「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2006年9月号
 
稲の開花

食農教育 No.50 2006年9月号より

農家が教える はじめてのアイガモ農法

田んぼの生き物に目を凝らす

(稲の開花〜収穫)

農家 橋口孝久

 田んぼにアイガモが入ると、アイガモのヒナとともに稲も日に日に成長し、田んぼの中の生き物も増え、にぎわってきます。そして、いよいよ穂が出はじめると、米つくりの成果が、目に見えて楽しくなってきます。

▼稲の花を観察しよう

 稲の開花は、田植え時期や稲の品種によって異なりますが、鹿児島の六月下旬植えのヒノヒカリでは、開花は、八月二十日頃からはじまります。ここ数年、温暖化による気温の上昇で、例年より早まっています。

 稲穂は上のほうから順に開花します。最初の開花から二週間くらいかけて、すべてのモミが開花し受粉します。午前三時〜午後三時くらいの間に開花し、雨の日は受粉できないので開花しないようです。

▼田んぼの生き物調査をしよう

 出穂する頃には、稲も大きく成長し、害虫や益虫、ただの虫など、たくさんの生き物が田んぼに生息しています。水の中の観察も行なうために、生き物調査の二〜三日前に、放鳥しているアイガモを引き上げておくと、水が澄み、水の中の生き物も観察しやすくなります。

 田んぼに入る前に、観察の仕方や、スライドや図鑑などで生き物の種類や姿などを事前学習しておくと、学習の効果が上がるようです。また、採集した生き物を入れるビニールパックなども準備し、採集した生き物を教室で観察し、記録しておきましょう。

糸とんぼとツマグロ横ばい

【生き物の分類】

 害虫、益虫、ただの虫は、お互いに食物連鎖で繋がっています。田んぼの生き物は、数ミリくらいの大きさの生き物も多いので、稲に近づき、数分間、じっくり目を凝らして見ていると、しだいに目がなれて、小さい生き物も視野に入ってきます。田んぼの中の生き物は、左図のようにそれぞれ棲み分けをしているようです。それぞれの部位ごとにじっくり観察すると、多くの生き物を見つけることができます。

 また子どもたちが、いっせいに田んぼに入ると、田んぼの中の生き物が飛び出します。それを餌にしようと、いつの間にか、赤とんぼが子どもたちの周囲を群れて飛んでいます。

 アイガモ水田と近くの慣行水田とで、生き物の種類や生息数を比較することができれば、アイガモ農法による効果を確認することもできます。昨年の私たちの調査では、アイガモ水田の生き物を、種類も生息数も、慣行水田の約二倍くらい確認できました。

秋ウンカの幼虫

▼鳶色ウンカ(秋ウンカ)を食廃油で撃退

 鳶色ウンカは、昨年は、川上小学校のアイガモ水田でも大発生しました。ウンカは、田植えが早く、肥料の多い水田の稲にたくさんつきます。昨年は、六月六日に、周囲の農家より二週間くらい早く、日曜参観日に合わせて田植えを行ないました。その関係で、周囲の稲よりたくさんのウンカがついたのでしょう。でもその大半は、アイガモやクモなどに食べられていました。八月下旬に稲の穂が実りはじめるため、アイガモは引き上げました。

 九月に入ると、異常高温も重なり、秋ウンカは勢いがつき、多いところで一株当たりの幼虫が五〇〜八〇頭くらいに増え、稲が徐々に倒れ、このまま放っておくと、枯れることが予想されました。そこで急遽、児童に呼びかけ、家庭から食廃油を集め、ペットボトルに入れ、稲と稲の間の水面に一定の間隔で垂らし、株元についているウンカを払い落としました。油膜に落ちたウンカの気門をふさいで、窒息死させるのです。それを二回行ない、無事ウンカから稲を守ることができました。

▼親子で稲刈り

 米つくりの一連の作業のなかで、稲を刈り、束ね、ハザに架ける作業は、いちばん人手と親の協力が必要な作業です。三クラスの約一五〇名の親子で、稲刈りを行ないました。そのため、約五〇本の稲刈り鎌を準備しました。この一連の作業をスムースに進行させるために、前日の夕方、バインダーで、ハザ架けを設置するスペースのみ刈り取り、稲刈り当日に備えました。

 稲刈り当日は、稲を刈る、束ねる、ハザ架けまで運ぶ、ハザに架けるという四つの作業を交互に行ない、約一〇アールの稲刈りを、一時間半くらいかけて行ないました。

 稲刈りの終わった後、事前に収穫しておいた新米でつくったおにぎりと豚汁(このときはアイガモではありません)で昼食をとりました。作業を終えた後の田んぼでの新米のおにぎりは、格別おいしいようです。

▼脱穀(ハーベスター)をしよう

 脱穀は、人手が多すぎても作業がうまくいかないので、クラスごとに時間を区切って行ないます。ハザから稲をおろし運ぶ人、脱穀する人、脱穀されたモミを運ぶ人、脱穀ずみの稲ワラを束ねて運ぶ人と、それぞれのグループに分かれて作業を行ないます。作業にとりかかる前に、ハーベスター内部の脱穀部の脱穀のしくみを説明しておきましょう。

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