ペットボトルで育てたイネでもここまで実る食農教育 No.62 2008年5月号より
管理が簡単 観察に便利 [前編]
イネのペットボトル栽培
福岡教育大学 平尾健二
ペットボトル三本でお茶碗一杯分のおコメがとれる
学校や家庭で手軽にできるイネの容器栽培としては、大型バット、バケツ、ペットボトルなどがあります。
ペットボトルのイネつくりは持ち運びが楽で、根の観察ができ、水やりも簡単なのでおすすめです。
農家の田んぼのように、けっしてたくさんはとれませんが、それなりに穂が出て、花が咲いて、実っていく様子を学校やご自宅で観察することができます。通常農家の田んぼにおいて三株のイネが茶碗一杯分のおコメになります。ペットボトルで育てると、収穫できるおコメはボトル三本でだいたい茶碗一杯分くらい。ペットボトル一本分の収量は田んぼの一株にほぼ匹敵します。ペットボトルのイネから田んぼ一株のイネを想像してみましょう。いかに田んぼが大切な存在であるかを、実感できると思います。子どもたちが「食べ物を大切にしよう」とするきっかけになればと思います。
持ち運びが楽で水やりも簡単
ペットボトルを置く場所は、日当たりがよい庭、ベランダなどとします。一日中、日が当たる必要はないですが、日陰になるとそれなりに生育に影響します(大豊作をねらっているわけではありませんので、それも実験ということでいいのではないでしょうか)。
五〇〇ml以上のものなら栽培が可能ですが、九〇〇ml以上のものがおすすめです。
ペットボトルに植えつけたものを水を張った大型バットなどの容器につけておくと水やりの心配がほとんどいりません(バケツイネでは通常一五リットルなどの大きなバケツを使うことが紹介されていますが、五リットルでも十分育ちます。ただし、どちらにせよ水やりの頻度が多く、持ち運びは大変です)。
栽培歴 5月中旬〜6月上旬までに種まき、育苗
6月中旬〜下旬 栽培容器準備(土入れ、代かき)。その数日後、植えつけ
7月下旬 活着すると分げつが出現(遅くとも田植えは7月10日までに)
8月 (夏休み)3〜4日おきに水を補給。穂が出現。開花の観察
9月 穂の観察 おコメができてふくらんでいるのを観察可能
10月 収穫。頭を垂れて色づいたら稲刈り
11月 加工(脱穀、籾摺り、精米)収穫調査、試食
※これは九州地方の場合です。
地域によっては、早めたほうがよい場合もあります。芽出し、種まき、育苗
種子が入手できれば、種まきから行なうのがベスト。種まき後、三週間くらいで植えつけができます。
水を張った容器(バットやタッパーなど)に種籾を入れて室内に置きます。一日一回程度水を換え、三日程度で芽が少し出る直前の状態(鳩胸状態)になります。根が伸びてくると蒔くときに損傷するので、伸びすぎないよう注意してください。深さ三cm程度に土を入れた小型の容器(下に穴はなくてもいい、食べ終わったプリンのカップなども適します)に、土がびしょびしょにならない程度に水をたっぷり与え、種籾が重ならない程度に蒔いて、その上から五cmくらい土をかけます。バットは室内の日の当たらないところに置きます。芽が五cm程度出そろったら、少し明るいところに置き、徐々に日当たりのよいところに置くようにして、葉を緑化させます。水やりは、やりすぎて枯れることはないので、常時、土がぬれていても大丈夫です。
ペットボトルの田んぼの準備
ペットボトルを立てたもの(右)と寝かせたもの(左)ペットボトルを置く場所は、ベランダなどのコンクリートの上は温度がかなり上昇しますので、角材や発泡スチロールを敷くなどの工夫が必要です。水温が日中、お風呂の湯ぐらいになるなら要注意です。
ペットボトルに入れる土は、菜園があるならその土を使用。事前に振るっておくとベターです。土の中に有機質が多すぎると、発酵してメタンガスが出すぎて臭うことがあります。売っているような土ではなくてふつうの土がいいです。容器の八〜九分目程度、土を入れます。代かきをするとかさが減りますが、水を貯める容積が増えるのでよしとします。最終的に水を入れて七分目くらいになるようにします。
ペットボトルを立てて使うか寝かせて使うかは自由。立てる場合、ペットボトルの上の部分を切り落として土を詰めます。寝かせる場合、キャップをしたまま寝かせ、カッターなどで窓を開ける要領で植えつけ場所をつくります(図)。
この栽培法では、常時水をためて栽培管理を行なう都合上、肥料は、有機肥料では微生物による分解は進みませんので、化学肥料がベストです。化成肥料(8─8─8)がおすすめです。これを一株につき、ペットボトルのキャップ一杯(七g)程度を目安として入れます。化成肥料(8─8─8)はホームセンターで小袋で売っています(一袋一〇〇〜二〇〇円)。
これより濃度の高い肥料(16─16─16通称48号)は土壌中の肥料濃度が高すぎて、初期生育に悪影響を及ぼすので、使わないほうがよいです。
肥料を加えたら、水を入れながら、割り箸などの棒でどろどろになるまで、よくかき混ぜます。この「代かき」は泥んこ遊びみたいなので、子どもたちは喜んでやります。肥料を均一に溶かして、さらに水を加えながら、大きな石や根の残骸など、土の中の大きなごみを取り除き、一〜二日放置します。上に粘土層が集まって、肥料分が全体になじみます。土が分離するように水を大めに入れておきます。
植えつけ
植えつけは、ペットボトル一つにつき一株一本(多くても二本)植えとします。二本植えとは、苗二本をまとめて一株として植えることです。このとき一本の苗は一粒の種籾から発芽したものです。苗の根元に米粒がついていると思います。コメ粒の中の胚乳は苗が一人前になるための栄養分です。コツは欲張ってたくさん植えないことです。一本植えでも分げつがでるので心配いりません。
ペットボトルに1株1本ずつ植えつける。ペットボトルにクラスと児童の番号を入れておくと管理しやすい 植えつけ後、大型バットにペットボトルを並べて、水を張ればミニ田んぼになる。水やりの手間が省けるし、虫やカエルなどの小動物がすみついて、簡易ビオトープにもなる植えつけ後の管理については次号でお伝えします。
農文協 > 食農教育 > 2008年5月号 >
お問い合わせはrural@mail.ruralnet.or.jp まで
事務局:社団法人 農山漁村文化協会
〒107-8668 東京都港区赤坂7-6-12008 Rural Culture Association (c)
All Rights Reserved