食農教育 No.52 2006年11月号より
人間の文化は、火を扱うことからはじまったといわれる。
だが、いま子どもたちはマッチで火をつけることすらほとんどない。
それどころか、IH調理器やエアコンなどの普及によって、
家の中で炎を見ることすらなくなってきた。
自分で火を扱うことは、子どもたちに大きな自信をもたらす。
いっしょにゆらめく火を見つめることから、
安らぎと心の通い合いが生まれる。
火と人間の歴史、火と文字、さまざまな関心も広がっていく。火おこしの達人 関根秀樹さんに学ぶ
たのしい! おいしい! たき火入門
編集部
口絵で紹介したたき火の基本、もう少し詳しくみていこう。講師は、あるテレビ番組でパプアニューギニアやアフリカの火おこし名人と対決し、縄文時代のキリモミ式発火法でみごと圧勝したこともある!という関根秀樹さん。生徒役は、年間60日も里山で「森の保育」活動をしているという木更津社会館保育園(千葉)の年長さんたち41名だ。まさに、現代に生きる縄文人と野生児たちのコラボレーション!?
ここでは、たき火のやり方し方だけでなく、火を使った簡単料理や、とっておきアート(?)も紹介するぞ。
さあ、たき木拾い
まずは全員で裏山に入り、たきつけやたき木を集める。急な斜面の裏山にもずんずん分け入る野生児たち
(写真はすべて岡本央) 関根さんのあいさつに興味津々の子どもたち 社会館保育園の分園「佐平館」。江戸時代につくられた母屋のほか、土蔵や灰屋、牛小屋もある。その敷地3000坪を中心に、周囲の里山や田んぼ、畑、小川でも子どもたちが走り回るたきつけ
最近の大学生にたき火をさせると、ライターの火でいきなり太い枝に火をつけようとする学生も多いのだとか。
マッチやライターの種火では熱エネルギーの量が足りない。たき火の基本は、小さな種火から、たきつけを燃え上がらせ、それをエンピツくらいの枝、親指くらいの枝へとリレーし、炎を少しずつ大きく育てていくこと。まずは、たくさんたきつけを集めておくことが最初の一歩だ。
たきつけ。左上から、ワラ、雑草、杉の葉、スス キ、マテバシイ。そのほか、松の葉やクリのイ ガ、よくかれた笹や竹など。とにかく、つまよう じくらいの太さの乾燥した小枝をたっぷり拾い集 め、束ねてしまえば立派なたきつけになる 適当なたきつけがないばあい、生の枝でもたき つけにできる。ナタの裏でトントンたたいて、 外皮を剥いでしまう。ナナカマドは7回カマドに 入れても燃えない木といわれるが、やはり外皮 を剥いだらよく燃えるのだとか。竹や生木を薄 く削ってもたきつけになるたき火の組み方
素人のたき火失敗の原因のほとんどは、たきつけの不足か、細枝のならべ方が悪いかのどちらかだ。せっかく細枝に火がついたのに、枝がばらけていて次の枝に点火しないばあいが多い。そこで、おすすめは口絵で紹介した並列型のたき火法。
里山はたき木の宝庫。みんなで集めたら、こんなに杉の葉が集まった。地面が湿っているときは、少し地面を掘ってくぼみをつくり、乾いた枯れ葉や小枝を敷き詰めてから火をたくとよい。たきつけや小枝は風の流れと平行にならべる。小枝、細枝とすき間なくならべるのがポイント火をおこす
関根さんの火おこしパフォーマンスに子どもたちは「マジック! マジック!」と大興奮。わずか30秒〜40秒で火がついた
火種を、麻ヒモを綿のようにほぐしたものに包み、種火へと育てる関根さん 摩擦熱で煙が発生し、やがて焦げた木粉がV字形の切り込みにこぼれ落ちてたまる。木粉が放熱を防ぎつつ、そこからも煙が出始めたら、少量のゼンマイの綿で火種をそっとはさみ、息をふきかけ、さらにほぐした麻ヒモのなかにつつみこみ、手でぐるぐる回すと、突然ボッと炎があがる 力のない子どもたち向けには、ヒモ切り式発火法がおすすめ。「ヒモがからまらないように、左手を下にして。ゆるまないようにしながら、ゆっくり回していいよ」。コツは押さえる人の姿勢。手だけだとぐらぐらするので、膝元に手首を当てて安定させることが大事。数人で交替しながらヒモを引っ張り続けると1〜2分で火種ができた*棒の長さや材質、板の切り込みの位置など、研究に研究を重ねた関根さんの火おこし器は、下記にて商品化されていて、指導・講習もお願いできます。
たけやま森の学校(平田村役場産業課)
0247-55-3115※続きは雑誌でごらんください。
農文協 > 食農教育 > 2007年1月号 >
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