食農教育 No.52 2007年1月号より
もちはどうして固くなる?
編集部
つきたてのもちはやわらかいのに、数時間たつともう固くなってしまう。
その理由は、もちに含まれるアミロペクチンというデンプンの性質と関係があるようだ。
生米が固いのは、アミロペクチンの分子が図のように規則的にしっかり並んでいるから
炊いたり蒸したりして水分と熱がいきわたると、デンプンの分子にすきまができて
( α 化=糊化)、やわらかくなり、消化酵素も働きやすくなる
時間がたつと再びβ化し、固くなる
*固くて消化しにくい状態がβデンプン。消化しやすい状態がαデンプンと覚えておこう
固くなったもちをどう食べる?
1月11日は、鏡開き。神様にお供えしてカチカチになった鏡餅を割って家族で食べる行事だ
β化したデンプンでも、煮たり焼いたりして、もう一度熱や水分を加えると、
またデンプンがα化して、おいしく食べられるようになる
こうなると、もう煮てもやわらかくならない。
しかし、おもしろいことに、焼いたり揚げたりすれば、またα化する(あられやかきもち)。
しかもこのばあい、サクサクッ、カリカリッとしたまま、再びβデンプンにもどることはない※(参考)『つくってあそぼう4 もちの絵本』江川和徳編(農文協)
災害用の倉庫などに備蓄されている「アルファ米」は、お湯や水を注ぐだけで煮炊きせずにご飯を食べられる。これは、α化したご飯を急速乾燥させてつくったもの。理屈は、あられやかきもちと同じ。α化したまま乾燥しているから、βデンプンにはもどらない
もちを固くしない方法は?
もち米を利用してつくる大福もちや桜もち、団子などでは、品質上、いつまでもやわらかい状態のものが望まれるので、やわらかくしたデンプンを固くしない工夫がいろいろなされている
砂糖を加える
砂糖は水ととっても仲良し。1kgの砂糖を溶かすのに必要な水の量は、たったの200cc。しかも、一度くっつくとなかなか離れない。この性質を利用して、乾燥を防ぎα化したデンプンの老化(β化)を防ぐ
酵素を加える
デンプン分解酵素(とくにβアミラーゼ)を加えて、α化したデンプンを軽度に分解し、β化しにくくする方法もある。たとえば、だんごの製造で、蒸しあげたもち生地をつくときに、ごく少量の酵素剤を添加するなど
※(参考)『食品加工総覧』第四巻(農文協)
水にさらす
岩手県紫波町の農家、川村恵子さんは、無添加なのに冷めても固くならない大福もちを直売所にだし、評判をよんでいる
やり方は、電動もちつき機で一度ついたもちを、手早くたらいにあけて、水のなかで均一に平たくのばして熱を逃がす。このままでは大福や切りもちに成型できないから、もう一度、今度は熱がこもらないように、もちつき機のフタを開けて二度づきする
これで、少なくとも2日間は、やわらかいままのもちが保たれる
冷めても固くならないおもちのしくみ
つきたてのおもちは温度が高くて水分もいっぱい 何もしないでしばらく置くと熱とともに水分が飛んでいき、おもちが固くなる 水の中でおもちを平たく伸ばしてやると熱は逃げても水分は飛ばない 水分が保たれたまま冷めているから、おもちはしばらく固くならない(参考)『現代農業』2002年12月号(農文協)
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