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Ruralnet・農文協食農教育2004年3月号

食農教育 No.32 2004年3月号より
[教材への切り口]米粉のお菓子 から

お米の七変化

虎屋文庫(株)虎屋 研究主査課長 今村 規子

 米から作る主な粉には、下図のような種類がある。*は生の粉、それ以外は加熱した粉(そのまま食べられる)で、いずれも主に和菓子の材料として使用される。

うるち米上新粉(だんご・柏もち)上用粉(薯蕷饅頭)もち米餅粉(求肥・もち菓子)白玉粉*(白玉・求肥)道明寺粉(生菓子)みじん粉(菓子の装飾)寒梅粉(落雁・工芸菓子)

●上新粉・上用粉の作り方

(1)うるち米を洗い、水に漬け、水を切る。
(2)粉砕する(臼でついてくだく)。
(3)ふるい分けて乾燥させる。

注:上用粉は上新粉よりも目が細かいものをいう。

上新粉(写真提供/全国穀類工業協同組合)
上新粉(写真提供/全国穀類工業協同組合)
上新粉を使ったお菓子・柏もち
上新粉を使ったお菓子・柏もち

●白玉粉の作り方

(1)もち米を洗い、水に漬ける。
(2)水びきする(水をかけながら、石臼ですりつぶす)。
(3)できた乳液を水にさらし、沈殿したものを圧搾して細かく切断する。
(4)熱風乾燥する。

白玉粉(写真提供/全国穀類工業協同組合)
白玉粉(写真提供/全国穀類工業協同組合)
上新粉を使ったお菓子・柏もち
白玉粉を使ったお菓子・白玉汁粉
(撮影/安室久光)
「日本山海名物図会」の道明寺干飯の作り方
「日本山海名物図会」の道明寺干飯の作り方

〈米粉の歴史と用途〉

 そもそも米粉とは、粒のままでは食べられない屑米であったのだろう。それを有効利用するために調理法が考案され、その後、生の米を砕いたものが作られるようになったと考えられる。菓子の原料としての米粉の利用は後年のことである。

 江戸時代になると、料理書・菓子製法書に、うるち米の粉や白玉粉の製法が記されるようになる。「粗くひいた米の粉」「できるだけ細かく粉にする」などの表現もみられ、菓子の種類が増えたり、味に変化をつけるために、原材料である米粉にも工夫が凝らされてくる様子がうかがえる。

 米を使った和菓子といえば煎餅やあられと思われがちであるが、それだけではない。薯蕷饅頭や外郎などの生菓子、落雁、最中の皮など、米粉利用のバリエーションは実に多彩なのである。

 また、それぞれの粉は単独に使うだけでなく、硬さや弾力を調整するために混ぜて使われることもあり、市販の「だんごの粉」などはブレンドされているものが多い。

●道明寺粉の作り方

(1)もち米を洗い、水に漬ける。
(2)蒸して、乾燥させる。
(3)ひき割る(目のあらい石臼ですりつぶす)。

道明寺粉(写真提供/ 全国穀類工業協同組合)
道明寺粉(写真提供/ 全国穀類工業協同組合)
道明寺粉を使ったお菓子・夏の山路
道明寺粉を使ったお菓子・夏の山路
(撮影/安室久光)

〈道明寺粉の歴史〉

 道明寺粉はもち米を蒸して乾燥させたものである。糒・乾飯(ほしいい)とも呼ばれ、当初は携帯食・非常食であり、すでに『古事記』にも記録が見える。また、平安時代の『伊勢物語』にも、三河の国八橋のほとりで業平が乾飯を食べる場面がある。

 道明寺粉の名は、大阪の藤井寺市にある尼寺、道明寺の名物だったところから付けられたといわれている。現在では粒の大きさも2つ割り、5つ割りなどさまざまであり、また、炒って焼き色を付けたものも作られている。

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