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生物科学
Volume 66,No.1 2014

Oct.

目次

特集:哺乳動物の「島嶼効果」:日本列島からの証拠

巻頭言:先行研究の評価―STAP細胞問題を契機に考えさせられたこと―(鈴木邦雄)……1

海部陽介:哺乳動物の「島嶼効果」:日本列島からの証拠……2

本川雅治:日本から小型哺乳類の「島嶼効果」を考える―アカネズミからの考察と展望……4
 小型哺乳類において,体サイズの大型化が「島嶼ルール」とされ,その形成要因について多くの議論が行われてきた.それらは,隔離されたことにより,島嶼における小型哺乳類の形態変化が生じたことを前提としたもので,島嶼が形成される過程に着目した議論は見られなかった.海水準変動による陸橋形成により小型哺乳類相が形成された日本に着目し,アカネズミを例に日本列島本土と周辺島嶼から「島嶼効果」について再考する.
キーワード:日本列島,島嶼効果,アカネズミ,空白地帯,集団サイズ

鈴木聡:島嶼効果研究のモデル動物としての小型食肉類……15
 1964年にJ. B. Fosterが島嶼ルールを提唱して以来,哺乳類におけるサイズの島嶼効果に関する研究はさまざまな切り口から行われてきた.その中で,食肉目はその生物学的特性から注目を集めてきた分類群の一つである.本稿では,食肉目に関する島嶼効果の研究をいくつか紹介し,今後のアジア,とくに日本列島における食肉目の島嶼効果研究の将来性,発展性について述べたい.
キーワード:小型食肉類,日本列島,島嶼効果

寺田千里・齊藤隆:島嶼ルールと局所適応:ヤクシカを中心に島の面積と地形の関係について考える……24
 偶蹄類は,本土に比べて島の個体の方が矮小化するという島嶼ルールのパターンに良くあてはまる分類群のひとつである.本論では,Terada et al.(2012)の研究をもとに,九州及びその周辺の島に生息するニホンジカの体サイズと島面積との関係,そして相対的な足のサイズと環境要因との関係について紹介する.体サイズは島面積や降水量と関係することが示され,島嶼ルールは支持されたが,他にも島間変異に影響している因子があり,複数の仮説を組み合わせて考える必要があることが明らかになった.その1例として,相対的な足の長さが降水量や島の傾斜度と関連することが示され,この形質は島の地形に適合するように進化したと考えられた.
キーワード:ニホンジカ・頭蓋基底長(CBL)・中手骨・地理的変異

久保(尾普j麦野:島嶼環境下での偶蹄類の形態進化パターン……30
 偶蹄類は「島嶼のルール」に合致する事例を数多く提供してきた.島嶼偶蹄類には,体サイズの小型化や四肢の短縮など共通する形態的特徴があり,島環境に固有の選択圧(捕食者の不在による行動様式や生活史の変化など)が働いた結果と考えられている.本稿では,地中海産の化石偶蹄類に認められる共通の形態進化パターンについて概説した上で,日本の更新世化石の一大産地である琉球列島から出土する化石シカ類,特にリュウキュウジカについて,筆者らが現在進めている研究事例を交えて紹介する.
キーワード:島嶼効果,シカ科,古生物学,琉球列島,更新世

濱田穣:マカクザル,とくにニホンザルにおける島嶼効果……42
 マカクはニホンザルに代表される,もっともサルらしいオナガザル類の霊長類である.アジアに約550万年前に渡来し,鮮新世・更新世の気候変動とともに適応放散し,現生種22種が数えられる.アジアの島々にも分布しており,ニホンザルもそのひとつだ.これらの島嶼生息マカクに島嶼効果が見られるのだろうか?多くは尾の短縮,毛並みや毛色,そして顔面形態に特徴が形成され,島固有種もしくは島固有亜種を形成する.体サイズは顕著な大型化も小型化もしない.
キーワード:マカク,Macaca, Island rule, dwarfism, gigantism, Sundaland

杉山幸丸:伊谷純一郎とその霊長類学……52
 第二次世界大戦ののちに新しい霊長類学が野生ニホンザルの研究から始まった.その中心的役割を果たしたのが伊谷純一郎だった.人間固有と考えられていた性質や行動の起源を探る新しい試みであり,世界の人間探求に衝撃を与えた.伊谷は霊長類の社会構造の起源を探る研究は社会学だと主張して生態学からの探求では解明できないとした.優れたナチュラリストだった彼がなぜ霊長類の研究に限って生態学的・生物学的アプローチを否定したのか.
キーワード:ニホンザル,餌付け,環境適応,先験的規矩,不平等原則

書評-『ブラキストン「標本」史』『干潟ベントスフィールド図鑑』『アジアの熱帯生態学』『心と行動の進化を探る―人間行動進化学入門』『パンダが来た道 人と歩んだ150年』


English_conents

Kunio suzuki:Appropriate estimation of preceding studies-some matters personally considered with the‘STAP cell’affiair-(1)
Special feature:The island rule in mammals :evidence from the Japanese Archipelago
Kaifu Yousuke:Introduction(2)
Motokawa Masaharu:“Island rule” as viewed from small mammals of Japan-discussion and prospect with emphasis on the Japanese large field mouse(4)
Suzuki Satoshi:Small carnivores as model animals for studies of insularity(15)
Terada Chisato, Saitoh Takashi:Island rule and local adaptation, with emphasis on the effects of island area and topography in Cervus nippon yakushimae(24)
Kubo Ozaki Mugino:Trends in morphological evolution of insular artiodactyls(30)
Hamada Yuzuru:Insularity in Macaques, especially in Japanese macaques(42)
Sugiyama Yukimaru:Jun’ichiro Itani and His Primatology(52)
Book review(60)


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