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生物科学
Volume 63,No.2 2012

Feb.

目次

特集:植物界に見られる共通性・統一性

巻頭言:原発,風発,モデル農場(上田恵介)……65

菊沢喜八郎:統一性に向けての私の歩み……66
 単位土地面積当たりの植物の本数とバイオマスの間に見られる関係と、ある植物集団内で大きな個体から積算した積算個体重と積算本数の間に見られる関係は、理想状態(完全一方向競争)下では完全に一致することを見いだした。後者の関係を用いれば、自己間引きの法則も、小さい個体が大きい個体によって被陰され枯死する過程として導出できる。生物世界の多様性は、統一的な法則性のもとでのパラメーターの違いからもたらされる。 キーワード:統一性,多様性,サイズ─クラス,個体数,フラクタル,一方向競争,自己間引き,ロジスチック成長,モジュール性

小山耕平:生命現象における比例関係の起源は相似とアフィン―キクイモの成長と光合成を例にして……75
 第一に,葉の集団が指数関数的に成長する理由は,葉量が2倍に増えたとき光合成能力の高い葉も低い葉も2倍に増える,つまり葉群全体が相似形(アフィン)に拡大するからである事を発見した(アフィンモデル).ここから,指数成長する不均質な系にはすべて幾何学的相似性・アフィンが存在すると推論する.第二に,曲線として表される光合成反応に於いて光―光合成曲線の相似性から各葉の日受光量と日光合成量の間に比例関係が出現する事を実験的に示した.最後に,上記2つの結果から推論して非線形現象一般における比例関係の起源は相似とアフィンである事を提案する.
キーワード:非線形現象,線形関係,指数成長,光合成,affine

小野田雄介:植物形質のメタ解析の実用例と展望……83
 植物の形質は,温度や降水量などの物理的環境や他の生物との相互作用の中で多様に進化してきた.形質の違いを定量的且つ体系的に研究することは,植物の多様性創出機構や生態系機能を理解することに役立つ.近年メタ解析という方法を通して,植物の形質データを広域的に捉える研究が進んでいる.本稿では,著者が行なった葉の強度に関するメタ解析を例に交えながら,植物形質のメタ解析の意義と今後の展望について述べたい.
キーワード:形質,大規模データ解析,多様性,棲み分け,生態系機能

森茂太:植物個体呼吸のロバストネスからみた生物多様性……94
 植物個体呼吸に関するMori et al.(2010)論文の解説,補足的なコメントを行いたい.Mori et al.(2010)は,実生〜巨木まで個体重量幅で10億倍の幅で根を含む植物個体全体の呼吸(シベリア〜熱帯,67種類271個体)を測定した.その結果,個体重量と個体呼吸の間には,両対数軸上で上に凸の関係がみられ,これを実生側の傾き1と巨木側の傾き3/4の2本の単純ベキ関数を漸近線とした混合ベキ関数でモデル化した.2つの傾きは,主要仮説のReich et al.(2006)の傾き1とWest et al.(1997)の傾き3/4の双方を支持した.実生〜巨木の植物個体呼吸全体をグローバルに見た場合にはロバストネスとも言える一定の傾向がみられた.
キーワード:生物多様性,個体呼吸,重力,メタボリック・スケーリング,ロバストネス

小林哲:モクズガニ類の侵略の生物学─II 侵略的外来種チュウゴクモクズガニの生態学と欧米への侵略の歴史……102
 チュウゴクモクズガニは河口にエスチュアリーが発達する,暖温帯から亜寒帯の大河川と内湾に侵入する侵略的外来種であり,百年の侵略の歴史がある.船のバラスト水や船体付着による非意図的導入が知られ,小卵多産であり侵入は供給源の状況に影響される.意図的導入の可能性も高い.通し回遊の習性により海と淡水の両域で急速に分布を拡大する.個体群成長期の経済的被害は甚大で欧米では強く警戒されている.生物多様性が低い欧米では空いたニッチを占め爆発的に増加した.
キーワード:チュウゴクモクズガニ 侵略的外来種 侵略の生態学 通し回遊種 欧米への侵略史

杉山幸丸:人類祖先の性偏向分散:種に確立された性質か……118
 子どもが親元から離れてゆく現象は生物に普遍的に見られる.妊娠・出産・育児に多大なエネルギーを費やし,捕食のリスクにさらされる哺乳類の雌は母親の近くで生涯を過ごし,雄はより多くの良質な資源を求めて分散するのが基本だ.しかし大型類人猿と現生人類は雌分散が多いことから,これは類人猿と人類の共通祖先から共有してきた特徴だといわれてきた.分散(移住)という行動様式は環境に左右されない種に確立された性質なのだろうか.本論では現代日本社会の人々の移動・移住もふくめて,動物の分散現象はよりよい資源を求めて移動・移住する生態学的環境適応であり,かつ,大型類人猿と現生人類が共通祖先の時代から共有してきた性質ではないことを示した.
キーワード: 霊長類,狩猟採集生活,農耕,定住,資源分布,グローバル社会

書評―『香り分子で生物学を旅する―嗅覚と科学のファンタジー―』/『新しい分子進化学入門』/『誰も知らない野生のパンダ』


English_conents

Ueda Keisuke : Failure of agricultural policy in Japan(65)
Special feature : Similarity and unity in plant kingdom
Kikuzawa Kihachiro:My small travel toward a unified theory in ecology(66)
Koyama Kohei:Similarity and affine in biology(75)
Onoda Yusuke : Meta-analysis of plant traits(83)
Mori Shigeta : Biodiversity from the view point of robustness in whole-plant-respiration(94)
Kobayashi Satoshi : Invasive biology of the mitten crab Eriocheir spp. -II. Ecology of invasive alien species Eriocheir sinensis and the history of invasion to Europe and America.(102)
Sugiyama Yukimaru : Sex-biased dispersal of human ancestors : is it the established character for each species?(118)
Book review(126)


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