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生物科学
Volume 62,No.2 2011

Feb.

目次

特集:追悼 日高敏隆

●巻頭言:日高さんの時代と世代(上田恵介)……65

●長野敬:『生物科学』と日高敏隆—断片的な実証的回顧……66
 日高敏隆については本年(2010年)の2月に京都で,生前を回顧する賑やかなパーティがあった.生物学での仕事・活動については,すでに学会機関誌などで,然るべく取り上げられつつある.本稿の趣旨はそうした企画とは違うもので,『生物科学』(以下しばしば「本誌」)と日高のかかわりという事柄である.話題はもっぱら,『生物科学』と「日高」という二つの焦点で描かれる楕円の内側に限られる.そのうえ記述の重点はむしろ前者に傾くことが多いから,本号が日高回顧の特集だとすれば,それにあまりふさわしい内容ではない.
 歴史的な回顧ということもあって,敬称はすべて省く.いずれにせよ筆者個人としても,彼が1975年に京都に移ってから以後は,直接に顔を会わせる機会が減った.それ以前の追憶となると,日高氏はもとより「君」も「さん」も,どうもしっくりしない.そして彼の本誌とのかかわりは,もっぱらこの「それ以前」の時代に属し,それに限られていた.

●伊藤嘉昭:日高君と私—農工大時代,動物行動学会の発足,そしてアメリカシロヒトリ……73

●森貴久:日高さんがすぐ近くにいた時代……75

●細馬宏通:個体の来歴,ヒトの来歴……79

●湯本貴和:地球環境学と日高敏隆さん……82

●森哲・沼田英治:日高敏隆先生の業績目録……85

●河野和男:ネオダーウィニズムの職人が語るネオダーウィニズムの効用と限界……92
 20世紀後半の進化学の一般的基準となってきたネオダーウィニズムは,育種の世界や種内進化等のミクロな進化を理解するには優れた理論体系であるが,断続平衡,Evo-Devo,高次分類群の歴史等から導かれる進化の階層性や育種家が示す下からの経験則は,同じ考えを進化上の大きな出来事,いわゆるマクロ進化に外挿するには無理があることを強く示唆している.これは12年前本誌に提示し,はげしく批判を受けた考えの延長であるが,その後の進化学の進展は,この論点が現在進化学で最も興味深く議論が進んでいる分野の一つであることを示している.本稿はそれを最近の進化学の動向を見据えた上で再考するものである.
キーワード:ネオダーウィニズム,分類群,先細り,末広がり,育種

●松田裕之:生物多様性条約COP10の成果と課題……111
 生物多様性条約の第15回締約国会議では,土壇場で名古屋議定書と愛知目標が合意された.その内容に曖昧さは残るものの,先進国と途上国の対立を超えて合意したことは,国際条約として成功だったと言えるだろう.特に議長国である日本の取組みは高く評価できる.全体を通じて,利用と保全の調和を図る日本の取組みが浸透したといえるだろう.ただし,科学者が中心的役割を果たしたとはいえない.科学者の役割が問われている
キーワード:Man and the Biosphere Program, Marine protected area, Cultural diversity, Access and Benefit Sharing

●佐々木広堂・吉原賢二:東北水田稲作の北方ルート伝播……115
 従来イネについては,水田稲作が弥生時代に北九州にもたらされ,漸次東に伝わって,東北地方北部に及んだとされてきた.しかし1980年代に青森県に弥生時代の水田跡が発見され,水田稲作のルートに新たな問題を提起するに至った.水田稲作の伝播はイネ自体の生物学的特性が深く関わる.自家受粉,感光性・感温性,晩生・早生等品種の環境適応性などの考察が必要であり,これによって伝播速度にいちじるしい影響がもたらされる.従来説ではこれらの考察がかけていた.本研究で従来の定説では東北地方を北上する伝播は矛盾を生じること,青森への伝播は日本海を隔てた沿海州地方からもたらされたとすることがもっとも有力であること,さらに中国東北部遼寧省から吉林省を通じる沿海州への古代文化伝達の環境が十分整っていたことを明らかにする.
キーワード:水田稲作,イネの自家受粉,品種と環境適応性,青森の稲作起原論,沿海州文化の影響

追悼:野生動物医学における草分け増井光子先生を偲んで(浅川満彦)……122

書評—『ナチュラルヒストリーシリーズ 日本の動物園』/『アジアの在来家畜』/『悩ましい翻訳語 科学用語の由来と誤訳』/『環境倫理学』/『ワークブックで学ぶ生物学の基礎』/『貝類学』


English_conents

Ueda Keisuke:The age where he lived and the same generation as him(65)
Special feature : In memorial Hidaka Toshitaka
Nagano Kei:‘Biological Science’ and T. Hidaka-A souvenir(66)
Ito Yosiaki:Late T. Hidaka and myself : His stay at Tokyo University of Agriculture and Technology, start of Japan Ethological Society, and the fall webworm(73)
Mori Yoshihisa:Once upon a time in Kyoto University : good old days with Professor Hidaka(75)
Hosoma Hiromichi:History of individual behavior(79)
Yumoto Takakazu:Grobal humanitics of the environment and Prof. Toshitaka Hidaka(82)
Mori Akira & Numata Hideharu: List of publications by Prof. Toshitaka Hidaka(85)
Kawano Kazuo:Validity and the limitation of Neo-Darwinism told by a practicing plant breeder(92)
Matsuda Hiroyuki:Concerns on the 10th Conference of Parties for Convention on Biological Diversity(111)
Sasaki Koudou & Yoshihara Kenji:Introduction of rice field into north-east Japan via a northern route(115)
Asakawa Mitsuhiko : Obituary : Masui Mitsuko(122)
Book reviews(123)


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