「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2007年3月号
 

食農教育 No.53 2007年3月号より

用意するもの。上段が炒りヌカ。中段左から、ミネラルウォーター、本みりん、新ビオフェルミンS細粒、生ビール、酒粕。下段左から海水塩、唐辛子、昆布、米こうじ

プロの手ほどき 食べもの加工

ヌカ漬け

 ふつうヌカ床をつくるには、水分の多いくず野菜を一週間ほど捨て漬けして、微生物の発酵・熟成を促す。ところが、捨て漬けなし、ドブ臭なし、ヌカ床をつくったその日にはおいしいヌカ漬けを食べられる方法があった。麹菌や乳酸菌、酵母菌など、人体に有益な微生物をあらかじめ供給してあげるのだ。どんな材料を使うのか? 米こうじ、酒粕、本みりん、生ビール……。そして、極めつけは新ビオフェルミンS。

 女性は乳酸菌の宝庫だという。頭のてっぺんからつま先まで、元気な乳酸菌でコーティングされている。とくに授乳中のお母さんには、フェーカリス菌と呼ばれる乳酸菌がたくさんついていて、赤ちゃんを雑菌から守っている。最高のヌカ漬けとは、元気なお母さんが素手で毎日かき混ぜたものなのだ。

 石けんで乳酸菌は死なない。手袋などせず、よく洗った手で毎日一回新鮮な野菜を出し入れし、ヌカ床をかき混ぜよう。フェーカリス菌をはじめ、人それぞれについたさまざまな乳酸菌が手から補給され、文字どおり「お袋の味」を醸しだす。そしてなにを隠そう、新ビオフェルミンSに含まれる乳酸菌の一つが、このフェーカリス菌なのだ。

針塚農産 針塚藤重さん(72歳)

1935年、群馬県生まれ。東京農業大学で育種を専攻。卒業後、農業、麹、漬け物などの農産加工業に従事する。現在、経営は息子さんに任せ、各方面からの漬け物体験研修会の講師を引き受ける。「土づくりは人づくり」「21世紀は発酵技術の時代」をモットーに、日本のすべての家庭にヌカ漬けを普及すべく、全国を駆け回る。著書に『極上ぬか漬けお手のもの』(創森社)ほか



<針塚式・ヌカ床のつくり方>

材料(米ヌカ3kg分)

炒りヌカ …3kg
海水塩 …450g
唐辛子 …50g(一つかみ)
昆布 …50g(一つかみ)
米こうじ …300g
酒粕 …50g
生ビール …250cc(キリン「まろやか酵母」1本)
新ビオフェルミンS細粒 …23g(1/2本)
純米本みりん …100cc
水(ミネラルウォーター) …1650cc


(1)みりん、水、塩半量(約225g)を容器に入れ、菜箸でかき混ぜる


(2)別容器に炒りヌカ全量を入れ、残りの塩を混ぜる。
「生ヌカのばあい、必ず新しいものを使い、75℃で3分炒る。
デンプンをα化して菌が召し上がりやすい形に熱変性させるんです」


(3)ヌカと塩をよく混ぜ合わせたら、真ん中にくぼみをつくる

<種まきと風味づけ>


(4)まずは、乳酸菌。新ビオフェルミンS細粒を1/2本入れる


(5)次に酵母菌。一般の生ビールでは、酵素は活性しているが、発酵がすすまないように、酵母はろ過してとりのぞかれている。酵母も生きた生ビール(キリンまろやか酵母)や地ビールを使うとよい


(6)菜箸でよくかき混ぜる


(7)唐辛子と昆布を一つかみずつ入れ、風味づけする


(8)酒粕とこうじを入れ、麹菌や酵母菌をたっぷり投入


(9)菜箸でよく混ぜ合わせる


(10)1でつくった液体をすべて入れて、しっかりかき混ぜる。これで、およそ耳たぶくらいの固さ(水分約70%)になる

<新鮮な野菜を漬ける>


(11)水洗いした野菜をそのまま漬けてもよいが、塩もみするとさらにうまくなる。流水で洗い、雑菌のつきやすい先端部を切り取り、塩もみし、もう一度水洗い、が基本


(12)キュウリのばあいは、塩をふって、まな板の上で両手で転がして板ずりするか、袋に入れて塩もみする。もみ加減は野菜の汁がでてくるくらい


(13)毎日1回隅っこまでよくかき混ぜ、新鮮な野菜を1本入れるのがおいしいヌカ床を保つ秘訣。野菜には乳酸菌がついていて、酵素も含まれる。これがヌカの脂肪分を分解し、風味を高める


(14)野菜を埋めたら、空気が入らないようしっかり押さえる。10%の塩水に浸して軽く沸騰させた綿の布巾を上からかぶせておくと、シンナー臭の原因となる酸膜酵母(悪玉の酵母)の繁殖を抑えられる(夏は週1回、冬は2週に1回、布巾を殺菌)

針塚農産
群馬県渋川市中村66
TEL 0279-22-0381 FAX 0279-24-5424

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