「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2005年7月号
 

食農教育 No.42 2005年7月号より

畦のカエルの数と種類を調査
畦のカエルの数と種類を調査。3〜4人でチームを組んで畦を歩きながら、飛び込んだカエルを記録する

農家といっしょに生き物調べ

100円ショップのツールを活かした
田んぼの生き物観察法

日本不耕起栽培普及会 武原 夏子

 田んぼを耕さずに、イネを育てる農法がある。前年の稲株と稲株の間に苗を植え、強い根っこを張らせて野性味あふれるイネを育てるのだ。同時に、前年の稲株や切りワラから、微生物や植物プランクトンが勢いよく発生し、耕さない田んぼには生き物がいっぱいとなる。そんな農法を全国に広めている「日本不耕起栽培普及会」の武原さんに、学校で役立つ生き物調査の実際を執筆していただいた。(編集部)

 私たちは不耕起栽培のイネの生育調査とともに、田んぼの生き物調査を実施したり、農家や環境団体、学校の先生方を対象にしての研修会も開いています。生き物調査は大人でも子どもでもできますが、小さな生き物を見つけて数えるのは、子どもたちのほうが得意なようです。

『現代農業』用語集

不耕起・半不耕起

 調査といっても、用意する道具の多くは、100円ショップや身近なものでそろえられます。

 たとえば、100円ショップには、カウンター、魚捕りの網、熱帯魚用の網、捕虫網、虫かご、バット、ピンセット各種、アクリル製の容器類、バケツ、ビニール袋類、万能はさみ、虫眼鏡、双眼鏡、巻尺、ノギス、カラフルなひもなど、すぐに使えるものがたくさんあります。また、身近なものでは、ペットボトルやコップ、酒パックの箱、レジ袋、タッパー、CDケース、粉ミルクや洗剤についてくるスプーン、デジタル秤などです。

 それでは、これらの道具をどんなふうに使うのかご紹介しましょう。

カエルの卵塊調べ――カウンター、ノギス、デジタル秤……

 3〜4月ごろ、冬期湛水(冬の田んぼに水を張ること)した田んぼでニホンアカガエルの卵塊調査をしています。同じ場所にいくつもの卵塊があることが多いので、カウンターを持って畦や水田の中を歩き、卵塊の数を調べます。

 ほかのカエルの卵塊も同様に調査できるばあいもありますが、カエルの種類によっては卵塊を見つけるのに経験が必要なこともあります。

 また、カエルの数や種類を調査するときもカウンターを使います。畦を歩き田んぼに飛び込むカエルの数を数える(右頁写真)ので、調査の開始前に畦に近づかないように注意しましょう。3〜4人でチームを組んでアマガエルをカウントする人、トウキョウダルマガエルを数える人、記録係など担当を決め、いっしょに畦を一周します。トンボの羽化数(ヤゴの抜け殻)調べも、同様にできます。

 また、カエルの大きさを測定するのにはノギスを、重さはデジタル秤を使います。デジタル秤は容器ごと計量できるので便利です。

 調査後、カエルや卵塊を他の地域へ持って行って放さないでください。むやみに他地域へ移すと、その場所の生態系や生き物の履歴を人為的に変え、近親交配や他の生き物(固有種も含め)の絶滅につながることがあります。このことは、子どもたちにきちんと教えましょう。また、絶滅に瀕しているカエル類は地域で保護をしていることがあります。

カエルやオタマジャクシの身体測定

水中の生き物調べ――コップ、CDケース……

06-F03-06.gif 水の中の生きものをどう観察する

 アクリル製の麦茶ポットや調味料入れ、ペットボトルやコップなどを用意し、田んぼの水を取ります。ペットボトルやコップ、アクリル製の容器は透明度が高く、ミジンコなどの水中生物の観察が容易です。小さな生き物を観察するときには、虫眼鏡も忘れずに。

 採取した水から小さな生き物を取り出すには、熱帯魚用の網で採取した水を濾し、少量の水を入れた容器の中でネットを裏返して洗います。

 CDケースのフタの上に水滴を少し載せて光にかざして観察してみましょう。洗剤や粉ミルク用のスプーンなどは小さな生き物を傷つけずにすくい取るのに便利です。水の中の藻を観察するときも、CDケースの上に載せてティッシュペーパーで水を吸い取り、ピンセットで広げてみるとどんな形なのかよくわかります。

 田んぼの草を採取したら、上半分を切った酒パックの容器に種類別に水を入れて、根ごと挿しておきましょう。萎れさせずに観察することができます。

泥の中の生き物調べ――ペットボトル、バット、ピンセット……

泥の中の生きものをどう調べる?

 水底の泥を採って泥の中の生き物を調べてみましょう。

 900mlのペットボトルの底に大きめの穴を開け、高さは10cmほどに切っておきます。これを直角に田んぼに差し込んで水と空気を抜き、移植ゴテで下からフタをして泥を採取します。

 採取した泥は麦茶ポットに入れ、水を入れて日陰に置いておきます。他の調査をしているあいだに、土が沈んで水が澄んできて、田んぼの中のようすを再現することができます。泥を学校に持って帰るばあいは、学校に戻ってすぐに水を入れて一晩置きましょう。

 もっと詳しく泥の中の生き物を調べるときは、泥を熱帯魚の網に入れ、バケツの中で水道水をかけながら何度も洗い、泥やワラを取り除きます。網の中身がほとんどなにもなくなったら、浅く水を張ったバットの中で網の内側を洗います。カウンターやピンセットを持って観察しましょう。ペットボトルの底の面積にいるイトミミズやミジンコなどの数がわかれば、田んぼの面積に換算することで、その田んぼにすんでいる数を概算で出せます。

(2)泥を洗って生きもの観察

畦草や稲株の昆虫・クモ類調べ――捕虫網、化粧品ケース……

 畦草や稲株にはさまざまな昆虫やクモ類などがすんでいます。捕虫網で草の上部やイネの上部をなでるようにしながら、数十メートル歩いてみましょう。捕虫網の中に何が入るでしょうか。ビニール袋や虫かごへ捕虫網に入った生き物を移してみます。動き回る虫やクモなどはフタ付きの化粧品ケース(クリームなどを入れる)やCDケースに入れて観察し、虫の種類や名前を確認しましょう。こうすれば、図鑑で調べているあいだも逃げられずにすみます。日陰に置いて観察したら、弱らないうちに逃がしてあげましょう。

田んぼの泥を取り出すには?

 そのほか、冬の田んぼでも生き物調査ができます。ワラや土を採取してバットの中で調べてみましょう。また、生き物の形跡を調べる方法もあります。中干しや水の少ない時期に足跡調べをすると、泥の上に鳥や動物の足跡が見つかります。冬の田んぼを歩いて鳥の羽を拾ってみます。何種類ぐらい見つけられるでしょうか。

 生き物調査は田んぼの生態系や環境の状況を知る手がかりとなります。学校で観察したあとは、生き物たちをもといた場所へ返してあげましょう。

田んぼの泥を取り出すには?
→食農教育トップに戻る
農文協食農教育2005年7月号

ページのトップへ


お問い合わせはrural@mail.ruralnet.or.jp まで
事務局:社団法人 農山漁村文化協会
〒107-8668 東京都港区赤坂7-6-1

2005 Rural Culture Association (c)
All Rights Reserved