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生物科学
Volume.69,No.1 2017

Aug.

目次

特集:大震災と生物学研究者

巻頭言:若手大学教員の任期付雇用と軍産学共同の動き(鈴木邦雄)……1

溝口元:被災記:リスクマネジメントとレジリエンスの向上を目指して……2

守屋央朗:阪神淡路大震災での私の体験……4
 私は、阪神淡路大震災を大学院生として体験した。当時住んでいたアパートは崩壊し私は生き埋めとなり救出された。その後の神戸の復興も含めた体験は、地震大国・日本に住む私たちが地震という大規模災害にどのように備え、立ち向かい、そして受け止めるのかを考えるきっかけとなった。本稿では、大学院生としての被災体験と、地震対策・地震行政に対する私なりの考えを書いた。最後に、当時の私の状況をより具体的にイメージしていただけるよう、震災当時の私が書いた手記を付記した。
キーワード:阪神淡路大震災、防災、マグニチュード

大山隆:新天地を襲った阪神・淡路大震災……12
 関東大震災は、安政の大地震の約70年後に起きている。一民間企業の研究員として小田原で働いていた私は、関東大震災から70年が経過した頃、大学教員として神戸に赴くことになった。これで当時大地震の危険性が取り沙汰されていた地域から離れることができた。しかし皮肉にも、それから1年も経たないうちに新天地の神戸を大地震とそれに伴う大災害が襲った。阪神・淡路大震災である。これにより、私の実験室は焼失してしまった。もちろん研究サンプル、機器、備品類も失った。本稿では、地震直後の状況から復興までの道のり、さらには、大震災で得た教訓やエピソードなどについて述べる。

平吹喜彦:砂浜海岸エコトーンモニタリングと順応性を欠く復興事業……18
 2011年3月11日に発生した東日本大震災以降、主に仙台湾南部海岸域で取り組んできた「景観生態学的な砂浜海岸エコトーンモニタリング」と、「海辺の自然・里浜の思想を尊重する復興事業の支援」をふり返って、背景や経過、成果、課題などを記述した。千年に一度とされる未曾有の大地震・大津波は、砂浜海岸エコトーンの地形や立地、生物を広域にわたって著しく攪乱したが、その生態系複合領域に内在する不均一性・多様性・固有性・冗長性といったからくりが駆動して、生物種とハビタットの存続、そしてすばやい自律的再生が生じている。多重防御と合意形成、未来志向の地域づくりを基本理念とする防災・減災事業と復興・まちづくりの営みにおいてこそ、里浜・ふるさとを築いてきた先達にならい、こうした自然の叡智・恵みを持続して享受しうる、謙虚で順応的な対応が不可欠である。
キーワード:東日本大震災、砂浜海岸エコトーン、自律的再生、復興事業 順応性

谷時雄:熊本地震:未曾有の震災にどう対応したか……24
 「天災は忘れた頃にやってくる」。平成28年4月、熊本で二度にわたる最大震度7の激しい地震が起こり、家屋などに甚大な被害が生じた。関東地方と異なり、近年地震を感じることがほとんどなかった熊本では、震災に対する備えがあまりなされていなかった。大学や研究室も大きな被害を受けたが、地震発生から8ヶ月過ぎ、復興予算による被災機器や設備の更新が始まり、また震災を契機に学内共同研究の芽を育てる活動が新たに開始されるなど、大学全体で復旧が大きく進みつつある。研究室の責任者として災害に如何に備えるか、震災時の状況と教訓を今後のために報告したい。
キーワード:熊本地震、防災対策、震災復興

堂前雅史:『動物学雑誌』に見る関東大震災と動物学……31
 関東大震災は今日の形を整えつつあった日本の動物学の研究者・研究組織にもさまざまな被害をもたらした。関東大震災の後、約半年の休刊後に出版された日本動物学会誌『動物学雑誌』の第35巻422号(1923年12月15日号)には、編集委員による「関東大震火災と動物学」と内田昇三による「三崎臨海実験所の夏 ― 一九二三七月から九月まで―」が掲載されていて、震災に直面した動物学研究現場の有様が生き生きと描かれている。本稿ではこれらの記事を再編して当時の状況を紹介する。こうした報告から、大正期の動物学関係者の居住地や勤務地の様子、研究にとって重視されていたものがうかがえる。
キーワード:関東大震災、動物学、日本動物学会

並木重宏・関洋一・神崎亮平:虫にみる神経構築のレイアウト……43
 神経系の形は、神経系の機能と動物進化のプロセスを探求するための、簡便で有用な手がかりである。本稿では、虫の神経系に見られる明瞭な神経構造を対象として、かたちとライフスタイルがどのように関係するかを検討した研究について述べ、今後期待される方向性をいくらか紹介する
キーワード:神経系統学、グランドパターン、微小脳、神経形態、ホモロジー

清水勇・細将貴・神野慧一郎:シーボルトのトキ(朱鷺)……53
 鳥類学に明るかったシーボルトは、日本滞在中に鳥の収集に力を入れた。その鳥のコレクションの中には日本で絶滅したトキが含まれ、野外でのシーボルトの目撃記録もある。ライデンの自然史博物館に送られたこれらの鳥標本をもとに、C. テミンクによって『新鳥類彩色図版集』が、H。シュレーゲルによって『ファウナ・ヤポニカ鳥類篇』が著され、日本の鳥類相が西欧に初めて体系的に紹介された。ここでは、それぞれの著作成立の背景について述べ、その中のトキIbis nipponの記載内容について詳述した。二人が用いたトキの標本は、その形態(羽色)が違っていたが、何故そのような違いができるのかが解明されるまでの歴史的な経緯についても解説した。
キーワード:F.v.シーボルト、C.テミンク、新鳥類彩色図版集、H.シュレーゲル、ファウナ・ヤポニカ(日本動物誌)、トキ

書評―『水産総合研究センター叢書 魚たちとワシントン条約 マグロ・サメからナマコ・ 深海サンゴまで』『湿原の植物誌』


English_conents
Suzuki Kunio : Recent accelerating synchronized movement of short-term employment of young university teachers with industry-military-university scientific research project in Japan (1)
Special feature : Big earthquakes and biological scientists
Mizoguchi Hazime : Introduction (2)
Moriya Hisao : My experience of Great Hanshin-Awaji Earthquake (4)
Ohyama Takashi : The Great Hanshin-Awaji Earthquake : a devastating disaster occurred in a new chapter of my life (12)
Hirabuki Yoshihiko: A sand-dune coastal ecotone monitoring and unadaptable reconstruction works (18)
Tani Tokio : Kumamoto earthquakes : How I coped with the unprecedent disaster (24)
Daumae Masashi : Great Kanto Earthquake and zoologists narrated in the Japanese zoological journal “Dobutsugaku Zasshi” (31)
Namiki Shigehiro, Seki Yoichi & Kanzaki Ryohei : Neural ground pattern and their diversity in insects (43)
Shimizu Isamu, Hoso Masaki & Kamino Keiichiro : Toki of Siebold (53)
Book review (62)


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