「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2006年11月号
 

食農教育 No.51 2006年11月号より

味噌汁で健康 栄養士さんにアンケート

給食で、どんな味噌汁つくってますか?

編集部

 学校給食の現場では、どんな味噌汁がつくられているのだろう? 編集部では、本誌や『食育活動』誌の読者の栄養士さん一九〇名を対象に、アンケート調査を実施。五三名の方から回答をいただいた。

 「栄養士さん、調理員さんに拍手!」。アンケートを受け取っての印象だ。家庭の食事から味噌汁が減っているなか、大量調理の学校給食現場で、健康面や地域性が配慮された、手間を惜しまない味噌汁がつくられているようなのだ。

■味噌の購入先は?

 最近は地域の農産加工所でつくった味噌が出回るようになってきたが、円グラフのとおり、学校給食でも積極的に取り入れられているようだ。業者からの取り寄せでも、半数の方が「地元業者だから」という理由をあげている。ただし、このかぎりでは原料も地元産かどうかはわからないが、地元産あるいは、県産、国産を意識している方は多い。

 また、栄養士さんたち自らが自家製味噌をつくって給食に使用しているところが二件、計画も含めて子どもたちがつくった味噌を使用するところも二件あった。一度に使用する味噌は八〇〇食でも八kg程度なので、給食で食べる味噌を自分たちで手づくりする学習も十分成り立ちそう。

■味噌汁の給食回数は?

 月二〜三回(年二〇〜三〇回程度)が一番多い(棒グラフ)。一番多かったのは、北海道の給食センター(給食数二一〇)で、年間一四〇回も味噌汁をだしている。週四回の米飯給食で、ごはんには必ず汁物をつけているとのこと。

 年五〇回以上というのは、いずれも北海道・東北地方で、学校給食でも寒い地域でよく味噌汁がだされる傾向があるのかもしれない。「もっと増やしたいが、パン食との関係で難しい」との声も多く、その分、酢味噌和えや味噌味の煮物など、副菜に味噌を使うような工夫も多くなされている。

■だしはどうしてる?

 粉末のだしの素が家庭で広く使われている現状を意識して、ほとんどの給食で昆布やかつお節、さば節、煮干しを使って、ていねいにだしをとり、塩分控えめの味噌汁をつくっているよう。地域柄、西のほうにいくに従って煮干しを使用するところが多くなっている。また、食べる煮干しを使用し、そのまま食缶に入れて食べさせているところも。

■味噌のアイデア料理

 西洋ふうに「肉や魚の味噌マヨネーズ焼き」「味噌味のスパゲティ」など、子どもたちが喜ぶ味噌料理が工夫されている。

 また、北海道の「ちゃんちゃん焼き(魚と野菜を味噌で味付けして蒸し焼きにする)」や、愛知県の「味噌おでん」「味噌煮込みうどん」、香川県の「白味噌あんもち雑煮(白い味噌汁に野菜やあんこもちを入れる)」「さつま(魚のだしで味噌をのばし、焼いてほぐした魚の身を混ぜあわせて、麦飯にかけて食べる)」、鹿児島県の「豚骨の味噌煮」「ピーナッツ味噌」などなど、地域色豊かな味噌料理が積極的にだされているようだ。

■味噌汁で伝えたいこと

 「実七品にだし要らず」。具だくさんで野菜たっぷりの味噌汁は、体によい。おまけにだしもよくでておいしいことをいうのだそう。

 栄養士のみなさん、食育における味噌汁の役割は非常に重要だと考えているようで、「味噌汁一杯の中に、健康に過ごしていくための先人の生活の知恵がぎっしり詰まっています」とのこと。

 右頁に、栄養士さんたちが引き継いでいきたいと考える、味噌汁の知恵をまとめてみた。

 また、五年生家庭科の授業にかかわる方も多く、だし(煮干し、だしの素、水)を変えて味見させたり(残念だが、だしの素をおいしいという児童が増えているそう)、手づくり味噌のつくり方を紹介するなど、さまざまな工夫がなされている。

■課題は?

 パン食との関係で味噌汁を増やしにくいという一方、ご飯・味噌汁・おかずの和食メニューのときに、どうしても牛乳が残される点が指摘された。限られた時間での喫食の難しさもある。

 また、衛生管理上、内部温度を上げると豆腐などに「す」が入ってしまい、おいしさを損なうなどの苦労も。

 一番多かったのは、センター化がすすむなかで、手づくりの味がだしづらくなってきたこと。「簡便化、安ければいいという風潮のなかで、日本人の食はゆがんでしまったのだから、知・徳・体のもととなる食育がもっとも大切だというなら、給食・食育にもっとお金をかけていい」。

 以上、現場からの声だ。


■アンケート結果の詳細はこちら

http://syokunou.net/modules/tinyd3/index.php?id=2

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