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世界のヤミツキ野菜が激アツアツ

韓国

宮廷料理でも使われた韓国カボチャ カボッキー

奈良・堀内敬介

筆者。4カ所の直売所に少量多品目の野菜を出荷

 

 私は64歳までの42年間、製パン業界に身をおいて、製造と販売に注力してきた。定年後の6年間はユーチューブによる動画制作の勉強とヘラブナ釣り、ゴルフに熱中。ゴルフ代稼ぎのために、71歳にして突然野菜づくりを始めた。

 妻には「お父さん狂ったんじゃないの?」といわれる始末。100坪の自給畑に加え、9反ほどある田んぼのうちの3・3反を畑地に変えて野菜をつくり、4カ所の直売所・スーパーで販売するようになった。

 畑の先生は妻、教科書は全国の農家によるユーチューブ動画。72歳、野菜づくり2年目である。

「チャングムの誓い」にも出た食材

 野菜づくり1年目の春に、友達から「カボッキー」(松永種苗)の苗をいただいた。教えのままに育てたら、なんと15 個の実をつけた。食べたらうまい。これは売れる、と確信した。単純計算で20個とれて200円で売れたら、1株から4000円の売り上げとなる。

 わずか1年半前の話だが、当時は情報がなかった。ネットで調べてもなく、インスタグラムで韓国人が紹介している料理を見てやっと情報を得た。宮廷料理に使われ、韓国ドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」にも出た食材。韓国では日常的にさまざまな料理に使われているようだ。

 外観は緑色でズッキーニと同じく未熟果を食べるのだが、ひとまわり大きく、とにかくおいしい。ズッキーニと同様に味はないが、肉と一緒に炒めると脇役におさまるズッキーニに対し、肉から主役を奪い取るようなうまさがある。肉のタレを吸い込んでもベチャベチャせず、コリッとしたコシがカボッキーにはある。

 栽培は容易だ。つる性で、栽培法はカボチャと同じ。カボチャよりも強く、順調にいけば8月の盆過ぎまでに1株20個程度は収穫できる。

長さ50mのウネ2条にカボッキーを植えた。ウネ幅2m、株間1mとし、左のウネはキュウリネットに這わせ、右は地這い栽培。どちらもたくさん実がなった

 

毎日食べても飽きない

 しかし、最初は認知度ゼロでまったく売れなかった。2年目の2020年は100本の苗を植えたが、当初1日30個くらいとれても売れるのは1〜2個。1年かけて売れる商品にしようと覚悟を決めた。

 まず、インスタグラムでの料理写真を片っ端からピックアップし、妻に協力してもらい、売れ残った商品でそれらの料理をぜんぶつくって毎日食べた。1カ月以上、毎日カボッキー。うまい。飽きはこない。ヤミツキ野菜であった。

 次に誰でもできるレシピを載せて、食べ方案内。友人をリストアップし、みんなに売れ残り商品とレシピを配った。みんな「おいしい」といってくれ、「またほしい」という人もいた。そこで、価格安定のためにブランド化を図るべく、トレードマークとレシピ付きのシールを作成。開花して受粉後4〜5日で450〜550gサイズと規格を決めた。ベストの商品をつくるように心がけ、規格外の商品はすべて家の食卓にのった。

受粉後4〜5日で収穫サイズ(450〜550g)となる。この時期のこのサイズなら、皮ごとタネごと食べられ、果肉もコリッとおいしい

 

店頭販売でファンを増やす

 つくりやすい野菜なので、生産は軌道にのった。1日20〜30個はコンスタントに出荷。ほぼ規格内の商品ができ、価格はサイズに応じて150〜250円とした。あとは売るのみ。

 売り場で一番目立つゴールデンスペースを見つけて早朝出荷し、商品が美しく見えるように角度をつけて立体陳列。オリジナルポップで商品説明。納品時には20分ほど売り場に立ち、興味のありそうなお客さんに説明をした。毎日3〜5人に声をかけて売り込んだ。

 それでも売れ残った。日持ちする野菜だが、週末には残数が100を超えた。店にお願いして店頭販売を実施。

「韓国の宮廷料理でも使われていました」「最近日本でも人気で、7mmほどにカットして卵、小麦粉をつけてフライパンで焼いたり、フライにするととてもおいしいです」「僕の好きなのは焼き肉風」などと話しつつ、タブレットを見せて、30秒の動画で畑や生育途中のようすを紹介した。通常価格から30円程度の値引きをし、3時間で完売。100人のお客さんに商品説明し、レシピを渡した。

A4サイズの紙におすすめのレシピを印刷して配った

 

 20年は結局、100本の苗を植えて2000個以上を収穫。1個平均190円で販売。売り上げは38万円ほど。その他、少量多品目の野菜を直売所出荷する魅力を知ったおかげで(?)、ゴルフには一度も行っていない。

 カボッキーのファンもでき、需要は増えた。21年は300〜500本植える予定だ。

(奈良県天理市)

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現代農業 2021年2月号
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