「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2008年9月号
 

食農教育 No.64 2008年9月号より

図解 避難生活を生き抜く

うおつか流防災食

魚柄仁之助(イラスト・堀込和佳)

1. そのときのために備えておきたいもの、知っておきたいこと

 この日本では、いつどこで巨大地震が発生してもおかしくない。いざというとき、たくましく避難生活を送るための備えを日頃からしておこう。

 阪神淡路大震災を経験した方のお話をお聞きすると、水も電気もガスも止まり、三日目、下手をすると七日目くらいまで、食料支援がない状態が続いたという。そして、電気が三日目くらいからまず復旧し、水道がそれに続いた。ガスは一番遅く、復旧するのに三ヵ月を要したという。

 そういう状況を想定したとき、日頃から最小限、何を準備しておきたいか書き出してみたのが一八頁の表と一九頁のイラストだ。

 つぎに避難生活のなかで、食中毒から身を守る方法を知っておいてほしい。

 食べものが腐りやすい夏は食中毒がこわい。中毒から身を守るにはどうすればよいのか? そのポイントは、「よく噛み、水分をなるべくとらずに食べること」。胃のなかに分泌される胃酸は強酸性で、中毒菌の大半は胃のなかで死滅する。アルカリ性で繁殖するO─157やコレラ菌も例外ではない。ところが、水分ガブガブの流し喰いをすると、O─157やコレラ菌が死滅しないうちに水といっしょに腸に移動し、弱アルカリ性の腸内で毒素を出し、中毒をおこす。人体内で最も強酸性の胃で中毒菌を死滅させる食べ方、「よく噛み、水分をなるべくとらずに食べること」が、食中毒を防ぐのだ。

2. いかなるときでも自分に合った料理を楽しもう

 人間、ちゃんと食べなければ元気は出てこない。避難生活だからこそ、ひと手間加えて、自分に合ったおいしい料理を食べよう。自分に合わない料理を食べ続けるのはストレスのもとだ。これから提案する料理法も、たいへん限られた条件のなかで、自分に合った料理法を考えるためのヒントだと思って、ぜひ自分に合った料理法を見出してほしい。

道具類A:カセットコンロ、カセットボンベ、フライパン、鍋、魔法瓶(電気湯沸しポットでもよい)、缶切り、はし、アルミホイル、保存容器、大きめの黒いビニール袋、大きめの透明のビニール袋

道具類B(廃棄物を利用できるもの):ペットボトル、ダンボール箱、発泡スチロール、空き缶、新聞紙、布類

食材:水、米、乾パン、乾物類(大豆などの豆類はとくに)、缶詰、ホールトマト缶、小麦粉、スキムミルク、パウダー寒天

調味料:塩、砂糖(あるいはチョコレートなどの糖分のあるもの)、香辛料、ケチャップ、食用油、醤油、ヨーグルト菌、酢

保温調理法でカセットボンベの節約

 カセットコンロは、電気もガスも止まっているときの貴重な熱源だ。だから節約して使おう。そこで紹介するのが、余熱の保温による料理法だ。

 たとえばここにスパゲッティがあるとして、その袋に「一〇分ゆでる」と表示されているとしよう。鍋に水を入れてコンロで沸騰させ、鍋にスパゲッティを入れて、お湯が再び沸騰してきたところで鍋にふたをし、コンロからおろす。鍋をすぐに布、新聞紙などをつめた発泡スチロール箱の中に入れて、箱のふたをする。そのまま、ゆで時間である一〇分間保温状態とし、一〇分たったら箱からとり出す。お湯はまだ九〇℃以上あり、スパゲッティはゆで上がっている。

 このゆで方でボンベは長持ちする。箱がなくても、新聞紙で一枚ずつ包んでいけば、かなりの保温力が得られる。

お日様で水温を上げる

 こんな実験をしたことがある。二リットルの四角いペットボトルに水をいっぱいに入れ、発泡スチロール箱の内側にアルミホイルを敷き、そのうえに黒ビニールでくるんだペットボトルを寝かせる。この発泡スチロール箱を屋上に置き、発泡スチロール箱の四隅に細い棒を立て、箱を透明ビニールでおおって、ビニール温室みたいにする。外の気温は七〜八℃だったが、午前一〇時に始めて、一五時にとり出したとき、ペットボトルの水は四〇℃になっていた。

 ちなみに、五〇〇ミリリットルの丸いペットボトルもいっしょに入れておいたが、こちらの水温は三〇℃。太陽光線を受ける面積の広い四角いペットボトルのほうが水温が上がった。夏なら、お湯に近い温度になるだろう。こうして水温を上げて料理すれば、カセットコンロのボンベも節約できる。

(※続きは誌面をごらんください。)

農文協食農教育2008年9月号

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