「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2010年1月号
 

食農教育 No.72 2010年1月号より

くるみパン。手づくりパンはスチコンの発酵機能を利用して、取り組むようになり、今では月1回実施

無理なく手づくりできる

カンタン、おいしい“スチコン”レシピを開発!

埼玉・さいたま市立浦和中学校

栄養士 入あかね

チキンの焼き物はジューシーに、魚の煮物は骨までやわらかく

 スチコン(スチームコンベクションオーブン)を使いはじめて早八年。当初は使い方がわからず、焼き物ばかりしていましたが、栄養士会の研究部や独自でレシピの研究を重ね、レパートリーを増やしてきました。今では手づくり給食をモットーにしている私にとって大切な相棒です。

DATA

・食数275食

・調理方式……自校調理

・栄養士……1人

・調理員……6人
(委託、正社員2人、パート4人)

・回転釜……3基

・スチームコンベクション……1台
(フジマック 型番FSCC202G)

 たとえば同じ焼き物でも、スチコンを使うとジューシーに焼くことができます。生徒に大人気の“チキンのコーンフレーク焼き”は調理モードを〈コンビ(蒸気と熱風を組み合わせた加熱調理。焼く、煮る、炊く、炒めるなどが可能)〉にし、二〇〇度水蒸気量二〇%で一五分焼いたあと、〈ホットエアー(熱風で加熱。焼き物に最適)〉で三分間加熱すると中身はジュワッ、外側はカリッと焼けます。マヨネーズの油で、揚げ物のような食感が楽しめます。〈コンビ〉で煮物もできます。“さんまのしょうが煮”は二時間〈コンビ〉にかけると味がしみて骨までやわらかくなります。煮崩れもありません。煮物は焼き物と違い、天板いっぱいに食材をのせることができるので、六〇〇食くらいの規模の学校でも可能だと思います。

肉まん、おいなりの簡単レシピも考案

 最近は、月一回の手づくりパンに力を入れています。「パンをこねるなんて無理」と思われがちですが、多少下手でも発酵さえできていれば、焼きたては最高においしいです。手づくりパンはスチコンに発酵機能がついていたので、「使わなきゃ損だ」と思い、取り組むようになりました。発酵時間を把握して、その時間に他の調理ができるように作業工程を工夫すれば、そんなに忙しくはありません。季節によって発酵時間は異なりますが、一次発酵の四〇分の間に野菜を切るなどしています。生地を分割して成形するのに時間がかかると思うので、人数の多い学校は天板に直接のばして焼き、ピザカッターでザクザク切るといいです。

 できるだけ手づくりを目標にしていますが、毎回手づくりだと、調理員さんに負担がかかってしまうのが悩み。そこで簡単にできる料理はないかと考案したのが“照り焼き肉まん”です。私は“なんちゃって肉まん”と呼んでいます。肉まんの手づくりは、皮づくりに手がかかるため他の献立との組み合わせが難しいのですが、この肉まんはカップに生地を流し入れ、具をのせ、その上から残りの生地をかけ〈スチーム(蒸気で加熱。蒸し物、茹で物が可能〉)するだけ。ほかに、油揚げの味つけと具の炊飯を同時に行なう“いきなりおいなりさん”も気に入っています。

食材の芯温を計る中心温度計を刺したまま加熱できる。加熱調理したものは、この温度計で中心部が75℃以上で、1分以上加熱できたことを確認して出す

天板ごと運んで調理場を汚さず

 スチコンには衛生面でも利点があります。天板の持ち運びが可能なため、きちんと衛生区分ができることです。釜でサンマを煮る場合、サンマを調理場に持ち込んで、釜に移さなければならないのですが、移すさい魚の血が床にたれたり、エプロンについたりしないよう気を遣います。スチコンなら天板に並べる作業が汚染区域ででき、天板ごと調理場に運べばいいので、そうした気遣いは不要です。できあがったあとも、好きなスペースに持って行って配缶することができます。煮崩れがないので数の不足などの心配もありません。

 今は地場産野菜を生かしたレシピに取り組んでいます。地場産の小松菜を入れた“揚げない春巻”やとれたての野菜をつかった“温野菜のマリネ”などを思案中です。まだまだスチコンの挑戦は続きそうです。


おすすめ“スチコン”レシピ

(分量は中学校の1人分。小学校なら7割程度にするといい。)

