月刊 現代農業
ルーラルネットへ ルーラル電子図書館 食と農 学習の広場 田舎の本屋さん
農文協のトップ月刊 現代農業2019年6月号>くらし・経営・地域

facebook twitter

もっとラクに 上手に
ホウキング2号で痛快株間除草

福岡・古野隆雄

松葉ぼうき(熊手)を使った手作り株間除草犁のホウキング。その形も使い方も、日々進化中!

*2017年、18年5月号もご覧ください

ホウキング2号を持つ筆者(依田賢吾撮影、以下Yも)

従来のホウキング(左)と、ホウキング2号。L字型の針金が深さ1cmほどに突きささり、上下左右、前後に小刻みに揺動することで、作物は傷めず、株間の雑草だけを選択的に除草していく(Y)

キンポウゲ(トゲミノキツネノボタン)。当地で12〜1月に出芽し、太い根を張る(赤松富仁撮影、以下Aも)

腰が痛くなくなった

 ホウキングはたんなる機械の技術ではなく、機械(道具)、作物、雑草、土などの総合技術です。ホウキング一台で乾田直播のイネ、ムギ、ダイズ、インゲンマメ、ソバ、トウモロコシ……、多種多様な作物の株間と条間の除草ができます。この一騎当千の汎用性こそ、ホウキングの醍醐味かもしれません。

 私の有機農業講座の受講生から、こんなメールが届きました。

 2017年に初めてラッキョウを5aほど植え付けし、昨年収穫しました。

 その間、植え付け後の9月から翌年4月までの間、追肥、中耕、除草の繰り返し。取っても取っても、次から次へと伸びて5aといえど何日もかかって除草していました。小型の三つ鍬を片手に中腰になっての草取り作業は大変で、体力が消耗してヘトヘトでした。

 しかし、講座でホウキングを製作した2018年11月以降は、追肥時期にあわせてホウキングするように作業を変更しました。その結果、4月まで一度も三つ鍬を使っていません。株間除草と同時に中耕もできて、いいですね。

 作業時間も半日かからず、効率化。おかげで、腰も痛くなくなり身体も大変ラクになりました。今年はラッキョウ栽培にニンニクなど他の野菜も追加しようと思います。

 こんな声に励まされ、わが家でも四季折々、多様な作物でホウキングの試験を重ねています。すると、わからなかったことが少しずつわかってくると同時に、気がつかなかった新しい問題も浮上。試行錯誤が続きます。

安くて機能的なホウキング2号

 従来のホウキングを一台製作するたびに切断して使用しない針金(バネ鋼)が48本。もったいないので、その利用を考えました。4本の角材にドリルで6本ずつ穴を開け、針金を差し込んで抜けないように固定します。4本の角材は1本の軸板に蝶ネジで固定することで、それぞれの角度を自由自在に変えられるようにしました。

 次ページの写真Aのように角材を90度に傾けると、針金が進行方向と平行になり、左右の揺動はほとんどなく、引っ張ると地面に筋がつきます。除草効果はやや低いですが、針金の間隔が、進行方向から見てもっとも広くなります。作物が小さい場合、大きい場合に、葉っぱを傷めずに除草しやすいです。

4本の角材を軸板に90度になるようセッティング (古野農場撮影、以下Fも)

 写真Bのように角材を大きく傾けると、針金は進行方向に向かって斜めに構える格好になります。すると全体的に針金が狭い範囲に集中し、株間に多く当たるようになります。針金の先端部の左右の揺動も大きくなります。

4本の角材を軸板から斜めになるよう セッティング(F)

 このように角材の角度をいろいろと変化させることで、針金が土に当たる位置や角度が微妙に変わり、取り残していた雑草が抜けやすくなります。

 製作費用は従来の約3分の1、1台2000〜2500円。これで100m、1分で株間除草ができますから、安いものです。松葉ぼうきのないアジアの田舎でも作りやすいでしょう。

見えない草を取る

 ホウキングは見えない草も取っています。土の中で発芽してから出芽するまでのモヤシのような雑草が針金の揺動で攪乱され枯死していきます。発芽から出芽直後までのこの期間は、雑草はとても弱く、除草最適期なのです。

 また、作物は播種するといっせいに出芽しますが、雑草は一定期間にだらだらと出芽する生き残り戦略をとっています。おもしろいことに、ホウキングはそんな雑草の出芽を促すのです。ホウキング後、1週間もすると雑草が出芽。そこをホウキング。これを3〜4回続けると、土壌表面下1cmくらいの雑草の種子は大幅に減ります。もちろん、ホウキングを重ねることで、土はふかふか。作物の生育はよくなり、ますますホウキングしやすくなります。

中耕除草が株間除草を助ける

 11月末に播いた露地ホウレンソウは適期が大きく外れて小さくて、株間除草ができませんでした。冬雑草のキンポウゲやスズメノテッポウは生育が進んでいます。どうすればいいのでしょうか? 私はまず、ホウキングで条間の中耕除草を何度もしました。その結果、幅約5cmの株間の草だけが残りました。その後、ホウレンソウが3葉期頃に満を持してホウキング。

 キンポウゲが株の両側の条間にもビッシリ生えると根がスクラムを組み、ホウキングに抵抗し、株間除草がうまくいきません。しかし、あらかじめ条間の草を除草しておいてから、幅5cmだけホウキングで株間除草すれば小さな草はラクに抜けました。中耕除草は、その後の株間除草を助けます。

 ところで、この問題のもう一つの解決法として、ホウレンソウ(作物)が子葉の段階(キンポウゲも出芽直後)でホウキングする方法も最近見えてきました。針金の本数を3分の2に減らして作業幅を狭くし、4kgから2.5kgに軽量化したホウキングを少し浮かせながら株間除草するのです。これまでホウキング不可能だった超初期の段階での選択除草です。

続きは本誌をお読みください

取材時の動画が、ルーラル電子図書館でご覧になれます。「編集部取材ビデオ」から。

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

現代農業 2019年6月号
この記事の掲載号
現代農業 2019年6月号

特集:2019年減農薬大特集 もしかして間違ってる!? 農薬のまき方
困った病害虫相談室/もっと身近に 野菜の天敵栽培/露地果樹園で天敵が活躍する時代へ/続RACコードでローテーション防除/ドローンで空から防除/土中の草のタネ、もう増やさない! ほか。 [本を詳しく見る]

合鴨ドリーム 改良・改造 手づくり農機傑作集 改良・改造 手づくり農機傑作集 第2集

田舎の本屋さん 

もどる