月刊 現代農業
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新連載 もっと知りたいヤツらのこと
DVD『地域で止める獣害対策シリーズ』より

イノシシ(1)

イノシシは夜行性?

 イノシシの被害は見ても、田畑を荒らしている瞬間を目撃することはまずない。そもそも昼間、イノシシの姿を直接見かけることもほとんどない。せいぜい夜に車のヘッドライトに照らされたのを見た、という人がたまにいる程度。だからかイノシシは夜行性に違いない、と思う人が多い。

 でも本当は「イノシシが警戒して、昼間は人目につかないようにしているだけのこと」と、監修者の江口祐輔さん(西日本農業研究センター)は指摘する。

 実際に、兵庫県内に生息する人慣れした野生イノシシは昼間活発に活動している。また、飼育されたイノシシも活動の中心は日中で、夜に休息することが多くなるという。夜行性というのはウワサにすぎないようだ。

 論より証拠。新作DVDの取材に訪れた山形県米沢市でこんな映像を見せてもらった(写真1)。明るいうちから親子で稲穂を食い荒らすイノシシの決定的な瞬間だ。自動撮影カメラによって記録されたという。「人間に見られていないぞ、ここは安全だぞ」と確認できれば、白昼堂々田畑にやってくるのだ。

写真1 明るい時間帯にイネの穂を食べに来たイノシシの親子

写真1 明るい時間帯にイネの穂を食べに来たイノシシの親子

「光が嫌い」ってホント?

 イノシシは夜行性だから光を嫌うのではないか。そう考える人も少なくない。追い払いのためにピカッと光るライトを買ってきて夜の田んぼや畑で点灯させた、という話も時々聞く。しかし江口さんによれば、イノシシは昼も活動する動物なので光を嫌うことはないという。それどころかエサが明かりに照らされ、見やすくなってかえって好都合というのだ(写真2)。

写真2 明かりの下でエサを食べ続けるイノシシ

写真2 明かりの下でエサを食べ続けるイノシシ

「いや、うちでは光でイノシシが来なくなった」という人がいるかもしれない。でもそれは、従来暗かった場所がある日突然明るくなったので、イノシシが「いつもと違う、何か変だぞ」と思い、ジーッと様子見しているだけのことらしい。

 音やニオイも同じで、効いたように見えても一時的。環境の変化に警戒しているだけでイノシシはすぐに慣れてしまう。そして危害が及ばないと気付けば、また侵入を繰り返すようになる。

 では、昼間も油断できないイノシシの被害対策に効果があるものは何か。新作DVDでは現場の実例も交えて解説するので、ぜひご覧いただきたい。

 この連載ではその取材の中で見えてきた、獣たちの行動パターンを、ビデオ取材班がお伝えする。次回も引き続き、イノシシについて。

DVD

DVD『地域で止める獣害対策シリーズ』(全4巻)は、『第1巻 獣害を止める基本』(70分予定、本体価格1万円+税)が2018年12月中旬に発売。他巻は2019年度に発売。ご注文は巻末のハガキかFAX注文書で。

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現代農業 2019年1月号
この記事の掲載号
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特集:農家は菌と仲良しだ
オレたちのブランド米づくり大作戦/ネギ・タマネギの収穫調製術/私のナシづくりを伝えたい/国産染料に需要あり/クヌギ山に牛を放して1年1産を実現/小型の乗用麦踏み機/イノシシ肉を軟らかく風味よくいただく/農家の農産物輸出 ほか。 [本を詳しく見る]

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