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生物科学
Volume 62,No.3 2011

Apr.

目次

特集:もう1つの多様性:海に生きる小さなものたち

●巻頭言:野外観察と大量遺伝子解析(長谷川眞理子)……129

●石田健・窪川かおる:もう1つの生物多様性〜海に生きるミリ未満の連虫〜……130

●嶋永元裕:深海の小さな生き物たち—深海性メイオベントスの生態……133
 全地表の60%を占める深海底で最も繁栄している生物群の1つは,メイオベントスという1o未満の最小サイズの多細胞動物である.しかしながら深海底における彼らの繁殖生態や種多様性,いやそれどころか個体数・生物量の深度変化についてすらよく分かっていないのが現状である.この総説では,上記の3つの項目に焦点を絞り,現時点で分かっていることを著者自身の研究成果も絡めながら解説しつつ,研究上の問題点や今後の展望についても述べる.
キーワード:メイオベントス 深海底 生物量 種多様性 繁殖

●土屋正史:貧酸素環境の小さな生物:細胞内の小さな生物との相互作用……143
 単細胞真核生物に見られる共生関係は,生物進化の原動力である.有孔虫類もまた様々な種類の藻類との共生関係から成立しており,貧栄養海域などへの適応を可能にしている.底生有孔虫類には,貧酸素環境に特徴的な共生様式の存在が明らかになってきた.貧酸素環境という極限的な環境に適応するために,バクテリアを共生させたり,他人の葉緑体かすめ取って利用したり,様々な工夫がなされているようだ.
キーワード:有孔虫類,細胞内共生生物,貧酸素環境,遺伝的多様性,遺伝的分化

●田中克彦:ウミクワガタ類の棲息場所利用とハーレム形成……151
 等脚目はダンゴムシやワラジムシに代表される小型甲殻類の一群である.このうち,魚類の外部寄生虫として知られるウミクワガタ類は幼体と成体が形態的にも生態的にも著しく異なる他,魚類への寄生と海底における休息・脱皮を繰り返して成長するという特異な生活史を有する.本稿では,このウミクワガタ類の生活史,特に棲息場所利用と雄によるハーレム形成について紹介したい.
キーワード : ウミクワガタ類,生活史,棲息場所利用,ハーレム

●山本啓之:1ミリに住まう微生物:多様な環境,多様な機能……156
 微生物はミリ単位で変化する環境を住み家として利用し,無限とも思える多様性を生み出してきた.そのエネルギー基盤から考えると,微生物の基本機能は光合成,有機物分解,化学合成に集約できる.これらの機能の内訳は,40億年に及ぶ生物進化の結果として多様である.野放図に見える微生物の生態系も機能と歴史を知れば,整然とした体系をみることができる.
キーワード:微生物生態系,光合成,有機物分解,化学合成,地球史,生物進化

●大越健嗣:海洋生物—ミリレベルの優位性……166
 海洋生物は,生涯あるいは生活史の一時期が数o以下であるものが多い.二枚貝のマガキやアサリの浮遊幼生は300μmの大きさになるまで広域に拡散し,巻貝のサキグロタマツメタやホソウミニナは数ミリの稚貝がフローティングで移動する.ミズクラゲのポリプは人工護岸にはりつき,ストロビレーションで大量のエフィラを遊出させる.これら海洋生物の「ミリ世代」の特性を述べるとともに人間活動との関連性についても紹介する.
キーワード:幼生,サキグロタマツメタ,フローティング,干潟,生活史

●青木優和:ガラモ場の葉上動物群集を調査しよう!……172
 近年藻場の重要性が認識されるようになって,藻場の現状についてのモニタリング調査はよく行われるようになってきた.ところがこのような場合に調査項目として扱われるのは海藻種の分布と現存量が主である.加えて,出現魚類の調査が行われることもある.しかし,葉上動物が通常の調査項目に含まれることはほとんどない.藻場調査というのは藻場生物群集の調査であるはずなので,海藻だけ調べているのは,土壌の環境調査を行う時に土壌そのものに関する物理化学的性質ばかり調べて土壌生物に眼を向けないようなものである.本稿では,まずガラモ場葉上動物の生息場所利用や一般的特性について概説する.次に,何がガラモ場葉上動物調査のハードルになっていて,これからどのようにしてゆけば良いのか,また藻場環境の指標としての葉上動物群集調査の可能性についても考えてみたい.
キーワード:生息場所,小型甲殻類,巻貝類,全国藻場調査,環境指標

●伊谷行:こらむ:海洋における小さな共生者たち……181

●渡部元:白海老非海老—二十一世紀に蘇る公孫竜—……182
 詭弁として知られる中国古典,白馬論を通じて生物分類学における種概念の変遷を概観し,理論的基盤の整備を行った.種概念は形態的種概念,形質集合種概念,生物学的種概念,分類学的種概念,認知科学的種概念の五つに分類でき,後者ほどより基盤的である.この種概念の分類,整備により生物分類学の理論と実際について理解促進が期待される.
キーワード:種概念,数理論理学,形式的集合論,メレオロジー,区体論,オートポイエーシス理論

●書評—『よみがえれ!科学者魂 —研究はひらめきと寄り道だ—』/『マダガスカル島—西インド洋地域研究入門—』/『ザリガニの生物学』/『フィールド古生物学』/『あぁ,そうなんだ!魚講座』/『ダーウィンと進化思想』


English_conents

Hasegawa Mariko:Field work and genomics(129)
Special feature : Another bio-diversity : small organisms in the ocean
Ishida Ken&Kubokawa Kaoru:Introduction(130)
Shimanaga Motohiro:Ecology of deep-sea small benthic animals(meiobenthos)(133)
Tsuchiya Masashi : Host-symbiont interactions in foraminifer under dysoxic environment(143)
Tanaka Katsuhiko : Habitat use and harem formation in gnathiid isopods(151)
Yamamoto Hiroyuki : Microbes living within millimeter, various habitats and versatile creatures(156)
Okoshi Kenji : Ocean life - advantage in terms of smallness(166)
Aoki Masakazu : How about surveying epiphytic animal communities in Sargassum beds?(172)
Itani Kou:Symbiosis in small organisms in the ocean(181)
Watabe Hajime : White lobster is not lobster. -Revive of Gongsun Long in 21-st Century-(182)
Book reviews(187)


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