「総合的な時間」の総合誌
農文協
食農教育  
農文協食農教育2004年9月号
 

食農教育 No.36 2004年9月号より
[特集]食育で校区が元気づく―高知からの発信―

今日の給食、何キロメートル?

青森・十和田市立東中学校 野澤敬之

冬の豪雪地帯にも多彩な食材

 「今日の給食、何キロメートル?」。いささか妙な表現ではあるが、給食食材の移動距離を測ろうというのである。本校のある青森県十和田市は、冬には積雪のため農産物の露地栽培はできない。しかし給食のメニューには季節を問わず、多彩な食材が使用されている。温暖な気候の産地からの輸送、輸入によるものである。こうして、化石燃料を消費して輸送された食材が給食へと姿を変えて届けられるいっぽう、その給食では残飯が大量に出て、給食センターへ戻され焼却処分される。

国外からの移動距離 国内からの移動距離
食材ごとの移動距離表 食材ごとの移動距離表

 こうした自らの食生活にかかわるエネルギーのムダをひと目で実感する方法として、最近注目されるフードマイレージの考え方を援用した取組みを行なった。フードマイレージとは、食材がどれだけ離れたところから運ばれたのかを示す尺度で、食べものの重量と輸送距離を掛け算したもの。今回は、重量までは考慮せず、移動距離のみを調べてみた。

シーフードカレーとせんべい汁の移動距離

 調査した生徒3名は、給食の単価が300円を切ることに注目、「給食の単価が安いのは、輸入食材が多く使われているからではないか」と予想を立てた。質問内容のほか、何をどこで調べるのか、結果の仮説などを書いた調査計画を立てたあと、給食センターを訪問して食材の産地の聞き取り調査を実施した。給食センターで把握していない産地は、納入業者へ電話やFAXを入れる。人気メニューのシーフードカレーの移動距離を見ると――、イカはペルー(2万5000km)、エビはベトナム(6400km)、ワカメは中国(3400km)、ニンジンは愛知(720km)……などとわかった(外国は首都から、国内は都道府県庁所在地からの距離)。

給食センターにて栄養士さんに聞きとり調査
給食センターにて栄養士さんに聞きとり調査

 調査後、産地をひと目で表わせないか思慮していたので、地図の使用と移動距離の合計という方法があることをアドバイス。正距方位図法の地図がなかったので距離は必ずしも正確ではないが、シーフードカレーの移動距離は12万4352km、じつに地球3週分であることがわかった。驚いた生徒たちは、郷土料理のせんべい汁を含む県産愛用メニューの移動距離も調査。結果は4408kmで、28倍もの違いであった。

 給食食材は多くの移動距離を経て学校へ届けられる。と同時に、CO2の排出量が多くなり、環境に負荷を与えることなども学びとった。地産地消や地場産給食といった言葉のもつ意義も、具体的な図と数字で実感したようである。

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