コンバインを止めるな!
家族3人で1日3ha
ラクラクイネ刈り穀物コンテナで荷受け時間短縮
栃木県塩谷町・杉山修一さん
イネ刈りをする息子の真章さん。1台で1日3haほど刈り取る(写真はすべて依田賢吾撮影)
杉山修一さん(62歳)
乾燥機に張り込む時間が長い
5月号の雑草特集で、クログワイをぷかぷか浮かせる「深水3回代かき」を紹介してくれた、杉山修一さん。37haの圃場でイネを栽培する大規模家族経営の農家だ。
5年ほど前に6条刈りのコンバインを買い換えたそうで、刈り取りスピードが各段に速くなった。しかし、ネックになるのは刈り取ったモミを圃場から自宅の作業場に運んで、乾燥機に張り込むまでの時間。
バネコンを使っていた頃はグレンコンテナ一杯に積まれたモミを空っぽにするのに、コンテナの大きさによって10〜30分もかかっていた。時間のロスが大きいので、シルバーさんを2、3人雇って軽トラや、1.5t車、2t車などでピストン輸送。それでも片道15分ほどかかる遠い圃場では、次のトラックが到着する前にコンバインのタンクが一杯になって「遅いなー」と、オペレーターをイライラさせることもしばしば。「間に合わなくって、ケンカになってましたよ」
運搬担当の一人である妻の弘子さんも、「バネコンで張り込みすると時間がかかるから、その間に洗濯物を取り込んだりするんです。でも、ちょっとの拍子にバネコンがずれてモミがこぼれてしまったりして……。ショックでしたよ」と振り返る。
使わなくなって、倉庫で眠っているバネコン
時間短縮、人件費削減
そこで杉山さんが目をつけたのが、ライスセンターで使われる貯留用の穀物コンテナだ。底が開閉式になっていて、フォークリフトで持ち上げて底を開けば、ザザザーッとものの十数秒でホッパーにモミを注ぎ込める。すぐに次を取りに行けて、時間短縮。遠い圃場なら、6.2tの運搬車にコンテナを4個積んで行く。コンバイン6杯分のモミを一気に運べて、これを自宅で下ろして一時貯留。別の空きコンテナを4個積めば、5〜10分程度で圃場に引き返すことができる。
ちょっとしたアイデアで仕事の効率は各段に上がるのだ。
2t車に穀物コンテナを載せる。軽トラによる過積載の問題もクリア
「以前は作業が進まず、コンバインの中でおにぎりを食べてお昼を済ませたりしてましたが、今はちゃんと昼休憩もとれて、夕方5時には終わります」。シルバーさんを雇う必要もなくなり、人件費削減。1日3haの作業を家族3人で十分こなせるようになった。
また、少量の刈り取り以外は1.5t車以上のトラックを使って、過積載にならないように法令順守。事故のリスクも減らしている。
「軽トラが入れる道ならたいていは2t車も入れますよ」と杉山さん。フォークリフトのある農家なら、大きな設備投資も不要。やってみる価値はありそうだ。(編)
収穫から乾燥機への張り込みまで
コンバインのオーガから穀物コンテナにモミを積む
上から見たところ
自宅に戻ってフォークリフトでコンテナごとモミを運び、荷受けホッパーの上に設置
コンテナを載せ、奥さんが再び圃場へ。到着から出発まで3〜4分。イネ刈り担当の息子さんを待たせてイライラさせる心配もなくなった!?
取材時の動画が、ルーラル電子図書館でご覧になれます。
「編集部取材ビデオ」から。
https://lib.ruralnet.or.jp/video/video_bunrui.php?bunrui=syuzai
この記事の掲載号『現代農業 2020年9月号』特集:暑さにも 大雨にも 除草にも 知らなかった 酢の実力
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