中はジュワッ、外はカリッと
◆◆ チキンのコーンフレーク焼き ◆◆

ホテルパン(スチコン調理用の平皿)1/2型(サイズ325mm×265mm)
1枚あたりに並べられる個数 15個

<献立例>

麦ごはん
牛乳
チキンのコーンフレーク焼き
ほうれん草のサラダ
キムチごま汁

<材料>1人分

―具―
鶏もも肉(皮なし)切り身1枚 60g
マヨネーズ 9.5g
塩 0.1g
こしょう 0.02g

―衣―
コーンフレーク 7g
パン粉 3g
粉チーズ 3g

<つくり方>

(1)オーブンは200℃に温めておく。
(2)コーンフレークは手で細かく砕いて、パン粉、粉チーズを混ぜる。
(3)塩、こしょうをふったマヨネーズを鶏肉全体につけて30分以上おく。
(4)(3)の鶏肉に(2)の衣を押しつけるようにまぶす。
(5)鶏肉を天板に並べて、オーブンを〈コンビ〉にして200℃、水蒸気量20%で15分焼く。そのあとモードを〈ホットエアー〉に切り替え、200℃で3分間焼いてカリッと仕上げる。

コーンフレークはこのくらい細かく砕く

 鶏肉にマヨネーズをつけると、肉がやわらかくなり、味がしみておいしいです。マヨネーズそのものの味はあまり感じません。揚げ物のようなサクサクとした食感が楽しめます。お金のないときは、安い胸肉を使うこともあるのですが、ぱさつきやすい胸肉でも、ジューシーになります。


煮崩れなし、骨までやわらか!
◆◆ さんまのしょうが煮 ◆◆

ホテルパン1/2型 1枚あたり 30尾

<献立例>

きのこごはん
牛乳
さんまのしょうが煮
即席漬け
かきたま汁

<材料>1人分

サンマ 60g
ネギ 15g
ショウガ 1.3g
梅干し 2g
昆布 1g

―調味液―
三温糖 3g
酒 3g
みりん 3g
しょうゆ 5g
水 55g

<つくり方>

(1)サンマは頭と内臓をとって、2等分の筒切りにする。ネギは3cmのぶつ切りに、ショウガはみじん切りにする。昆布は5cm角ほどの角切りにして、味が出るよう切り目を入れる。
(2)天板に昆布をしき、サンマを並べる(サンマが調味液にひたるように、天板は深さ6cmあるホテルパンを使っています)。
(3)調味液を煮立て、そこにショウガと梅干しを加える。
(4)ネギを適当に魚の上にちりばめて、上から(3)の調味液をかける。
(5)ぬらしてかるく揉んだクッキングペーパーを落とし蓋にして、〈コンビ〉で150℃、水蒸気量50%の設定で最低2時間加熱する。

 最低2時間加熱するためには、逆算して早めに作業にとりかからなければいけません。加熱時間を2時間にとどめるポイントは、調味液を少し温かい状態でかけること(沸騰していると魚の表面がめくれあがる)。庫内の温度が早く上がり、加熱時間を短縮できます。


◆◆ いきなりおいなりさん ◆◆

ホテルパン1/2型 1枚あたり 40個

<献立例>

いきなりおいなりさん
牛乳
魚ののりごま揚げ
おひたし
みそけんちん汁

<材料>1人分(3個)

精米 25g
もち米 25g
ニンジン 15g
干ししいたけ 1.5g
ゴボウ 15g
いなり用油揚げ(豆腐屋さんで頼めます) 1.5枚
スパゲッティ(袋の口をとめるため) 0.7g

―調味液―
三温糖 10g
酒 5g
酢 12g
みりん 2g
しょうゆ 15g
水 60g

<つくり方>

(1)米ともち米を30分ほど浸水しておく。
(2)ニンジンと、水で戻した干ししいたけをせん切りに、ゴボウはささがきにして、(1)の米に混ぜる。
(3)油揚げは半分にカットして熱湯をかけ、油抜きする。袋の口をとめるために使うスパゲッティは1/3に折る。
(4)油揚げに(2)を詰めてスパゲッティで縫うようにして、袋の口を閉じ、天板に並べる。
(5)調味液を砂糖が溶けるくらいにさっと煮溶かし、油揚げの上から注ぐ。
(6)ぬらしてかるく揉んだクッキングペーパーを落とし蓋にして、<コンビ>で150℃、水蒸気量50%にして最低2時間加熱する。

浸水した米に具を混ぜ、そのまま油揚げに詰めて、調味液を注いで加熱するだけ。袋の口をとめる楊枝のかわりに、スパゲッティを使うのもポイントです。



「田舎の本屋さん」のおすすめ本

この記事の掲載号
食農教育 2010年1月号(No72)

学年で年間2.5t!給食・家庭の生ゴミを毎日堆肥化/長崎発、生ゴミリサイクル畑/給食のタマネギの皮でハンカチ染め/ミカンの皮で消臭/大量調理にアイデア小道具/回転釜で炊き込みごはん/ほか。 [本を詳しく見る]

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