「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2008年3月号
 

食農教育 No.60 2008年3月号より

プロの手ほどき 授業でできる食べもの加工

バームクーヘン


ミカン畑のなかの「食と農の体験塾」

 熊本県宇城市三角町のミカン農家、宮田研蔵さんが奥さんと二人で営んでいる「食と農の体験塾」の体験内容は、通年行なっているのが石窯で焼くパン・ピザづくり(写真下)、郷土食の団子汁、竈炊きご飯、ベーコンづくり。四〜七月は夏ミカンのマーマレードづくり、七〜八月にそうめん、九〜六月に炭火で焼くバームクーヘンづくり、十〜三月に無農薬栽培ミカンの生ジュース絞り、十二月〜一月には黒砂糖づくり。ほかにも、マキの火による塩づくり体験、炭焼き体験、ぼかし肥料づくり体験などがある。

 パンとピザづくりに使っているのは、農水省九州農業試験場が育成した小麦ニシノカオリとミナミノカオリ。国産小麦はパンに向いていないと敬遠されがちだが、ニシノカオリとミナミノカオリは強力粉のとれる硬質小麦で、宮田さんは、自分でも栽培するほか、知り合いにも頼んで栽培してもらっている。

 宮田さんは手づくりと自給にこだわっており、ピザのソースは地域でとれたトマト(完熟でおいしいのだが、市場出荷の規格に合わないのでクズとして捨てられる)を何時間もかけてじっくり煮込んだもの、トッピングのピーマン、たまねぎ、バジルは自家産、ベーコンは安全でおいしい豚肉を買って手づくり加工したもので、買うのはチーズだけ。

 パンに入れたり、そのまま食べたりする黒砂糖も、宮田さんの手づくり。もともとこの地域は、江戸時代からの黒砂糖の産地だった。宮田さんは、サトウキビを自分の畑で栽培し、絞り機まで復元したのだ。

とても簡単で子どもたちに人気のバームクーヘンづくり

 簡単に取り組めて、大人数でもできるバームクーヘンづくりは、宮田さんのおすすめ。作業の上達ぶりが自分で実感できるので、子どもたちにも人気のある体験メニューだ。

 バームクーヘンを焼く炭火は、炎が立たない「おき火」の状態がいい。竹は、火で熱せられて破裂しないように、節ごとに穴をあけておく。また、節の固いところはなたで削っておこう。


宮田研蔵さん(55歳)
 天草や有明海を一望するミカン山で、「食と農の体験塾」を営む宮田研蔵さん。体験塾には手づくりの炭焼き窯、石窯、薪でご飯を炊く竃(かまど)、サトウキビ絞り機、木製の大きな調理・食事台があり、食の営みを丸ごと体感できる。宮田さんは早くから環境保全型農業に取り組んできたが、そのなかで食育の必要性を痛感し、この体験塾を開くに至った。一度訪れた子どもや親たちから口コミで広がり、今では年間1万人の体験者が訪れるようになった。

バームクーヘンをつくろう
〈材料 70〜80人分〉

ホットケーキミックス
1kg

牛乳 900cc
卵3個

(1)ホットケーキミックスをボールにあけ
(2)牛乳900ccを加える
(3)さらに卵3個を加え、よくかきまぜ生地をつくる
(4)竹を火であぶりながら、汚れを拭く。熱せられた竹から油がしみ出す。この油で、焼きあがったときにバームクーヘンがスポンと取れる
(5)竹にゆっくりと生地をたらし、竹をゆっくり回しながらまんべんなくゆきわたらせ、ある程度ボールに生地がたれなくなったら炭火の上に置き、生地がたれないようにクルクル回しながらあぶっていく
(6)焼けた表面の焦げが年輪になる。軽く焦げ目がつくよう竹を回しながらあぶっていく。竹の両端を二人ひと組で回すときは、息が合わないとうまくいかないが、やっているうちにだんだん息が合ってくる。それもバームクーヘンづくりのおもしろさのひとつだ
(7)焦げ目がついたらまた生地をつけて、またあぶる。約10回この作業を繰り返すうちに、バームクーヘンが太くなる
(8)焼きあがったら、たてにスパッと切って、形がくずれないように竹からはがし
(9)今度はよこに切る
(10)バームクーヘンの年輪が楽しめる
 
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