月刊 現代農業
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巻頭特集

植え付け時期がずらせてラク
ジャガ芽挿し

山形・安野慶子

筆者(手前)と家族。イネの太陽シート育苗の記事(2015年4月号)でも登場(倉持正実撮影)

 霊峰月山、湯殿山、羽黒山の出羽三山に見守られ、太陽いっぱいで、水稲、果樹、野菜などなんでもおいしく育つ山形県庄内地方に住んでいます。全国各地域の皆様が野菜を裏ワザ的につくられている『現代農業』の記事は、挑戦好きな私にとってわくわくすることばかり。毎月、夢をふくらませ、雑誌が届くのを楽しみに待っているおばあさんです。

果樹の受粉作業と重ならない

 5年前に、マルチを使ったジャガイモの超浅植え栽培をやってみました。確かに土寄せがないし、収穫のときはすごくラクでした。ただ、肥料の与え方、芽かきの本数が適切ではなかったのか、肌はとってもきれいでしたが、小さいイモが多かったのが残念でした。超浅植えは2年やりましたが、その後に「ジャガ芽挿し」の記事を読んで「これはラクでよさそう!」と思いました。

 わが家はナシやリンゴもつくっているので、4月から5月初めはせん定の片付けや受粉作業があります。ジャガ芽挿しなら、その頃は種イモの芽出しをするだけで、畑の準備や植え付け作業は5月半ばにずらせます。作業が少し遅れても、伸びたジャガ芽を植えればいいので、気がラクです。

種イモから勢いよく伸びたジャガ芽。掘り上げて、根つきのまま1本ずつばらして植える(依田賢吾撮影、以下表記のないものすべて)

縁側でジャガ芽を育苗

 私のやり方は以下のとおりです。

 3月20日頃、発泡スチロールのトロ箱(底に穴あり)に肥料分のない土を20cmの深さで入れ、種イモを15個ほど並べます(2aで3箱使用)。イモが隠れるくらいに土を被せ、日当たりのよい縁側に置いておきます。レースのカーテンで直射日光を避けつつジャガ芽を出させ、5月中旬に植え付けします。

 ジャガ芽挿しを考案した坂本堅志さんはジャガ芽をとったあとの種イモをもう一度埋め戻し、2度、3度とジャガ芽をとりますが、私は1度だけで十分間に合っています。種イモの量は以前の3分の1くらいで済むようになりました。

ジャガ芽挿しとは?

 ふつうジャガイモ栽培では種イモを畑に埋めて、その後にたくさん出てきた芽を1〜2本に減らしていく。ところがジャガ芽挿しなら、この芽かき作業を省略できて、ふつうなら捨てられる弱い芽もすべて生かし切ることが可能。種イモはいったん土中に埋めるが、そこから伸びるジャガ芽を1本ずつもぎとり、苗としてすべて植えてしまうからだ。

 使用した種イモを埋め戻せば再び芽が出るので、2〜3回繰り返しジャガ芽をとってずらし植えできる。夏場の高温で種イモが腐りやすい秋ジャガの栽培にも向いている。考案者は岡山県赤磐市の坂本堅志さん(34ページ)。坂本さんはサトイモでも同様の栽培法(サト芽挿し)を確立している。(編)

肌も、揃いも、サイズもよし

 2aの畑には鶏糞45kgと元肥(チッソ10-リン酸12-カリ18)20kgを全層にまいて耕し、ウネ幅60cmで深さ30cmの溝を掘ります。ジャガ芽を株間15cmで植え、その後は株が転ばないよう土寄せを2回して、最後は45cmくらいの高ウネに仕上げます。追肥は元肥と同じものを土寄せの前にパラパラとやる程度です。

溝にジャガ芽を並べ、株間15cmで谷底植えする(岡山の坂本さんの畑、下も)

 すると、肌がきれいで、揃いのいい大きなイモが収穫できました。これまでにないほどのできばえで、本当にうれしかったです。地域の友達にも紹介したら、「種イモは少なくて、芽かきはやらなくてすみ、本当に大きなイモができた!」と大変喜んでくれました。

密植なので数は少ないが、大きなイモがよく揃う

2本植えでイモのサイズ調整

 ただ、3年目の昨年は農協で種イモを注文し忘れたので、ホームセンターで買ったら、小さな種イモばかりでした。こんなに小さくても大丈夫だろうかと思いながら箱に並べて出芽を待ちました。出てきたジャガ芽はそれまでと違って細いものばかりでしたが、一応定植しました。収穫してみると、やはり小さいものが多く、あまりよい結果ではありませんでした。

 また、2年目までは大きいイモがたくさんとれましたが、ごはん茶碗くらいの特大サイズのなかには、中がひび割れしているのがあったので、今年は若干小さめのサイズに揃えられないかと考えています。株間を狭めようかと、坂本さんに問い合わせたら、株間はそのままで細めのジャガ芽を2本植えするのがいいと聞きました(太い苗は1本植えでOK)。

 今年は農協からすでに大きな種イモも購入済みです。4年目のジャガ芽挿しも楽しみながら挑戦したいと、今からわくわくしています。

(山形県鶴岡市)

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この記事の掲載号
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