ、ほうれんそう、たまねぎ、えごま油)、いもがら汁(ずいき、大根、にんじん、じゃがいも、ねぎ、油揚げ、味噌)*牛乳と砂糖などの調味料以外は、すべて村内産

品目拡大にむけて、直売所との連携がカギ

給食甲子園に出場した、調理主任の岡崎かつ子さん(右)と私

 カット野菜の品目を増やすためには、直売所との連携を密にとることが大切です。今年は、村でいつなにがとれるのか、年間を見通した表を作成してもらっています。また、献立作成には、前年の発注書や毎月の見積りなども参考にしますが、天候などの関係で一週間ずれると間に合わなくなることもあります。頻繁に直売所と連絡をとり、見積りにでてきた食材以外に使用できる食材はないかを問い合わせるなどして、使用品目を増やすよう努めています。しかし、直売所の施設設備や職員数の問題など、厳しい現状があり、今はできる範囲で少しずつ増やしているところです。今後、鮫川村の地産地消の取組みが発展していくにつれ、カット野菜ばかりでなく、さまざまな農産加工品やオリジナル商品が給食に取り入れられるときがくると思います。そのための仕組みづくりを充実させることが、地産地消を推進するうえでの課題になると思います。

初任地で村の思いを受けながら……

 私は、学校栄養職員として給食に携わるようになって、二年目です。献立作成における課題、衛生管理の徹底、食育の推進…課せられた課題は多く、頭ではわかっていてもできないもどかしさ、自分へのいら立ちを感じる日々。まだまだ実力が及ばず、焦るばかりです。

 しかし、鮫川村の地産地消への取組みや地場産給食にかける思いは大きく、私の“やってみたい”という思いを受け、私を後押ししてくれます。初任地で先進の地場産給食にかかわることができ、さまざまなことに挑戦させていただける環境にあること、とてもうれしく思います。さらなる給食の充実、地場産給食の推進をめざし、子どもたちにこの地域のすばらしさを伝えていきたいと思います。

カット野菜が納入されるまで

「手・まめ・館」でのカット作業のようす

 まず、月はじめに直売所が翌月に使用できる食材の見積りを給食センターへ提出します。給食センターは、これを参考に地場産物を優先して、食材の発注を行ないます。このとき、カットなどの一次処理も合わせて連絡します。直売所は、野菜の出荷の多い農家の方を中心に食材を手配します。受注した農家の方は、食材を給食センター納品日またはその前日に直売所に納品し、直売所から給食センターへ納品となります。

 カットなど一次処理してもらう食材は、直売所で処理するもの(おもにかぼちゃなどの生鮮野菜)と、農家の方が直接処理して直売所に納品するもの(おもにいもがらなどの乾物)があります。

 直売所では、白衣と帽子を着用し、一次処理しています(消毒はしない)。また、直売所や農家の方には、品質の確認、異物の混入などの確認を徹底していただくようにしています。一次処理でカバーできない衛生管理の部分については、給食センターでの洗浄を徹底するなど、安全・安心の給食づくりに努めています。



「田舎の本屋さん」のおすすめ本

この記事の掲載号
食農教育 2010年3月号(No73)

オドロキいっぱい!マイ野菜/一人いっぽんマイ野菜!/容器の工夫でおもしろ栽培/センター方式でもやれる! 地場産給食 ほか。 [本を詳しく見る]

 食育活動 14号(2009年06月)

「地場産学校給食」先進地に学ぶ-みんなが喜ぶ「食材供給体制」つくり 地場産食材活用率日本一! 佐賀県からのレポート・学校給食で進む地域の絆づくり・給食納入業者の視点から・生産者の視点から・学校の視点から/学校給食を子どもたちの「ふるさとの味」に/ほか。 [本を詳しく見る]

田舎の本屋さん 

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